第651話 爆樽

「爆樽、準備できました!!」

「よし、導火線に火を付けて投下せよ!!」



樽の中に仕込まれた火属性の魔石には紐が結ばれており、兵士は紐に松明の火を灯した後、水に濡らした蓋をしっかりと仕込む。その様子を見てレイナ達は何をする気なのかと思うと、兵士達は数人がかりで樽を運び出して海中に投下を行う。



「投下!!」

『うおおおっ!!』



次々と樽が海中に放り込まれると、樽の中に仕込まれた錘用の大量の石により、どんどんと海中に沈んでいく。その一方で樽の中には大量の石と、その中に一つだけ存在する火属性の魔石が存在し、その火属性の魔石に括りつけられた紐は徐々に燃えていく。


やがて紐に灯した火が魔石に触れた瞬間、加熱した火属性の魔石は反応し、徐々に光始める。火属性の魔石は長時間高熱を浴び続けると暴発を引き起こし、やがては爆発を引き起こす。




――ドドドドンッ!!




船の周囲に派手な水飛沫が舞い上がり、海中に投下された樽が爆発を引き起こす。これによって船は激しく揺れ動き、危うくレイナ達は落ちないようにしっかりとしがみつく。



「爆樽って……文字通りに爆発する樽ですか!!しかもなんて原始的な方法で爆発させるんですか!!もしも間違って海中に落ちる前に船の傍で爆発していたら終わりですよ!?」

「ですが、効果は抜群です!!この爆樽を利用すれば海の中に潜む魔物達も驚いて逃げるはずです!!」

「でも、クラーケン相手に効果あるの!?」

「分かりません!!今までに試した事はありませんから!!」



爆樽の影響で船は激しく揺れ動き、危うくレイナ達は落ちそうになるがどうにか振り落とされないように耐え凌ぐ。投下した爆樽が次々と爆発し、派手に水飛沫を舞い上げる。


海中に潜んでいるクラーケンもこの爆発をまともに受ければ無事では済まず、やがて全ての爆樽が爆発を終えたのか、船の揺れは徐々に収まり、落ち着きを取り戻す。



「……撃退したんですか?」

「分かりません。油断はできませんが……」

「どれどれ……」



レイナは海の底を確認しようと身を乗り出して覗き込むと、この時に海中にて巨大な目と合ってしまう。そして次の瞬間、海中から巨大な触手が放たれ、身を乗り出したレイナに絡みつく。



「うわっ!?」

「ちょっ、レイナさん!?」

「危ない!!」

「手を伸ばして!!」



触手に絡まれたレイナは引き寄せられ、その彼女に咄嗟にアリシア達は手を伸ばすが、腕を掴む前にレイナの身体は海に沈んでしまう。その直後、次々と新しい触手が出現し、船の船首や帆に絡みつく。



「しまった!!クラーケンはもう真下に移動していますよ!!」

「そんな……くっ、触手を切り裂きなさい!!」

「だ、駄目です!!ぶよぶよしていて刃を通しません!!」



海中に飲み込まれたレイナを見てアリシアは悔し気な表情を浮かべ、心情的には今すぐに助け出したいが、船の上の船員たちを見捨てるわけにはいかなかった。兵士達は必死に触手を引き剥がそうと槍や剣を振り抜くが、びくともしない。



「おい、魔法兵!!何をしてるんだ、さっさと魔法をぶっ放せ!!」

「ば、馬鹿を言うな!!船に当たったらどうする!?」

「船で魔法が暴発したら沈んでしまうぞ!!」

「たくっ、役に立ちませんね!!」



頼りの魔法兵も船に触手が絡みついた状態では手出しは出来ず、彼等が触手を吹き飛ばそうと砲撃魔法を発動させれば大惨事を引き起こす。下手をすれば魔法の威力で船が壊れて沈没する可能性もあった。


リリスやネコミンも触手を振り払おうとするが海水でぬめり、しかもゴムの様に柔らかいので刃物さえも上手く刺さらず、切り裂く事も引き千切る事も出来ない。徐々に船が沈み始め、このままでは沈んでしまう。



「いけません、このままでは……!!」

「ちょ、フラガラッハで何とか出来ないんですか!?ネコミンも新しく覚えた回復魔法の応用で吹き飛ばせないんですか!?」

「やってみる」



ネコミンは両手を触手に伸ばし、回復魔法を発動させる。本来は傷などを癒す魔法だが、一か所に多量の魔力を送り込めば内側から爆発を引き起こし、やがては膨らんだ風船のように破裂する。その間にアリシアもオリジナルの聖剣フラガラッハを抜き取り、剣で斬りかかる。



「にゃああっ!!」

「はああっ!!」



二人が攻撃を仕掛けると、船に絡みついていた触手の2本が破壊され、悲鳴が上がる。やがて船の正面から大きな水飛沫があがり、クラーケンが姿を現した。



「ジュラァアアアッ!!」

「遂に現れましたね!!このデカブツ!!」

「今の内です!!魔法兵、攻撃を開始しなさい!!」



アリシアが姿を現したクラーケンに対して魔法兵に攻撃の命令を下すと、すぐに魔法兵は杖を構え、攻撃を行う。杖先に魔法陣が発動し、次々と自分が得意とする属性の光弾が発射された。



「フレイムランス!!」

「フレイムアロー!!」

「ウィンドランス!!」

「ジュラァアアアッ……!?」



クラーケンの巨大な頭の部分に火属性や風属性の魔弾が衝突し、爆発が起きる。砲撃魔法は威力に特化しているため、大抵の魔物ならば攻撃を受けただけで終わるはずだった。だが、クラーケンは目元を怪しく光らせると、触手を振り抜いて甲板に存在する魔法兵を薙ぎ払う。





※しまった!!また触手が主人公(女性バージョン)を襲ってしまった!!このままだとこの小説がR18指定になってしまう(;´・ω・)

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