第676話 聖地の崩壊
――剣の魔王が復活を果たしてから二日後、レア達は白原へとやっと辿り着く。しかし、既に聖地として崇められていた草原は荒れ果て酷い有様になっていた。
「こ、ここが聖地……だと?」
「酷い……何があったんだ」
「……植物が全て枯れ果てていますね。まるで、この場所だけ大地が死んでしまったようです」
かつては白色の美しく光り輝く花々が生えていた草原は見る影もなく、全ての植物は枯れ果て、荒れ果てた大地が広がっていた。その様子を見てレアは黙って大地を見下ろし、念のために解析を発動させる。
「これは……闇属性の魔力が流し込まれたみたい」
「闇属性の魔力だと……では、これは例の魔王に仕えていたという死霊使いの仕業か!?」
解析の能力で大地の異変の原因をレアが突き止めると、ガームは信じられない表情を浮かべ、枯れた植物を手にしようとした。しかし、触れた途端に植物は崩れ去ってしまい、原型さえも留める事は出来なかった。
その大地の変わり様にレア達は冷や汗を流し、未だに大地には闇属性の魔力の影響で栄養が無くなり、植物も命を失った。もうこの場所は聖地と言っても誰も信じてもらえないだろう。
「……引き返しましょう、もう敵はここから去ったようですしね」
「そうだな……レア、戻るぞ」
「この場所にいると気分が悪い……早く離れた方がいい」
「…………」
リル達の言葉にレアは黙って地面に視線を向け、試しに掌を構える。未だに大地には死霊使いが残した闇属性の魔力が留まり、そのせいで大地は栄養を失っている。この闇属性の魔力をどうにかしない限り、この場所は雑草さえも生えない死の大地と化す。
「闇属性の魔力を掻き消す方法は……」
「レアさん?何をするつもりですか?」
「下がってて」
レアは白原の様子を見ていられず、せめてこの地に留まった闇属性の魔力を掻き消すため、バックに手を伸ばす。彼は取り出したの聖剣エクスカリバーであり、両手で剣を掴んだレアは地面に突き刺す。
「はああっ!!」
「うわっ!?」
「にゃうっ!?」
「な、何をする気だ!?」
「これは……!?」
エクスカリバーをレアが突き刺した瞬間、聖剣が発光すると大地に光が広がり、聖剣の力を利用してレアは聖属性の魔力を大地に送り込む。レアは魔法を使えないが、魔力その物は所持している。その魔力を聖剣を利用して拡散させる事で大地に留まった闇属性の魔力を浄化しようとした。
闇属性の魔力に対抗できるのは聖属性の魔力だけであり、聖剣を突き刺した箇所から光の輪が広がると、栄養が枯渇していたはずの大地が蘇り、やがて枯れ果てた植物が色を取り戻すように戻似戻っていく。聖属性の魔力は生命を癒す力を持ち、闇属性の魔力を打ち払った事で植物は復活を果たす。
「……ふうっ、これでよし」
「お、おおっ……信じられん、白原が……蘇ったのか!?」
「綺麗……」
「何て美しい……これが聖地か」
「やれやれ、レアさんは本当に規格外ですね……」
エクスカリバーの力を利用して大地に留まった闇属性の魔力を打ち払うだけではなく、枯れていた植物も復活させる事に成功したレアは安堵したように聖剣を元に戻す。これでもう大丈夫かと思われた時、不意に地面が盛り上がり、1本の剣が飛び出す。
「うわっ!?な、何だ!?」
「これは……剣、ですか?」
「待て、この剣の形は……!?」
地面から出現した剣は全身が錆びついており、刃の部分も罅割れていた。しかし、その聖剣はレア達も見覚えがあり、それは間違いなく、聖剣エクスカリバーであった。
(これは……エクスカリバー!?どうしてここに……)
錆びついたエクスカリバーを拾い上げたレアは戸惑い、このエクスカリバーは本物の聖剣である事は間違いない。レアが所有しているのは彼の能力で作り上げた複製品であり、本物ではない。だからこそ、こちらのエクスカリバーは本物なのは間違いないだろう。
しかし、伝説の聖剣がこの聖地に眠っていた事にレアは驚きを隠せず、しかもかなりひどい状態だった。この状態では聖剣としては機能せず、使えば簡単に壊れてしまうと思われた。
「エクスカリバーがどうしてこんな場所に……」
「これ、もしかして剣の魔王と戦った勇者が持っていた剣じゃないですか?」
「え?なら、この聖剣は本物なのか?」
「待ってくれ、どういう意味だ?本物とはいったい……」
「あ、すいません。その辺の説明は後でしますね……今はここから離れましょう」
レア達の会話にガームは戸惑うが、すぐにリリスは思い直したようにこの場から離れる事を提案する。確かにここに残っても意味はなく、レアは錆びついた聖剣を回収して引き返す事にした――
※すいません!!やっぱり、中途半端に思えたので今日の分も更新しました!!
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