第652話 海獣との戦闘
「ぎゃああっ!?」
「うわぁっ!?」
「ひいいっ!?」
甲板の魔法兵達は触手に薙ぎ払われて倒れ込む。その光景を見ていたアリシアは驚愕の表情を浮かべ、魔法兵の攻撃を受けてもクラーケンが怯みもしない事に動揺する。
「なっ、魔法が効かない!?そんな馬鹿な……」
「単純にレベルが足りないんですよ!!もっとレベルの高い魔導士は連れて来なかったんですか!?」
クラーケンに魔法が通じなかったのは単純に魔法兵のレベルが低く、魔法の威力も弱いのだとリリスはすぐに指摘する。いくら砲撃魔法が威力に特化した魔法といっても、レベルが低ければその真価は発揮できない。
魔導士のような魔法職の人間は戦闘職の人間と比べるとレベルが上がりにくく、特に砲撃魔法を扱う魔導士となると1日に撃てる魔法の回数は限られているため、碌にレベル上げを行う事も出来ない。それでも低レベルの砲撃魔法でも大抵の魔物を吹き飛ばす威力はあるが、相手は海獣と称される程の魔物のため、生半可な攻撃は通用しない。
「ジュラァアアアッ!!」
「きゃあっ!?」
「にゃにゃっ……滑り落ちる!!」
「ちょ、これシャレになれませんよ!!レイナさん、何とかして下さい!!」
触手が絡みついた船は再び傾き始め、船員は海に落ちないように必死にしがみつく。船の上では陸地と違って思うように戦えず、このまま全員が海に落とされると思われた時、ここで海面に派手な水飛沫が舞い上がる。
「ジュラァアアアッ!?」
「……このぉっ!!」
クラーケンの悲鳴が響き渡り、海中から聖剣デュランダルを抱えたレイナが出現する。彼女は自分の身体に纏わりついた触手を切り落とし、海上まで浮上してきた。聖剣デュランダルは衝撃波を生み出す能力があるため、これを利用すれば海中であろうと衝撃波を利用して移動する事は出来た。
身体中が水浸しになったレイナはくしゃみを行い、まだ温かい時期ではないのに海に落とされて身体が冷えてしまう。しかし、いきなり海に落とされた事でクラーケンに対する怒りを抱き、容赦なく聖剣を放つ。
「このぉっ!!」
「ジュラァッ!!」
聖剣から衝撃波を発生させて攻撃を仕掛けようとしたレイナに対し、その攻撃に対してクラーケンは頭を逸らして回避に成功する。この時に船に纏わりついていた触手も引き剥がされ、傾いていた船も元へと戻る。
「た、助かりました……」
「安心している場合じゃありませんよ!!ここにいると戦闘に巻き込まれます、早く離れましょう!!」
「は、はい!!ですが、離れろと言われても……」
海に浮かぶ船は自由自在には動かせず、風がない状態では船を動かすのも一苦労だった。それを察したようにレイナは聖剣を空中で振りかざすと、船に向けて衝撃波を放つ。
「皆は離れてて!!」
「うわわっ!?」
「ひいっ!?」
「おわぁっ!?」
「ジュララッ……!?」
衝撃波を風圧代わりに利用して船の帆に放つと、軍船は一気にクラーケンから距離を離し、乗り込んでいた者達は唐突な衝撃に悲鳴を上げる。その様子を見てレイナはもう大丈夫だと判断すると、改めてクラーケンと向き合う。
「いくぞ、イカめっ!!イカ焼きにしてやる!!」
「ジュララッ!!」
クラーケンはデュランダルの衝撃波を利用して空に浮かぶレイナに対して触手を放つが、それらの攻撃をレイナは器用に衝撃波を利用して回避すると、クラーケンの顔に目掛けて近づく。
このままデュランダルで直接斬り付けようとした際、クラーケンは何を考えたのか一本の触手を振り下ろし、海面へと叩きつける。その結果、舞い上がった大量の水飛沫が水の壁となり、レイナを阻む。
「うわっ!?」
水飛沫によってレイナは一瞬だけ視界からクラーケンが姿を消すと、水飛沫を振り払うためにデュランダルを放つ。衝撃波が水飛沫を吹き飛ばした結果、そこには既にクラーケンの姿はなかった。
「しまった!?何処へ行った!?」
「ジュラァアアアッ!!」
レイナはクラーケンを見失ってしうまい、周囲を見渡すといつの間にかクラーケンは先ほどレイナが吹き飛ばした軍船の方へ目掛けて移動していた。レイナを無視して船に攻撃を使用けようとしており、それを確認したレイナは舌打ちを行う。
「こいつっ……いい加減にしろ!!」
咄嗟にレイナは攻撃を仕掛けようとしたが、進路方向上には軍船も存在し、下手に衝撃波を放てば船を巻き込む可能性もある。そのために攻撃を躊躇してしまい、どうするべきかとレイナは考えた時、ここで船に迫ろうとしていたクラーケンの前に巨大な水柱が誕生した。
「何だっ!?」
「ジュラァアアアッ!?」
巨大な水柱が唐突に出現したかと思うと、クラーケンの身体を飲み込んで天高くにまで上昇し、悲鳴を上げながらクラーケンは上空へと放り出される。
その光景を確認したレイナは唖然とすると、やがてクラーケンの巨体が海面へと衝突して派手な水飛沫を上げて沈む。高所から落下すればいかに水の上に落ちようと硬い地面に落ちた時と同じ衝撃を味わい、意識を失ったのかクラーケンは海面に浮かんだ状態で動かなくなった。
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