第637話 魔王の最期
「いけません、あの高さから落ちたら下手したら死にますよ!?」
「まずい、誰か受け止めるんだ!!」
黒龍と共に落ちていくレイナの姿を見て慌ててリル達は彼を助け出そうとするが、この時にサンはクロミンの身体を掴み、彼女はレイナへ向けて蹴飛ばす。
「クロミン、お願い!!」
「ぷるるんっ!?」
「うわっ……!?」
クロミンは蹴り飛ばされると、落下中のレイナに衝突し、彼はそのままクロミンをクッション代わりにして地面へと墜落する。何度かバウンドはしたが、どうにか落下の衝撃はクロミンのスライムボディによって抑え込む事に成功し、安堵したレイナはクロミンの頭を撫でる。
「ありがとう、クロミン……」
「ぷるんっ(いいって事よ)」
「レイナ!!無事か!?」
「魔王は倒したのか!?」
レイナの元にリル達も駆けつけ、彼女達はレイナの無事を確かめると安堵した表情を浮かべ、リリスに至ってはレイナの身体の診察を行う。
「ふむ、怪我はしていないようですね。ちゃんと意識はあります?魔王に身体を乗っ取られて操られたりしてませんか?」
「大丈夫だって、平気だよ……それより、魔王はどうなった?」
「見ての通りだ。まだ私達に歯向かうつもりだな」
『おのれ……口惜しい、人間どもがぁっ……!!』
頭部を切り裂かれた黒龍は未だに闇属性の魔力を放ち、どうにか切り離された胴体とくっつこうとしていた。しかし、先の攻撃で魔王の闇属性の魔力も消耗し、もう抵抗する力も残っていなかった。
頭部だけの状態になった魔王の元にレイナ達は赴き、エクスカリバーを手にしたレイナは魔王の前に差し出す。首だけになったとはいえ、魔王を放置すれば他の生物に憑依して逃げ出す可能性も存在するため、ここで確実に止めを刺さなければならない。
「さあ、レイナ君……やってくれ」
「悪い魔王を倒すのは勇者だと昔から決まってる」
「お前以外にこいつを倒す力を持つ者はいないんだ」
「お願いします、レイナ様……貴女の手で悪を断ってください」
「きゅろっ!!」
「ぷるんっ」
「ぷるりんちょっ」
皆の言葉を聞いてレイナは頷き、ここで彼女は聖剣を振りかざす。だが、この時にリリスが何かを思い出したようにレイナを引き留めた。
「あ、待ってください!!レイナさん、まだ文字変換の力は残っていますか?」
「え?」
「まだ一文字残っているなら、その姿じゃなくて勇者として相応しい姿で倒さないと駄目ですよ」
「……ああ、そういう事か」
リリスの言葉にレイナ以外の者は疑問を抱くが、ここで何処から現れたのかハンゾウが姿を現し、彼女は男性用の衣服を用意する。
「こういう事も有ろうかと用意してきたでござるよ!!」
「うわっ!?ハンゾウ、今まで何処にいたんだ!?」
「遅くなって申し訳ないでござる。拙者がレア殿やレイナ殿の変装用のために普段から常備している制服でござる」
「ありがとう、ハンゾウ……じゃあ、すぐに準備するからね」
レイナはハンゾウが持って来た男性用の衣服に着替えると、すぐに自分のステータス画面を開き、最後の1文字分の文字変換を利用して「女性」から「男性」へと戻った。
男性の姿へと戻り、名実と共に勇者としての姿を取り戻したレイナはエクスカリバーを構えると、改めて黒龍の頭部と向かい合う。彼は聖剣を両手に構えると、黒龍の頭部に向けて語り掛ける。
「魔王」
『勇者ぁあああっ……!!』
「……さよなら」
別れの言葉を告げるとレイナ改めレアは聖剣を振り下ろし、ありったけの魔力を放出させて聖剣の刃から光を放つ。その光に飲み込まれた黒龍の頭部は内部の潜んでいた魔王の魂を一変も残らずに浄化させた――
――こうして魔王軍との長き因縁に終止符が打たれ、この時代の魔王は「解析の勇者」によって討ち取られた。この事実はケモノ王国だけではなく、世界各国にも伝わったという。
※最終回じゃないです!!もうちっとだけ続くんじゃ!!
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