第696話 飛行船の再開発
――帝国の方でも問題が起きている頃、ケモノ王国の方でも変化があった。それは海底王国から帰還した後、遂にレア達は「飛行船」の再開発計画を実行した。
「こ、こいつが伝説の勇者の船……なのか!?」
「凄い……なんて大きさだ!!」
「だが、デザインがちょっとダサいな」
「どうですか?この船を飛行船の土台に利用できますか?」
海底王国に帰還した後、レア達は国内のドワーフを呼び寄せ、彼等に海底王国に沈んでいた「アルティメット・ブレイブ号」を見せつける。場所は前に作り出していた飛行船と同じ造船所であり、彼等はかつて勇者が乗っていたという船に興味を抱く。
ちなみに船は当然ではあるが本物ではなく、いつも通りにレアが文字変換の能力で作り出した複製品である。海底王国に沈んでいたアルティメット・ブレイブ号の確認を行った後、こちらへ戻ってレアは「船」という単語で作り出す。
基本的には名前が10文字以内でなければレアは物体を作り出せないが、アルティメット・ブレイブ号は「船」に分類されるため、一文字だけで伝説の勇者の船を作り出す事に成功した。但し、この方法はレアが存在を詳しく知らなければ成り立たず、実際に海底王国に赴いてアルティメット・ブレイブ号を観察したお陰で作り出す事に成功した。
「あ、あんたらどうやってこんなでかい船を運び出したんだ!?いや、それよりも……こいつを本当に改造しちまっていいのか!?」
「どうぞどうぞ、失敗してもすぐに新しいのを用意しますから気にしないでください」
「簡単に言ってくれるな……」
リリスの悪びれない言葉にレアはため息を吐くが、一方でドワーフ達は感動した表情を浮かべ、数百年前に海に沈んだという船を自分達が改造する機会が訪れた事に歓喜の表情を浮かべる。
「ゆ、夢みたいだ……まさか、あの伝説の船を目の当たりに出来るなんて!!」
「こいつが伝説の勇者の船か……これは凄いぞ、なにしろ船に使われている木材は世界樹だ!!だから海の底に沈もうと壊れる事もなく原型を保っていたんだな!!」
「世界樹だけじゃねえ、この船には今の時代では手に入らない希少な金属も利用されてやがる!!こいつは腕が鳴るぜ……!!」
「どうですか?飛行船の素材としては十分ですか?」
「当たり前よ!!だが、こいつを改造するとなるとちょっと時間が掛かるな……もっと人手もいるし、巨人族の手も借りたい」
「う〜ん、巨人族ですか……巨人族の方はケモノ王国にはあまりいませんからね」
ドワーフによると船の改造には今以上に人手が必要になるらしく、特に腕力が優れた巨人族の協力が必要不可欠だという。だが、生憎とケモノ王国内に存在する巨人族は数が少なく、集めるにも時間は掛かった。
「巨人族の力を借りるとなると、やはり心当たりがあるとすれば巨人国ですね」
「巨人国?」
「このケモノ王国とは反対側に位置する国家です。大陸の東側を支配するのが帝国、北側がケモノ王国なら巨人国は南側に存在する国です。最もケモノ王国やヒトノ帝国と比べると領地は小さいんですけどね」
「そうなんだ」
巨人族が支配する国が大陸の南側にある事はレアも前に聞いた気がするが、巨人国へ赴く場合はケモノ王国とは反対側に存在し、相当な距離が離れているという。移動するだけでも時間は掛かるが、帰りの場合は転移台を利用すれば一瞬で移動できる。
「仕方ありませんね、巨人国へ出向いて飛行船の協力を願い出ましょうか。早速、リルさんに相談しましょう」
「巨人国か……どんな国だろう」
「言葉通りに巨人が暮らす国じゃないんですか?私も行った事はありませんから何とも言えませんね」
リリスも巨人国へは出向いた事はなく、どのような国なのかは詳しくは把握していない。そもそもケモノ王国と巨人国は今までに特に深い関りは持っておらず、とりあえずはリルの元へ向かう事にした――
――玉座の間の方ではリルが大量の書類仕事に追われており、剣の魔王が復活を果たしてから各地で捜索も行っており、ケモノ王国の各領地に派遣した兵士からの報告書が山のように届いていた。
「ふうっ……流石に疲れたな、誰かコーヒーをいれてくれるか」
「缶コーヒーならありますけど……」
「缶コーヒー?何だい、それは……って、レア君とリリスじゃないか。飛行船の視察はもう終わったのかい?」
「お疲れ様です」
リリスは以前にレアに作って貰った缶コーヒーをリルに手渡すと、彼女は初めて見る飲み物に戸惑うが、二人が戻ってきた事を知ると大量の書類を見せつける。
「これを見てくれ、捜索に向かわせた兵士の報告書だが……これだけあるのに未だに魔王の居所の手掛かりも掴めない」
「まあ、仕方ありませんね。そんな簡単に見つかるなら苦労はしませんし……」
「剣の魔王か……」
大量の報告書を目にしたレアは「解析」を発動させ、剣の魔王に繋がる重要そうな情報がないのかを調べる。最近は解析の能力も更に強化され、わざわざ書類を確認しなくとも重要な情報が記された書類が存在すればすぐに見分ける事が出来るようになっていた。
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