第714話 巨大化した魔物の共通点
「退路を断たれた……こうなったら戦うしかないぞ!!」
「戦うと言っても……」
「流石にこの数はきついですね……レアさん、どうにか出来ます?」
「くっ……」
「ぷるぷるっ(僕の出番!?)」
レアの元に全員が集まり、背中合わせの形となって周囲を取り囲む砂魔蠍に視線を向ける。この際にクロミンが自分も変身して戦うべきかを尋ねるように鳴き声を上げると、レアはクロミンを変身させるべきか悩む。
牙竜形態のクロミンならば砂魔蠍など敵ではなく、この状況を突破できるかもしれない。だが、敵がまだどれだけ待ち伏せているかも分からず、彼を変身させて戦わせてもこの状況を切り抜けられるか分からない。
(どうすればいい……待てよ、そういえばこいつって……)
レアは自分達を取り囲む砂魔蠍に視線を向け、ある事を思い出す。それは砂魔蠍の正体は生身の生物でありながら、ゴーレム種のような能力を持ち合わせているという話をリリスから聞いていた――
――最初に砂魔蠍を撃破した際、その死骸を回収しようとした際にリリスはある事に気付く。それは倒した砂魔蠍の肉体に砂の塊のような物が覆い込んでおり、まるでゴーレムの岩石の外殻のように砂魔蠍の全身に砂の塊がこびり付いていたという。
この砂の塊は非常に分厚く、その塊を身に付けていたせいで砂魔蠍が大きくなったように見えていたという。実際にレアが倒した砂魔蠍の本体はそれほどの大きさは存在せず、外殻が分厚過ぎて巨大化したように見えただけだった。砂魔蠍が死んだ途端に全身を覆い込んでいた外殻は崩れ去り、砂漠の砂に溶け込んでしまう。
船長達に話を聞いた限りでは砂魔蠍がゴーレムのように土砂を固めた外殻を身に付けて戦うなど聞いた事もなく、そんな砂魔蠍は見た事がないという。この時は情報が少なくてそれ以上は何も分からなかった。
だが、これまでに砂漠で遭遇した「巨大化」を果たした魔物は「砂鮫」「砂魔蠍」「ロックゴーレム」これらの魔物が共通するのは「砂」か「岩」あるいは「土砂」等を身に付けて外殻を形成して戦う魔物という点である。
砂魔蠍の場合は本来はそのような能力は持ち合わせていないが、現に砂鮫やゴーレムのように外殻を身に付けて戦っていたのは事実であり、この2体と共通点を持ち合わせていた。つまり、巨大化した魔物は全員が「外殻」で肉体が巨大化したように見せているだけである。
(そうか、こいつらを倒すには……あの方法が一番だ!!)
敵の共通点を見抜いたレアは空に視線を向け、ポーチに手を伸ばすと「皿」を取り出す。こんな時を想定してポーチの中には文字変換用の素材として様々な道具を収納しており、皿を握りしめたレアは空へ向けて投げ放つ。
「これで……どうだ!?」
「レア様!?いったい何を……」
「気が狂ったか!?」
「……あ、まさかっ!?」
「ぷるんっ?」
唐突に皿を取り出して上空へ投げ込んだレアを見てリリス達は戸惑うが、いち早くにリリスはレアがやろうとしている事を見抜き、事前に皿に「解析」を発動させて視界に詳細画面を開いていたレアは指先を名前の項目に向ける。
「これでどうだ!?」
『キィイイイッ!?』
『ゴォオオオッ!?』
画面に表示された「皿」という項目を「雨」に変換した瞬間、画面が更新されて空に投げ放たれた皿が光り輝き、やがて周囲一帯に黒雲が広がる。そして次の瞬間には大雨が降り注ぎ、砂漠に存在する砂魔蠍や巨大ゴーレムに大量の水分が降り注いだ。
砂鮫やゴーレムが身に付ける岩石や土砂の外殻は理由は不明だが、水を浴びると泥のように変化して崩れ落ちてしまう。これによって巨大ゴーレムの岩石の肉体は溶け始め、砂魔蠍も外殻が剥がれ初めて本体が露となる。
『キィイイイイッ……!!』
『ゴアアッ……!?』
砂魔蠍は外殻が解けた瞬間に逃げるように立ち去り、巨大ゴーレムも完全に溶けて地面の中に溶け込んでしまう。残されたのはゴーレムの核だけであり、それを確認したリリスは急ぎ足で核の回収を行う。
「いやっふぅっ!!ゴーレムの核をゲットです!!」
「ちょ、こんな時に……」
「何言ってんですか、この核を回収しない限りはまた時間をかけて復活しますよ!!ほら、皆さんも早く回収して下さい!!」
「そ、そうですね」
「この中から核を取り出すのか……後で身体を洗わないとな」
「ぷるる〜んっ♪」
雨が降り注ぐ中でレア達は巨大ゴーレムの残骸から核を摘出し、もう復活しないようにリリスが所持している収納鞄に放り込む。これで巨大ゴーレムは復活する事は無くなくなり、雨の中で元気そうにクロミンは飛び跳ねる。
やがて雨はしばらく時間が経つと消え去り、再び晴天が広がる。びしょぬれになってしまったレア達だったが、どうにか窮地を乗り越える事に成功した。
※ボツ案
レア「クロミンに水属性の魔石を大量に食わせるんだ!!そしてクロミンの放水で一気に倒す!!」
クロミン「ぷるっしゃあああっ!!(ハイド●カノン!!)」
( ゚Д゚)====》 Σ(・д・)!?
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