第648話 4つの島

「この4つの島は無人島ですが、この港の兵士達は便宜上はイチノ島、ニノ島、サンノ島、シノ島と呼んでいるそうです」

「まあ、名前がないと不便ですからね」

「仮にもしも船が隠れているとしたらこの4つの島の何処かにいるのは間違いないと思うのですが……」

「実際に出発して調べてみないと分かりませんか」



地図上に表記された4つの島を確認し、このいずれかの島に一か月前に嵐の晩に通り過ぎた船がある可能性が高い。既に船が別の海域に移動している可能性もあるが、わざわざ嵐の中の海で港を素通りして移動する時点で普通の船ではなく、しかもかなり目立つ外見をしているそうなので他の船や港に目撃情報がないのは怪しすぎた。


4つの島は無人島であるが故に直接出向いて調べなければならず、船を出航させなければならない。だが、問題があるのはクラーケンの存在であり、仮に海上で船が襲われた場合、船が沈めば助かる見込みはない。ここは地球の海よりも危険で獰猛な生物が暮らす海のため、仮に陸地から離れた場所で海に落ちれば命の保証はない。



「仕方ありませんね、クラーケンが現れた場合はレイナさんに頑張ってもらいましょう。今度はちゃんと聖剣を装備して下さいよ」

「分かってるよ。ちゃんと出しておく」

「レイナさんが同行するだけでも心強いです……出来る事ならば戦闘が起きない事を祈りますが」



今度襲われた場合を想定してレイナは聖剣デュランダルとアスカロンを装備して万全の準備を整う。ちなみにフラガラッハは当然だがこの国では扱えず、正当なフラガラッハの後継者であるアリシアがいるのにレイナがフラガラッハを装備していたら確実に怪しまれる。



「よし、じゃあ船を出しますか。まずはどの島から回ります?」

「そうですね、位置的には一番近いイチノ島から……」

「……待って、ちょっといいかな?」

「どうかした?」



アリシアが行く先を決めようと知たとき、ここでレイナは何かを思いついたのか地図上を確認すると、四つの島の位置を把握し、ちょうど4つの島の真ん中に存在する海域を指差す。



「悪いんだけど、ここに向かってもらえる?」

「え?いや、ですがこの海域には何もありませんが……」

「少し気になる事があるんだ。お願い、俺を信じて!!」

「は、はい!!レイナ様がそこまでおっしゃられるのならば……」



レイナが頼み込むとアリシアは当然だが断るはずがなく、すぐに船員に命じて船を就航させた。レイナの行動にリリスとネコミンは首を傾げ、彼女が何をしようとしているのかを尋ねる。



「レイナさん、何をするつもりですか?」

「4つの島を巡らなくても、目視できる場所に移動するだけで十分だからね」

「……どうして?」

「まあ、いいから……ここは俺に任せてよ」



ネコミンはレイナの言葉に首を傾げ、島を調べなくていいのかと考えるが、レイナも考え合っての行動であり、すぐに船は出航した――






――それからしばらく時間が経過すると、船はレイナが示した海域に移動すると、彼女は甲板に移動して目元を細める。その行為にアリシアは疑問を抱くが、ここで何かを察したのかリリスが彼女に双眼鏡を渡す。



「これ使います?貴重品なんで、壊さないでくださいね」

「あ、ありがとう。これではっきりと確認できるよ」

「あの……何をしているのですか?」

「いいからいいから、しばらくはレイナさんの好きにさせてください」



レイナの行動の意図が読めずにアリシアは戸惑うが、そんな彼女をリリスは邪魔にならないように下がらせると、レイナは双眼鏡を確認して島の様子を伺う。



(よし、この距離なら大丈夫だ……解析!!)



双眼鏡越しに島の姿を捉えたレイナは解析の能力を発動させると、アリシアが事前に記した4つの島の確認を行う。島を視界に捉えた状態で解析の能力を発動させると、視界に画面が表示された。



(やった!!上手く行った!!)



解析の能力もレイナが成長するにつれて能力の方も強化され、島のような巨大な物体でも解析で調べる事が出来るようになった。詳細画面を確認し、それぞれの島の詳細を確認を行う。


イチノ島とニノ島は特に怪しい点はなく、せいぜい猟師がよく訪れるという文章しか描かれていなかった。サンノ島には人間はいない様子だったが、シノ島だけ他の島と異なる特徴が存在した。



『シノ島(仮名)――ヒトノ帝国の管理する海域の存在する島。現在は海賊「青髭」となのる集団が拠点としており、島の底に存在する空洞にクラーケンの住処が存在する』

「見つけた!!」

「えっ!?な、何をですか!?」



レイナが急に大声を上げた事にアリシアは戸惑うが、そんな彼女にレイナは双眼鏡を下ろして海賊船とクラーケンの事を話そうとしたが、すぐに思いとどまる。

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