第685話 海中戦

『ナンダ、オマエハ……ユウシャ、ジャナイノカ!!』

「俺が勇者だ!!この時代に召喚された解析の勇者だ!!」

「勇者様、危険です!!御下がりください!!」

「勇者様をお守りしろ!!」



レアを前にしたリバイアサンは戸惑いの声を上げ、遅れてセリーヌ達もレアの元へ辿り着く。その際にリバイアサンはセリーヌに姿を見せ、憎々し気な表情を浮かべる。



『キサマハ……アノトキノムスメカ!!オノレ、ユルサンゾ!!』

「娘?あの時?」

「……言っている意味が分かりませんが、私は人魚族の女王セリーヌ!!悪しき邪竜め、どんな方法で蘇ったのかは分かりませんがここで滅します!!」



リバイアサンの言葉にセリーヌは眉をしかめたが、すぐに両腕を広げると突如として強烈な水圧が発生し、リバイアサンの肉体へと襲い掛かる。



「喰らいなさい!!」

『グゥウウウッ!?』

「す、凄い……!?」



圧倒的な巨体差があるにも関わらず、セリーヌがリバイアサンに両腕を構えるとリバイアサンの肉体に強烈な水圧が襲い掛かり、後方へと追い込む。この魔法を見てレアは最初にセリーヌと出会った時、暴れていたクラーケンを天高く吹き飛んだ光景を思い出す。


どうやら人魚族は水を操る魔法が得意らしく、強烈な水圧によってリバイアサンの巨体は大きく吹き飛び、距離を開く。その間にセリーヌはクラーケンに命令を与えた。



「クラーケン!!一刻も早く、皆さんを安全な場所へ避難させるのです!!」

「ジュララッ……」

『サセルカァアアッ!!』



リバイアサンはレア達を逃がそうとするセリーヌに対して睨みつけると、凄まじい速度で旋回し、突進を仕掛けてきた。それに対してセリーヌは腕を振り上げ、下から水圧を繰り出して吹き飛ばす。



「させません!!」

『グゥッ!?』



再びセリーヌに吹き飛ばされたリバイアサンは距離を取るが、諦めずに幾度も攻撃を仕掛ける。その度にセリーヌがリバイアサンを水圧で吹き飛ばすが、どうやら損傷は与えられておらず、いくら吹き飛ばそうとリバイアサンが諦める様子がない。



『ウオオオオッ!!』

「くっ……しつこい!!」

「セリーヌ様、無茶です!!これ以上に魔法を駆使すればセリーヌ様の肉体が……!!」

「無茶であろうと、やるしかないのです……」

「くっ……」



護衛の兵士はセリーヌを止めようとするが、仮にセリーヌが魔法を止めればリバイアサンによってレア達は押し潰されてしまう。しかし、水圧を発生させる度にセリーヌの肉体に負担が掛かり、これ以上に魔法を使用すれば彼女の身体が持たない。


どうにか打開策を考えなければならないが、水中戦となるとレア達は思うように動けず、地上と比べてこの世界では思う存分に動けない。いくら聖剣を所持していようと地上程に自由に動けなければリバイアサンに対抗は出来ず、どうすればいいのかとレアは考え込む。



(何か手はないのか……あいつが来た時、攻撃を仕掛ける事が出来れば)



レアはセリーヌが倒れる前にリバイアサンを倒す手段を考えると、ここで海溝に視線を向け、ある事を思い出す。この海溝は下に移動するほどに幅が縮まり、ヒカルコケに覆われているので視界に関しては問題なく動ける。



(……よし、やるしかない)



デュランダルに視線を向けた海溝に視線を向け、疲れ切った様子のセリーヌを見て時間はないと判断し、彼は海溝へ向けて潜り込む。その様子を見たセリーヌ達は驚きの声を上げた。



「勇者様!?」

「いったい何を……!?」

「うおおおおっ!!」

『ノガサンゾォッ!!』



重力を自在に操るデュランダルの能力を利用し、刀身の重量を変化させて一気に底の方に向けて沈んでいく。その様子を見ていたリバイアサンはセリーヌから離れたレアを狙って移動を開始した。


咄嗟にセリーヌは彼を助けようとしたが、既にレアは海溝の底に向けて一直線に降りており、その後にリバイアサンは続く。あと少しでリバイアサンの牙がレアの身体に触れようとした瞬間、海溝の岩壁にリバイアサンの顔面が挟まり、逃してしまう。



『アグゥッ!?』

「よしっ!!」



海溝の底に近付く事に亀裂は狭まり、リバイアサンの巨体が岩壁に挟まるのは当たり前だった。ここでレアはデュランダルの能力を一時的に解除すると、改めてリバイアサンと向かい合う。



(こいつの正体が始祖の魔王と同じく竜種の死骸に死霊が憑依した状態なら……こいつが一番に効くはず!!)



ここでレアは鞄に手を伸ばすと、エクスカリバーを引き抜く。そしてデュランダルと同時に刃を振りかざし、光と重力の衝撃波を同時に叩き込む。



「喰らえぇえええっ!!」

『アギャアァアアアッ!?』



海溝の底から十字の光の衝撃波が放たれ、フラガラッハの「攻撃力9倍増」の威力も加わり、リバイアサンの肉体に強烈な光の衝撃波が襲い掛かった――

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