第701話 シュンの帰還

――その頃、帝都の方には魔剣カグツチを携えたシュンが帝城へと帰還していた。急に姿を消して戻ってきた彼に誰もが驚くが、何よりも驚かされたのはシュンが魔剣を持ち帰った事である。この世界において魔剣は恐るべき存在と認識され、聖剣が勇者の剣として扱われているのならば魔剣は悪しき者が扱う剣として認識されている。


シュンは帰還した際、彼はとりあえずはこれまでの自分の行動を報告するために玉座の間へと向かおうとした。だが、そんな彼の前にシゲルが立ちふさがる。彼は何時にない真剣な表情を浮かべ、帝城の城門の前にてシュンと向かい合う。



「よう、シュン……今まで何処に行ってたんだ?」

「シゲル……すまない、色々と心配を掛けていたようだね」

「質問に答えろ、何処に行ってたのかを聞いてんだろうが!!」



自分の前に立ちふさがったシゲルにシュンは苦笑いを浮かべるが、そんな彼に対してシゲルは険しい表情を浮かべ、彼が手にしている魔剣に視線を向けた。


少し前に遭遇した「占い師」の言葉の言う通り、現在のシュンは禍々しい剣を携えていた。その剣を見てシュンは嫌な予感を浮かべ、黙って見過ごす事など出来なかった。



「シュン、何だよその剣は……随分と趣味の悪い剣を買ったんだな」

「これは……買ったんじゃないよ、僕が手に入れた剣なんだ」

「手に入れた?呪われたの間違いじゃないのか?」

「……何が言いたいんだシゲル?」



呪われたという言葉にシュンbンは目つきを鋭くさせ、そんな彼に対してシゲルは両手に闘拳と呼ばれる武器を身に付け、戦闘態勢へと入る。そんな彼を見てシゲルは警戒すると、シゲルは言い放つ。



「惚けるな!!その剣の正体は知ってんだよ、魔剣とかいう奴なんだろ!?てめえ、何処でそれを手に入れた!!」

「シゲル……落ち着いてくれ。確かにこれは魔剣だが、僕は……」

「ちっ、やっぱりそういう事かよ!!だったら話は簡単だ、今すぐにお前を正気に戻してやるよ!!」

「シゲル!!待ってくれ、僕は……」



シュンが自分が所持している武器が魔剣である事を告げると、シュンは即座に動き出し、彼から魔剣を奪い取るために向かう。そのシゲルの行動にシュンは咄嗟に剣を抜き、二人の勇者が衝突した。


魔剣を構えたシュンに対してシゲルは臆さずに拳を振りかざし、闘拳を身に付けた拳を魔剣の刃に放つ。本人は刃を叩き割る勢いで叩きつけるが、結果としてはシゲルの闘拳を身に付けた拳の方が燃えてしまう。



「うあっちぃっ!?」

「……シゲル、止めるんだ。今の君では僕には勝てない」



自分の右手に炎を纏ったシゲルは悲鳴を上げ、慌てて身に付けていた闘拳を取り外し、水堀の中に捨てる。危うく手が燃えるところだったが、闘拳を装備していたお陰で最悪の事態は免れた。



「くそっ……何なんだよ、その剣は!?」

「これは魔剣カグツチ……聖剣に匹敵する力を持つ魔剣だ。この魔剣さえあれば僕はもう霧崎君には負けない」

「霧崎だと……お前、この間の事をまだ引きずってんのか?」

「当然じゃないか!!」



霧崎という単語にシゲルは驚き、シュンが霧崎レアという存在にどれほど劣等感を抱いているのかを暴露する。彼は今まで4人の勇者の中で最も期待されていただけに先日の模擬戦の敗北によって周囲の評価が落ちた。その事が気に入らないらしい。



「シゲルだって悔しくないのか?前の模擬戦の時、僕達は霧崎君の顔を見る暇もなく破れたんだぞ……同じ勇者だというのにどうしてこんなに差が出来たんだ!?」

「お、落ち着けよ……別に霧崎は俺達に何かしたわけじゃないだろ?」

「何かしたわけじゃない……よくそんな事が言えるな、世間の僕達の評価は聞いているだろう?解析の勇者こそがこの世界を救った伝説の勇者だと言われている。一方で僕達の方はどうだ?勇者なのに大した功績も残せず、役に立たないと思わているだろう」

「な、何を言ってんだお前……別に誰もそんな事、言ってないだろ?」

「それは君が世間知らずなだけだからだ!!こんな城の中で生活していれば外の事なんて何も知る事は出来ないから、そんな事が言えるんだ!!」

「何だと……!!」

「否定できるのか!?」



シュンの言葉にシゲルは多少なりとも動揺を隠さず、確かに世間の間では魔王を打ち倒したという解析の勇者であるレアが評価が高いという話は聞いていた。しかし、その反面に他の勇者は卑下されているという話までは知らなかった。


実際に魔剣を手に入れる旅路でシュンは勇者の噂をよく耳にしており、自分達が世間ではどれほど頼りない存在として扱われ、一方で他国に渡ったレアがどれほどの功績を上げているのか嫌でも聞かされていた。


それだけに旅の際中もシュンはレアに強い対抗心を抱き、彼に勝る存在になるために力を欲した。その結果、彼は魔剣カグツチを手にしたのだと主張する。だが、シゲルからすれば今のシュンは魔剣に魅入られたようにしか見えない。





※こちらは間違って早めに投稿してしまいました。なのでちょっと話を付け足しています。(;´・ω・)

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