後日談 《力を見せつける》
「くっ……本当に成長したんだね、嬉しいよ!!」
「まだまだ、これからですよ」
聖剣の力を借りずとも、レアもこれまでの道中で幾度も修羅場を潜り抜けてきた。帝国にいる間はリルを中心に剣術を学び、他にもチイやティナからも指導を受けてきた。戦技や魔法が扱えなくとも、培った技術は裏切らない。
「今度はこっちが行きますよ!!」
「来いっ!!君の全力を見せてくれ!!」
「なら、遠慮なく……兜割り!!」
「何だって!?」
「まさか、戦技か!?」
「わあっ!?」
レアは木刀を上段に構えて接近すると、勢いよく振り下ろす。実際の所は技名を叫んでも本当に戦技が発動出来るわけではない。だが、幾度も他人が戦技を発動させる動作を見てきたレアは戦技とは言ってみれば技術を任意に生み出す力でしかなく、戦技が覚えていない人間が戦技で扱う技術が使えないわけではない。
剣士が覚える「兜割り」という戦技の動作を模倣したレアはダガンに叩き込もうとすると、あまりの迫力にダガンは咄嗟に木刀を構えるが、強烈な一打によってお互いの木刀が破壊されてしまう。
「うわっ!?」
「はあっ!!」
木刀が壊れてもレアは止まらず、ダガンの身体を掴むと一本背負いの要領で彼の身体を地面に叩きつけ、手にしていた折れた木刀を振りかざす。その光景を見ていた者達はダガンを殺すつもりかと焦った。
「てりゃあっ!!」
「うっ!?」
「止めるんだ、霧崎君……えっ?」
顔面に衝突する寸前、レアは木刀を寸止めした事で泊めようとした瞬も立ち止まったが、ダガンは目の前で向けられた木刀に視線を向け、苦笑いを行う。
「そうか、そういえば獣人国の兵士の訓練は実戦方式だったね。なら、僕の負けだ……」
「あっ!?すいません、いつもの癖でつい……」
ダガンの言葉にレアは慌てて彼の身体の上から退き、普段の訓練通りに動いたせいでやり過ぎた事を謝罪する。帝国とは異なり、王国の兵士の訓練は実戦方式で戦う事が多く、相手を戦闘不能に追い込むか降参を認めさせるまでは止める事は出来ない。
やりすぎてしまったかとレアは反省するが、ダガン本人は気にした風もなく、むしろ嬉しそうにレアの手を借りて起き上がると、そのまま握手を行う。自分が見ない間に立派に成長した彼にダガンは素直に賞賛の言葉を送る。
「レア君、君はもう立派な勇者だ……僕から教える事はなさそうだね」
「そんな事ありませんよ。ダガンさんのお陰で色々と助かりました。こうして俺が生きているのもダガンさんの訓練のお陰です」
「僕の……?」
帝城にいた頃はダガンの厳しい訓練によってレノは心身共に鍛えられ、特に体力の方はかなり伸びていた。実際にダガンの厳しい訓練を乗り越えたからこそ精神的にも鍛えられ、最後まで諦めずに戦う根性は身に付いたといっても過言ではない。
「やっぱり、ダガンさんも俺の師匠の一人です。訓練、ありがとうございました」
「こちらこそ……また、機会があれば一緒に訓練してくれるかい?」
「はい!!」
二人は笑顔を浮かべて改めて手を握りしめると、その様子を見ていた兵士や使用人は拍手を行う。その中には帝国にいた頃のレアを冷遇していた者達も含まれ、見事にダガンを打ち倒した彼を褒め称える。
「す、凄い……これがあの勇者様なのか?」
「この城にいた頃は兵士にも勝てなかったのに……」
「やっぱり、勇者様は凄いんだな……」
「くそっ……なんか差を付けられた気がするぜ」
「レア君、凄かったね~」
「……そう、だね」
大勢の人間にレアが褒め称えられる姿に茂は若干悔し気な表情を浮かべ、彼は自分よりも先にダガンを打ち倒したレアに対抗心を抱く。一方で桃の方はレアの姿を格好いいと思い、その隣に立つ瞬は何とも言えない表情を浮かべていた――
柱|д゚)ヤベー←柱の影で試合を見ていた皇帝
壁|ω・)フフフ←その皇帝の様子を伺うリル
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