第655話 聖剣デュランダルの管理者
「今度は私達の質問にお答えください。どうして貴方は我が国で保管されているはずの聖剣デュランダルを所持しているのですか?」
「えっ……保管?」
「しかも見た限り、どうやら聖剣デュランダルは貴方を所有者として認めているようです。そうでもなければ聖剣をそこまで扱えるはずがありません」
セリーヌはレイナが背負っている聖剣デュランダルに視線を向け、もしも本物の聖剣ならば正統な所有者以外の人間が触れると拒否反応を引き起こすはずである。それにも関わらずに先ほどの戦闘でレイナはデュランダルを使いこなしたあたり、彼が聖剣の所有者である事を物語っていた。
「その聖剣は長い間、いずれ訪れるであろう勇者様のために人魚族が保管していたっ聖剣……その聖剣が盗まれたという話は聞いていません。しかし、その聖剣の形状や能力は間違いなくデュランダルその物……貴方はそれをどうやって手に入れたのですか!?」
「いや、それは……」
涙の指輪と同様に聖剣デュランダルはどうやら人魚族の住処で保管されていたらしく、恐らくは彼女が語っているデュランダルはレイナの所持しているデュランダルの「
まさか本物の聖剣が人魚族が管理しているなど思わず、どのように説明するべきかレイナが悩んだ時、ここで気絶していたと思われるクラーケンが目を覚ます。
「ジュラァアアアッ!!」
「なっ!?女王様、またもやクラーケンが……!!」
「まさかっ……また涙の指輪を使ったのですか!?」
クラーケンは意識を取り戻すと、目元を怪しく光り輝かせながら島の方向に視線を向け、すぐに海中に潜り込んで移動を行う。その様子を見てセリーヌは島に存在する人間が涙の指輪を使用したと判断し、人魚族たちに命令を与える。
「もう一度クラーケンを気絶させるのです!!殺してはなりませんよ!!」
『はっ!!』
「お任せください!!」
セリーヌが命令を下すと、数十名の人魚が海の中に再び潜り込み、クラーケンの追跡を行う。その様子を見届けたセリーヌはレイナ達に振り返り、溜息を吐きながらも告げる。
「話は後にしましょう。帝国の皇女よ、貴方達にもクラーケンを捕縛するのを手伝って貰えますか?」
「……分かりました。ですが、どうすればいいのですか?」
「この船を島に移動させます……下がっていてください」
アリシアはクラーケンの捕縛の手伝いを承諾すると、その言葉にセリーヌは頷き、彼女は両手を広げる。その瞬間、突如として彼女の周囲に青色に光り輝く球体が出現し、それを目撃したリリスは驚いた声を上げた。
「まさか……精霊魔法ですか!?」
「精霊魔法?それって森の民が扱うあの魔法?」
「はああっ!!」
セリーヌが気合のこもった声を上げると、唐突に船の周囲の海面が揺れ動き、やがて巨大な水柱が誕生して下から船を押し上げる。唐突に発生した水柱によって船は上空へと飛ばされると、甲板の者達は立っていられずに床に膝を着く。
水柱によって打ち上げられた船はそのまま島の方向に目掛けて移動し、効果の際は新しい水柱が誕生すると、下から船を覆い込む形でゆっくりと海面に移動させる。あまりに乱暴な移動の方法に甲板の人間達は口元を抑え、中には嘔吐しかける者もいた。
「うぷっ……な、なんて乱暴な移動をするんですか……」
「うええっ……酔いそう」
「は、吐きそうです……」
「ちょ、大丈夫!?皆!?」
「……全く、この程度の揺れで酔うなど人間は軟弱ですね」
船を移動させたセリーヌは激しく船が揺れた事で吐き気を催した者達を冷めた目で見つめるが、船は島の近くまで移動する事に成功する。少し離れた場所ではクラーケンに多数の人魚族の兵士が群がり、抑え込もうとしていた。
「落ち着け、クラーケン!!我々の事を忘れたのか!!」
「我々は敵じゃない、仲間だぞ!!」
「思い出すのだ、お前の役目を!!」
「ジュラァアアアッ!!」
クラーケンは自分にまとわりつく人魚達を振り払おうとするが、水中戦ならば人魚族の方が分があるらしく、触手をいくら伸ばそうと捕まる様子がない。
その光景を確認してセリーヌはクラーケンは自分の部下たちだけで十分だと判断すると、改めて島の洞窟へと視線を向ける。
「参りましょう、人魚族の秘宝を奪った者達に制裁を与えなければいけません」
「え、ええ……そうですね」
「なんか、また厄介事になりそうな予感がしますね」
「レイナと一緒だといつもこうなる」
「えっ!?俺のせいなのこれ!?」
セリーヌの言葉に従い、船は海賊船が隠されている海に繋がる洞窟へと移動を行う。途中でセリーヌが魔法を使用して海の水を操作し、船の軌道を変えた事で順調に船は進み、やがて洞窟の出入口へと辿り着く。
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