第680話 人魚族の協力

――剣の魔王が復活を果たし、姿を消してから更に時は流れ、ある時に王都の方から慌てた様子のリリスが玉座の間に駆けつける。この時は全員がたまたま居合わせており、慌てた様子で玉座の間に訪れたリリスを見て全員が驚く。



「大変大変大変ですよ!!」

「うわっ!?びっくりした……」

「騒がしいぞリリス!!いったい何事だ?」

「また何かやらかしたの?」

「もう、一緒に謝ってあげますから素直に答えてください」

「おいたは駄目でござるよ?」

「いや、なんで私が何かやらかした事を前提で話すんですか!!違いますよ、遂に人魚族からの連絡が届いたんですよ!!」



リリスは一枚の羊皮紙を握りしめており、彼女はそれを広げて内容を他の者に見せつける。レア達は不思議に思いながらも羊皮紙を見ると、そこには人魚族の女王のセリーヌの名前が記されていた。



「あれ?これって……セリーヌさんからの書状?」

「そうです!!その通りです!!ついに人魚族の協力を得られましたよ!!」

「人魚族の協力?どういう事でござる?」

「どうもこうもありません、そもそも前に私達が帝国に訪れた理由を忘れたんですか?」

「理由……あ、船の事?」



レア達は「飛行船」の製作のため、帝国の領地で管理している船を見学させてもらった。この時にレア達は帝国性の大船を一通り見て回ったが、結局は飛行船の製作に利用できそうな船は発見できなかった。


船を見回っている最中にクラーケンに襲われたり、魔王の復活を行おうとする者の情報を聞かされた事でレア達はすっかり忘れていたが、リリスだけは飛行船を諦めきれずに船を探していた所、人魚族の女王に協力を申し出て承諾を得たという。



「人魚族に相談した所、過去に勇者が制作して海の魔物を倒すために利用されたという船が残っていたんです!!残っていたといっても今現在は海底の底に沈んでいるそうですが……」

「勇者が作り出した船?」

「はい、何でもかつては海の魔王と名乗る存在がいたそうです。当時に人魚族はその魔王を倒すために勇者と協力し、勇者が魔王が存在する場所へ送り届けるために作り出された特殊な船だそうです」

「なるほど……そんな船なら確かに期待できそうだな」

「すぐにその船を見に行きましょう!!いや、良かったですね。念のために海底王国の方にもレアさんが制作した転移台を寄贈しておいて……」



仮にも勇者が関わっている船ならば期待値が大きく、早速ではあるがセリーヌの元に向かうための準備をレア達は行う。実は先日に海底王国の方にも転移台を一台渡しており、その転移台は人魚族が管理する小島に保管されている。その小島に転移して人魚族と連絡を取れば海底王国へはすぐに移動できる手はずだった――






――今回は勇者の船が拝見できるかもしれないという事も有り、本格的に海底王国とケモノ王国の国交を結ぶためにもリルも賛同し、面子はレア、リリス、リル、他には護衛役としてチイ、ティナが同行する事になった。


ハンゾウはリルの代役として王都へ残り、彼女の姿に変装して政務を行う。ネコミンは海底王国に行くと魚が食べにくくなるという理由で残る。ちなみにサンは現在は森の民の所で修行に出向いており、今は本格的に森の戦士の指導を受けて修行をしている。


リュコの方は冒険者稼業に専念しており、ライオネルや白狼騎士団は魔王軍の捜索に全力を注いでいる。急変が起きた場合を想定して国には戦力を残しておく必要があり、全員が赴くわけにはいかなかった。



「ここが海底王国か……なんとも神秘的な光景だな」

「なんて美しい……」

「あ、レアさん。チャンスですよ、君の方が美しいという好機です」

「えっ?君の方が美しい?」

「いやん、私に言ってどうするんですか。もう、恥ずかしいですね」

「そこ、いちゃつくな!!」

「……うふふ、相変わらず賑やかな御方達ですね」



海底王国へ再び辿り着いたレア達は相も変わらず美しい景色に見惚れる中、彼等の元に護衛を引き連れたセリーヌが現れる。リルはセリーヌとは初対面であり、彼女と顔を合わせると頭を下げる。



「ケモノ王国の女王、リルと申します」

「海底王国の女王、セリーヌです。貴女とは一度顔を合わせたいと思っていました。どうぞ、こちらへおいで下さい」

「ありがとうございます。セリーヌ女王」

「セリーヌで結構ですよ。その代わりに私も貴女の事を呼び捨てにしても構わないでしょうか?」

「ええ、勿論です……セリーヌ」



リルはセリーヌを前にしてきりっとした態度で握手を行い、それに対してセリーヌも笑顔を浮かべて対応を行う。その光景に周囲の者達は二人の美しい女王に圧倒されるが、リリスはチイに囁く。



「一見は冷静さを保ってますが、内心はかなり喜んでそうですよね」

「ああ、リル様の悪い癖が出ないと良いのだが……」



リルは女性でありながら生粋の女好きでもあり、彼女の白狼騎士団が最初は女性だけで構成されていたのはリルの趣味である。特にセリーヌのように美しい女性はリルにとっては非常に好ましい存在だった。





※リル「ちなみに今では男の娘のレア君も大好きだぞ!!( ゚Д゚)」

 レア「ええっ……(;´・ω・)」

 リリス「あれ、今の告白してませんか?」( ゚Д゚)ハッ

 チイ「えっ!?」(´・ω・)リ、リルサマ!?

 カタナヅキ「ちなみに女好きというだけであって別に男嫌いではありません」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る