第647話 海賊船
「実はひと月ぐらい前の話になるんですけど、この港町は嵐に襲われたんです。その時に灯台を見張っていた若手の兵士が荒波を移動する船を見たといい出したんです」
「その話は本当ですか?」
「待ちなさい、そのような報告は受けていませんよ!?」
「い、いや……実は船を見かけた兵士は一人だけで、他の兵士は確認出来なかったんです。船を発見したと言い張っていた兵士もはっきりとは覚えていないそうで……」
「でも、船は見たんですよね。どんな船なんですか?」
「黒色の帆に髑髏の紋様が記されていたそうです」
「いや、どう考えても海賊船でしょそれ!!」
兵士の報告にレイナはツッコミを入れるが、兵士達も嵐の海の中で航海する船があるとは思わず、見つけた兵士も一人しかおらず、しかも本人さえも後々になってはっきりとは覚えていないと言われれば兵士のただの見間違いだと判断される。
結局は嵐の日に見かけた船はそれ以降は見かける事もなく、見間違いないの可能性があるならば大事にする必要はないという事で報告を怠ったという。だが、もしも嵐の晩に海に本当に船がこの海域に訪れていた場合、その船を調べる必要があった。
「とりあえずはその船を調べてみましょうか。どいっても、最後に見たのは一か月前となると見つけ出すのは苦労しそうですね」
「レイナの解析でどうにか出来ない?」
「そういわれても……」
「……この海域にはワイーハ以外にも人が住める小島がいくつかあります。そこを回ってみましょう」
「え?いいんですか?」
「構いません。皆さんのお陰でわずかながらに希望を持てました……もしも何者かがクラーケンを操っていたとしたら、まだ天使像を取り戻せる可能性もあります」
アリシアはリリスの推理が正しければクラーケンを操る黒幕が存在すると知り、彼女としてもこのまま諦めるつもりはなかった。すぐにアリシアは被害を受けていない船に乗り込み、捜索に向かう事にした。レイナ達も言葉通りに乗り掛かった舟のため、アリシアの手伝いを行う事にする――
――クラーケンの被害を免れた船に乗り込んだレイナ達は地図に記されている大陸付近の小島を確認し、順に見回りを行う。船室に集まったレイナ達はアリシアが用意してくれた地図に視線を向け、島の数の確認を行う。
「こちらをご覧ください。これがこの海域に地図です」
「うわ、結構島がありますね」
「はい、ですが船を隠せるような島は限られています。恐らく、もしも兵士が見つけたという船が隠れて停まっているとしたら、この4つの島に限られます」
「なるほど、それなら片っ端からこの島を調べてみる必要がありますね。ついでにレイナさんもこの地図を頼りに地図製作の能力を記録しておいてくださいよ」
「分かった」
リリスの言う通りにレイナは地図製作の技能を発動させ、しっかりと近海の地図を記録させておく。これで船が何処を移動しているのかはレイナも把握できる。しかし、ここでアリシアは申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「皆さん、本当に一緒について来て下さるのですか?今回の件は私達の国の責任です。皆さんに迷惑を掛けた上に捜索を手伝ってもらうなんて……」
「いやいやいや、友好国同士お互いに協力して問題を解決しましょう!!ねっ、レイナさん!!」
「そ、そうそう……遠慮なんか必要ありませんよ」
「天使像が落ちたのもそもそも私達のせ……むぐっ」
「ぷるるんっ(それは言わない方がいい)」
ネコミンの口をクロミンが塞ぎ、レイナ達はアリシアに怪しまれないように作り笑いを浮かべる。そんな彼女達にアリシアは涙ぐみ、手伝いをしてくれることを感謝する。
「皆さん、ありがとうございます……実はあの天使像は亡き祖父が作り上げた物なのです。祖父は皇帝でありながら一流の陶芸家でもあり、あの天使像を一人で作り出したんです。だからあの天使像は祖父の遺品でもあるので、どうしても取り戻したいのです」
「あ~……そうだったんですか」
「それなら絶対に取り戻さないとね……」
「……頑張る」
「ぷるるんっ(元気出しなよ)」
話を聞かされたレイナ達は増々罪悪感を抱き、必ずや天使像を取り戻す事を決意する。涙ぐむアリシアをクロミンが慰めるように頭の上に乗っかる。アリシアは急に頭に乗ってきたクロミンに戸惑うが、優しく頭を撫でまわす。
これでもう後には引けなくなったレイナ達は何としてもクラーケンを見つけ出すため、一か月前に港の灯台で見かけたという怪しい船を探す事にした――
※その頃のケモノ王国
チイ「リル様、またこんな本を部屋の中に隠して!!」(# ゚Д゚)ノちょっとエッチな本
リル「ご、ごめんなさい」(´;ω;`)←部下に叱られる女王
ハンゾウ「ベッドの下に隠すから簡単に見つかるのでござるよ」壁|ω・)←密告者
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