第684話 海龍の復活
「まさか……」
「海龍……リバイアサン!?」
「そんな馬鹿な!?」
「どうして……」
巨大な瞳に睨まれたレア達は乗り物の中で大声を上げてしまい、直後に岩壁に擬態するように身を隠していた巨大生物が動き出す。その巨体はクラーケンをも上回り、かつてレア達が島で倒した「海竜」をも上回る巨躯の生物が視界に映し出される。
――シャギャアアアアッ!!
海龍リバイアサンだと思われる巨大生物は全身にヒカルコケが生えており、胸元の部分には黒色の亀裂のような痕が存在した。目元の部分は赤色に光り輝かせ、その様子を見たレアはすぐに雷龍の事を思い出す。
始祖の魔王が憑依していた雷龍のようにリバイアサンは全身から闇属性の魔力を放ち、それを見たレアはリバイアサンが死骸が操られている事に気付く。つまり、このリバイアサンには死霊が既に取り付いているのだ。
『リ、リバイアサン……!?』
『そんな馬鹿な、どうして……』
『呆けている場合ではありません!!何としても勇者様を救いなさい!!』
窓の外の人魚族の戦士は呆然とする中、セリーヌは何としても勇者であるレアを守るため、涙の指輪を身に付けるとクラーケンに指示を与える。この場は一刻も早く離脱する必要があり、彼女はクラーケンを操作する。
『クラーケン!!早く動きなさい、勇者様を海底王国へ避難させるのです!!』
『ジュラララッ!!』
セリーヌが涙の指輪を掲げた瞬間、クラーケンはそれに従うように乗り物をしっかりと触手で掴むと、その場を一目散に離れる。通常状態のクラーケンならばリバイアサンの姿を見ただけで逃げ出しただろうが、涙の指輪を使えば逆らう事は出来ない。
――ウギャアアアアッ!!
しかし、闘争を開始したクラーケンに対して姿を現したリバイアサンは動き出すと、信じられない移動速度でクラーケンを先回りする。やはり海中ではリバイアサンの方が分があり、リバイアサンに先回りされたクラーケンは慌てて停止した。
「うわっ!?な、何て早さだ……」
「一瞬で先回りするなんて……」
「くそっ、こんな場所だと戦えないぞ!?」
「レアさん、どうにかならないんですか!?」
「……駄目だ、解析が発動しない!!やっぱり、こいつは死骸なんだ!!」
レアは解析の能力を発動させてリバイアサンをどうにかしようとしたが、魔王が憑依した雷龍の時のように元々は死骸である存在には解析の能力は通用せず、どうしようも出来なかった。
逆に言えば解析が通じないという事は敵の正体は死骸であり、操られた存在である事が証明された。つまりは現在のリバイアサンは雷龍と同様に死霊で操られている事は確定する。
「……リバイアサン!!いや、リバイアサンに憑依した奴!!俺の声が聞こえるか!?」
「レアさん!?」
「いったい何を……」
『オオッ……オッ……!!』
レアは我慢できずに窓を開くと、リバイアサンに向けて怒鳴りつける。その途端、リバイアサンは苦しむような声を上げ、やがて目つきを鋭くさせてレアに怒鳴りつける。
『ソノ、コエ……オモイ、ダシタゾ』
「えっ!?しゃ、喋った!?」
「人語を話せるのか!?」
『イマイマシイ、ユウシャノ、ハドウ!!キサマモ、ユウシャカァアアアアッ!!』
リバイアサンは人語を発すると、強烈な咆哮を放ち、衝撃波のように周囲に振動が伝わる。その反応に対してレアは相手が始祖の魔王ではなく、それでいながら勇者に恨みを持つ人物だと気づく。
相手が始祖の魔王ならばもっと流暢に言葉を話せたはずであり、より凶悪な禍々しい魔力を感じさせた。しかし、リバイアサンに憑依している存在は始祖の魔王程の魔力は感じられないが、それでも強力な闇の魔力を感じさせた。
「お前は誰だ!?勇者に恨みがあるのか!?」
『オノレ、オノレオノレオノレェッ……ニクイニクイニクイッ!!』
「駄目です、話が通じる相手じゃありませんよ!!」
「どうするんだレア!?」
レアが話しかけてもリバイアサンに憑依した存在は我を忘れた様に妬ましそうに声を上げ、その様子を見てレアは戦うしかないと判断する。しかし、ここで問題なのは海中でどのように戦うのかであった。
(今回は全部の聖剣を持ってきている。だけど、どうやって戦えばいいんだ……?)
前回の反省を生かし、万が一の場合を考えて常にレアは収納鞄を携帯して全ての聖剣を用意していた。しかし、どの聖剣を使えばリバイアサンに勝てるのかを考え、ここでリバイアサンを倒した勇者は「デュランダル」を使用したという話を思い出す。
扉を開いたレアは外へ姿を現すと、その様子を見たリバイアサンは目を見開き、レアの顔を見て戸惑いながらも覗き込む。どうやらリバイアサンが知る勇者とレアの容姿が違う事に気付き、混乱した声を上げる。
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