後日談 《勇者達の再会》

「おい、霧崎!!聞いたぞ、お前が魔王軍を倒したんだろ!?やるじゃねえか!!」

「霧崎君、会えてよかった!!前に私を助けてくれたの霧崎君なんだよね!?」

「わっ……ちょ、落ち着きなよ二人とも」

「……会えてよかったよ、霧崎君」



帝国へと帰還したレアは勇者3人と再会し、積もる話もあるので久々に集まった勇者4人は帝城の中庭へと移動する。最初に召喚されたばかりの頃はここで良く訓練を行っていた事を思い出し、当時の訓練の指導官を行っていたダガンも現れた。



「レア君!!久しぶりだね、元気にしていたかい!?」

「あ、ダガンさん!!お久しぶりです!!」



ダガンの顔を見たレアは彼の元へ急ぎ、帝国にいた頃では彼だけはレアの事をまともに扱ってくれた。他の兵士はレアが勇者の中でも特に目立つ能力をみせていなかった事、ウサン大臣に目を付けられていた事から距離を取り、ぞんざいに扱っていた。


帝城に戻ってきたレアを見て顔をそむける兵士や使用人もおり、彼等はレアが城にいた頃は碌に関りもせず、陰口を叩いていた。しかし、現在のレアの立場は一変し、ケモノ王国にて魔王軍を壊滅させた話は既に国中に広がっていた。民衆はどうしてそんなに優秀な勇者が他国に行ってしまったのかと嘆く程である。



「レア君の活躍ぶりは聞いているよ。ケモノ王国の方で頑張っているらしいね……そうだ、久しぶりに訓練をしないかい!?」

「訓練ですか?」

「ああ、成長した君の力をみたいんだ!!どうだい、やってくれるかい!?」

「ダガン将軍、それは……」



久々に顔を合わせたというのに訓練を行う事を提案したダガンに瞬が口を挟もうとするが、それに対してレアはここでの訓練の日々を思い返す。ダガンの厳しい訓練のお陰でレアは心身ともに鍛えられたのは事実であり、恩返しも兼ねて彼の提案を引き受ける事にした。



「分かりました。でも、訓練だからって手は抜きませんよ?」

「そうこなくっちゃ!!じゃあ、久しぶりに組手から開始しようか!!」

「はい、お願いします!!」



ダガンが木刀を差し出すとレアも受け取り、その様子を見ていた他の3人の勇者は苦笑いを浮かべる。一方でダガンの方はレアがどれほど成長したのかを確かめるため、全力で挑む事にした。



「おい、勇者様とダガン将軍が戦うらしいぞ!!」

「な、何だって!?」

「これは見ものだな……」

「前の時は組手どころじゃなかったからな……」



この城にいた時はレアはダガンの元で基礎訓練しか受けておらず、組手などもってのほかだった。理由としては当時は貧弱なステータスだったレアでは下手に組手をすると殺しかねない事態に陥り、一度だけ兵士と戦った時は腕が折れる事態に陥った。


まだレベルも技能も碌に覚えていない状態のレアでは帝国の一般兵にも劣っていた。しかし、今は魔王軍を打ち倒す程に成長したレアがどれほど強くなったのかを確かめるため、城中の人間が彼とダガンの組手を観察する。



「頑張れ~レア君!!」

「やっちまえ!!」

「……健闘を祈るよ」

「うん、ありがとう」

「よ~し……本気で行くよ、レア君!!」



勇者3人の声援を受けながらレアはダガンと向き合うと、聖剣の力は借りずに自分の力のみで彼に挑む事にした。ダガンはミームの次に偉い将軍であり、実力の方はミームとそれほど大差はない。むしろ勇者の訓練に付き合い続けた彼は召喚当初の時よりもレベルも上げていた。



「もうすぐ昼時だ、試合開始の合図は鐘の音が鳴った時に始めようか!!」

「いいですよ、じゃあ……よろしくお願いします!!」

「よろしく!!」



二人は互いに頭を下げると、一定の距離を保ち、木刀を構えた。しばらくの間は沈黙が訪れ、裏庭には多くの人間が集まる。レアがどれほど成長したのかを確かめるため、大勢の人間が興味を抱いていた。そして昼の時刻を迎えた事を示す鐘の音が鳴り響く。



「行くぞ、レア君!!」



鐘の音が鳴り響いた瞬間にダガンは突っ込み、木刀を振りかざす。その攻撃に対してレアは動かず、その様子を見ていた瞬は戸惑う。



(どうして動かないんだ!?)



レアが迫りくるダガンに対して動かない様子を見て瞬は戸惑うが、ダガンは全力で木刀を振り下ろす。その攻撃に対してレアは一歩だけ後ろに下がると、最小限の動きで紙一重にダガンの振り下ろした木刀を回避する。


まるで武道の達人の如く、ダガンの動作を完全に見切って回避したレアに誰もが驚き、一方でダガンの方は休まずに攻撃を行う。今度は戦技を繰り出し、渾身の一撃を放つ。



「旋風!!」

「おっと」



横向きに振り抜かれた木刀に対してレアは体勢を屈めて回避すると、ダガンの木刀が頭上を通り抜ける。自分の戦技を交わしたレアにダガンは驚くが、戦技を発動した直後に隙が生まれた彼に対してレアは下から振りかざし、ダガンの喉元に放つ。



「はっ!!」

「くぅっ!?」



ダガンは反射的に頭を逸らして攻撃を回避する事には成功した。だが、最初に召喚されたばかりの頃のレアと比べても身体の動作も反射神経も別人のように変化していた。

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