第660話 海竜VSレイナ

「レイナさん!!早く、海竜を何とかして下さい!!」

「分かってる、すぐに助けないと……うわっ!?」

「シャオオッ!!」



丸のみにされた人間達を見てレイナは早急に海竜を吐き出されれば救えるかもしれないと判断し、既に視界内に表示しておいた海竜の詳細画面を改竄しようとした。だが、その前に海竜は今度はレイナに目掛けて牙を剥き出しにすると、襲い掛かる。



「アガァッ!!」

「このっ……いい加減にしろ!!」

「アグゥッ!?」

「な、殴り飛ばした!?」

「嘘っ!?」



自分も飲み込もうとしてきた海竜に対してレイナは拳を固めると、海竜の顔面を叩きつける。予想外の攻撃に海竜は怯み、一方でレイナの方は拳を抑えながらも海竜の様子を伺うと、ここである事に気付く。



「……こいつの腹を掻っ捌いた方が手っ取り早く助けられるんじゃない?」

「え、ちょっ……レイナさん、本気で言ってます?」

「割と本気だよ、もう怒った……だあっ!!」

「何をっ……!?」



デュランダルを抱えたレイナは海竜へ目掛けて跳躍を行うと、その行動にセリーヌもアリシアも驚愕の表情を浮かべるが、空中にで大剣を構えたレイナは海竜の頭部に目影て刃を振り下ろす。



「だああっ!!」

「シャギャアッ!?」



海竜の頭の部分に刃が突き刺さり、額の部分に刃が貫通した海竜は目を見開くと、この状態からレイナはデュランダルの能力を発動させる。体内に突き刺さった状態で内部から衝撃波を送り込まれた海竜の頭部が吹き飛ぶ。


あまりにも呆気なく頭部が砕け散って倒れ込む海竜の姿に誰もが唖然とするが、一方でレイナの方は地上へ着陸すると、こびり付いた海竜の残骸を振り払いながら呟く。



「……火竜や牙竜の方がまだ手応えがあったな」

「ぷるるんっ(その通り!!)」



レイナの言葉にクロミンが頷き、その言葉を聞いた者達はレイナの圧倒的過ぎる強さに唖然とすることしか出来なかった――






――その後、海竜に飲み込まれた者達はすぐに体内から吸収され、胃液で衣服や身体の一部が溶かされかかった者もいたが、命に別状はなかった。そして今回の事態の元凶である青髭の船長は縛り付けられ、彼が所有していた涙の指輪はセリーヌの元へ戻った。



「帝国の皆様、この度の協力は誠にありがとうございます……我々だけでは手に余ったかもしれません」

「いえ、お気になさらないでください。人魚族の皆様のお陰で無事に天使像も取り返せましたし……」

「あ、見て下さいよ。この海賊たち、たんまり宝をため込んでいましたよ」

「うわ、本当だ……これ全部、クラーケンに運び出させたのか」



セリーヌは今までの無礼を詫びて謝る中、アリシアは天使像を取り戻せたことに安堵する。その一方で青髭がこれまでに回収した宝の山の前でレイナ達は集まり、中身の確認を行う。


この宝の山は一時的に帝国が回収し、持ち主が見つかれば返却する予定だった。これまでにクラーケンの被害を受けた船の生存者を探し出すのは人魚族も協力する。その一方で青髭はどうやって人魚族の住処から涙の指輪という国宝を盗み出したのか突き止める必要があった。



「さあ、答えろ!!貴様等、どうやって涙の指輪を盗み出した!!」

「ひいいっ!?し、知りません!!俺達は何も知りません!!」

「船長が、船長が急に持ち出してきたんです!!俺達は何も知りません!!」

「部下はこういっているが、どうなんだ!?」

「……そ、それを盗んだのは俺じゃねえ、嘘じゃねえよ!!俺はそいつをある女から頂いただけだ!!本当だ、嘘じゃない!!」



人魚族の戦士が海賊の尋問を行った結果、船長の男は全てを白状した。彼がどうやって涙の指輪を手に入れたかというと、ある女性から涙の指輪を受け取ったという。



「そ、その女は急に俺の前に現れて、その涙の指輪を渡したんだ。これを使えば世界一の海賊になれるってな……正直に言えば胡散臭い話だと思ったが、実際にその女はその指輪の使い方を教えてくれて、クラーケンを呼び出したんだ」

「何だと……」

「涙の指輪の使い方を知っていたというのか……まさか、その女は人魚なのか!?」



涙の指輪の使用方法を知る存在は地上にはおらず、人魚の仕業かと思われたが、その言葉に対して船長の男は怯えながらも告げる。



「フードを被っていて顔はよく見えなかったが、少なくともそいつは二本足で立っていた。そういえば何か気になる事が言っていたな……そうだ、確かこういったんだ。もしも勇者が現れた時、こう伝えろと……」

「勇者……!?いったい何を言われたのですか!?」



勇者という単語が出てきた事にアリシアは反応すると、青髭の男は何かを思い出すように頭を抑え、口に出そうとした。しかし、その瞬間に彼の表情が一変し、頭を両手で抑えた状態で喚き散らす。

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