第712話 ゴーレムの群れ

「完全に取り囲まれたぞ!?」

「くっ……流石にこれだけのゴーレムを相手にするのはきついですね」

「リリス、何か良い薬はないの?」

「普通の魔物ならともかく、ゴーレムを相手に有効な薬なんて都合よく持ってませんよ!!」

「ぷるぷるっ(こいつはマジでやばいぜ……)」

『ゴォオオオッ……!!』



5体の巨大ゴーレムに取り囲まれたレア達は冷や汗を流し、完全に囲まれてしまった以上は逃げ場はない。岩山の岩壁に擬態して待ち構えていた巨大ゴーレムに対してレア達はどのように対応するべきか悩む。


一方でレアは巨大ゴーレムの様子を観察し、このゴーレムたちも先の砂鮫や砂魔蠍のように巨大化している事に疑問を抱く。この砂漠に生息する魔物は外の魔物と比べても全ての魔物が巨大化しており、これが単なる偶然とはとても思えなかった。



(こいつら、何があったんだ……解析!!)



ここでレアは解析の能力を発動させ、巨大ゴーレムのステータスを読み上げて原因を探る。最初に遭遇した魔物達にも解析を発動すれば良かったが、砂鮫や砂魔蠍の時は解析する余裕などなかった。




――――ロックゴーレム――――


種類:ロックゴーレム(ゴーレム種)


性別:無し


状態:使役


特徴:砂漠に生息するロックゴーレムだったが、現在は魔物使いの「使役化」の影響を受けて独自の成長を果たす。その戦闘力は通常種の比ではなく、日に日に強さを増している。使役者の名前は「タスマ」


――――――――――――――




画面に表示された文章を確認すると、レアは「魔物使い」や「使役」という文字が含まれている事に気付き、動揺を隠せなかった。



「魔物使い?という事はこいつらを操っているのは……」

「レア様、来ました!!」

「ゴオオッ!!」



考えている間にもゴーレムたちは動き出し、5体が同時に拳を振りかざすと、全く同時に攻撃を繰り出す。多方向からの攻撃に対してレアは考える暇もなくデュランダルを構え、刃を振り抜く。



(全部の攻撃は防ぎきれない!!)



デュランダルの刃を振動させ、衝撃波を生み出す事で巨大ゴーレムの攻撃を防ごうとしたレアだったが、相手に出来る巨大ゴーレムの数は3体が限界だった。衝撃波によって3体のゴーレムの耐性を崩す事には成功したが、残りの2体は他の者に任せるしかない。



「はああっ!!」

「受け流し!!」

「不動!!」

『ゴオオオオッ!?』



3体のゴーレムはデュランダルの衝撃波によって体勢を崩して尻餅を付き、一方でティナは大剣を振りかざしてロックゴーレムの拳を受け流し、リュコの場合は正面からロックゴーレムの攻撃を受け止める。


結果から言えば初撃は耐え抜く事に成功したが、正面から攻撃を受けたリュコは攻撃を受けた際に損傷を追い、膝を着く。彼女は血を流しながらも仲間達を守れた事に安堵するが、ゴーレムたちは容赦なく次の攻撃に移ろうとしていた。



「ゴオオッ!!」

「ゴガァッ!!」

「まずいですよ、このままだとぺしゃんこにされます!?」

「うおおっ!!」



再度攻撃を繰り出そうとしてきたゴーレムに対してレアはデュランダルを振りかざし、衝撃波を放ってゴーレムを吹き飛ばす。だが、溜め無しでの攻撃だと威力はたかが知れており、破壊にまでは至れない。



(こいつら……でかい上に硬い!?)



並のゴーレムならばフラガラッハを装備中のレアのデュランダルの攻撃を受かれば呆気なく散ってしまう。だが、現れた巨大ゴーレム達の硬度は並のゴーレムの比ではなく、破壊にまでは至れない。


恐らくは並のゴーレムよりも肉体を形成する外殻の密度が高く、並のゴーレムよりも硬度も耐久性も優れていると考えられた。そのためにレアは直接攻撃で巨大ゴーレムを仕留めようとした。



「このっ!!」

「レアさん、足元!?」

「なっ!?」



一番近くのゴーレムに駆け出そうとしたレアはデュランダルを掲げて走り出そうとした時、ここで足元から巨大な腕が出現すると、レアの身体を掴み取ろうとした。咄嗟にリリスが危険を知らせてくれたのでレアは回避する事に成功したが、今度は地中から一際巨大なロックゴーレムが出現した。




――ゴガァアアアッ……!!




地中から出現したのは正真正銘の「ゴーレム・キング」であり、その体長はレア達を取り囲んだ巨大ゴーレムを上回る巨体であった。その光景を目にしてレア達は唖然とし、この状況下で更にゴーレム・キングが現れるなど夢にも思わなかった。



(どうなってるんだ!?何でこんな……いや、考えている暇はない!!)



巨大ゴーレムだけでも厄介だというのに更にゴーレム・キングが現れた事でレア達は追い詰められるが、ここでクロミンが何かに気付いたようにレアの元へ移動する。

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