第636話 全ての聖剣の力を込めて……
『ガアアアアッ!?』
「効いてますよ!!その調子です、このまま畳みかけましょう!!」
リリスの言葉を聞いた全員が頷き、レイナだけに任せずに全員で挑む。その様子を見てレイナは唖然とするが、そんな彼女の元にサンが駆けつけて彼女は背中に抱えていた聖剣を渡す。
「レイナ、たくさん聖剣を持って来た!!」
「これは……俺の聖剣?持ってきてくれたの?」
「さあ、最後は決めてくださいよ!!レイナさん、やっちゃってください!!」
サンがレイナが普段から使用している聖剣を運び込み、遂にレイナはフラガラッハ、アスカロン、エクスカリバーを手にする。デュランダルは残念ながら壊されてしまったが、この3本の内に初めてケモノ王国で作り出した聖剣がエクスカリバーである。
エクスカリバーを手にしたレイナは二つのフラガラッハを背中に差すと、アスカロンとエクスカリバーを抜き取る。これでもう負ける気はせず、竜殺しの異名を誇るアスカロン、闇を払うエクスカリバーを手にしたレイナは黒龍へと向かう。
「うおおおっ!!」
『おのれっ……虫けら共がぁあああっ!!』
「きゃあっ!?」
「うわっ!?」
「にゃうっ!?」
レイナが走ってきた光景を見て危機感を抱いたのか、黒龍は全身から黒色の電流を放ち、周囲へと放電を行う。その結果、デュランダルで首元を差していたティナとネコミンは吹き飛ばされるが、寸前でシロとクロに乗り込んだチイとリルが受け止める。
「大丈夫か、二人とも!!」
「びりっときた……」
「き、気持ち悪いです……うぷっ」
「うわっ!?落ち着け、我慢するんだ!!」
「「ウォンッ!!」」
ティナとネコミンが離れた途端、黒龍は逃げるように飛翔し、地上から離れようとした。地上から離れればもう襲われる心配はなく、上空から黒雷を放出させて王都を焼き尽くそうとした。
『消え失せろ、人間ども!!』
「消えるのは……お前だっ!!」
大口を開き、全身から電流を纏った黒龍は黒き雷光を放とうとした。それに対してレイナは勢いよく飛び上がると、聖剣を突き出す。
(頼む、力を貸してくれ!!)
エクスカリバーを突き出した状態でレイナは黒龍へ向けて飛び上がると、エクスカリバーが光り輝き、聖属性の魔力で構成された光の剣と化す。光の剣は上空から放たれた黒雷を正面から弾き返し、まるでレイナを導くように上昇する。
黒雷を拡散しながらもレイナは上昇し、そのまま黒龍の口元へと向かう。だが、あと少しという所で黒龍は身体を反転させると、巨体を生かして尻尾を叩き込む。
『ガァアアアアッ!!』
「ぐぅっ!?」
「レイナ君!?」
「そんなっ……!!」
尻尾を叩きつけられたレイナを見て地上のリル達は彼が吹き飛ばされると覚悟した。しかし、レイナは叩き込まれる寸前にアスカロンを黒龍尻尾へと突き刺し、振り落とされないようにしっかりとしがみつく。
「まだだぁあああっ!!」
『ギャアアアアアアアッ!?』
尻尾に差したアスカロンを握りしめた状態でレイナは黒龍の身体を足場にして駆け出し、尻尾から胴体まで斬り裂く。その結果、血と共に黒色の魔力が大量に噴き出し、黒龍の悲鳴が響く。
胴体を斬り裂きながらあと少しで顔面の部分まで到達しようとした時、ここで黒龍は再び全身から電流を放つ。黒龍の全身に電流が迸り、レイナの身体へと襲い掛かる。
『ギィアアアアアッ!!』
「うぐぅっ!?」
「頑張れ、レイナ!!」
「あと少しですよ!!」
エクスカリバーのお陰である程度は闇属性の攻撃を掻き消す事は出来るが、雷属性の魔力を含んだ電流は完全には無効化は出来ない。だが、それでもレイナは止まらず地上の声援を耳にしながら黒龍の元へ向かう。
(ここで終わらせるんだ!!)
皮膚のあちこちが焼き付きながらもレイナは黒龍の顔面へと向かい、やがてアスカロンによって引き裂かれた胴体が割れ始め、黒龍は傷口を闇属性の魔力で塞ぐ余裕もなくなってしまう。
『止めろぉっ……来るな、くるなッ、くルな、クルナァアアアアッ!?』
「……くたばれ、魔王ぉおおおおっ!!」
遂に首筋にまでレイナは到達すると、ここで胴体を斬り裂いていたアスカロンを引き抜き、先にティナが差していたデュランダルに目掛けてエクスカリバーとアスカロンを振り落とす。背中の二つのフラガラッハを含め、合計で4種類の聖剣を利用して黒龍の身体へと叩き込む。
首元に突き刺さったデュランダル越しに聖属性の魔力と衝撃が襲い掛かり、今度こそ黒龍の頭部を切断する事に成功し、地面へと落ちていく。斬り裂かれた黒龍の」胴体からは闇属性の魔力が消失し、元の黄金色に光り輝く肉体へと変化を果たした。
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