第635話 王都最終決戦
『オォオオオオッ……!!』
「なっ、また!?」
休みなく黒雷を放つ準備を行う黒龍を見てレイナは戦慄し、聖剣に視線を向けた。流石に次の黒雷を受ければ聖剣が持ちこたえられるかは分からず、下手をしたら聖剣が壊れればレイナの命はない。
この状況を打破する方法があるとすれば黒雷が撃ち込まれる前にレイナがエクスカリバーを文字変換の能力で作り出すしかない。しかし、周囲を見渡しても素材となり得る道具はない。
(駄目だ、間に合わない!?)
既に黒龍は黒雷を放つ体勢を整え、その行動を確認したレイナは地上の被害を考えてもう一度飛ぶしかないかと思われた時、突如として黒龍の顔面に爆発が生じた。
『アガァッ!?』
「えっ!?」
「よし、命中しましたよ!!」
「きゅろっ!!」
「ぷるるんっ!!」
唐突に黒龍の顔面が爆発した事にレイナは戸惑うが、近くから聞き覚えのある声が聞こえて振り返ると、そこには建物の屋根の上にて魔導砲の砲弾を抱えるサンと、頭にクロミンを乗せた双眼鏡で黒龍を見上げるリリスが存在した。
3人の傍には魔導砲らしき大砲が数個存在し、元々は壊れていた物を直したのかあちこちが罅割れていた。そんな魔導砲にサンは砲弾を装填すると、リリスが黒龍の位置を把握して計算しながら撃ち込む。
「もう一発、撃ちますよ!!
大砲に装弾を終えると、砲口が光り輝き、再び大砲から火属性の魔弾が発射されて今度は黒龍の首元を撃ち抜く。魔導砲の砲撃を受けた黒龍の身体はぐらつき、巨体が地上へと落ちる。
『グゥウウッ……!?』
「よし、効いてますね!!どうですか、私の魔導砲の威力は!?」
「リリス、サン、クロミン、どうしてここに!?」
「あ、レイナ!!助けに来た!!」
「ぷるるんっ(待たせたなっ!!)」
レイナは3人がこの場に存在する事に驚き、特に何処から持ち出してきたのか魔導砲を幾つも持ち込んできた事に唖然とする。しかし、今は彼等から事情を聞く暇などなく、黒龍から狙われる前に逃げるように促す。
「駄目だ!!すぐに逃げて、あいつはそれぐらいじゃ倒せない!!」
「えっ?」
「きゅろっ!?あの気持ち悪いの……もう起き上がった!?」
「ぷるんっ!?」
サンの言葉にレイナ達は振り返ると、そこには魔導砲の攻撃を受けても倒れたはずの黒龍が顔を向け、3人が存在する方向へ向けて大口を開いていた。それを確認したレイナは黒雷を放つ気だと知り、急いで3人の元へ向かう。
「3人とも、避けて!!」
「わわわっ!?」
「リリス、早く逃げる!!」
「ぷるるんっ(こいつはマジでやばいぜ!!)」
レイナの言葉を聞いて3人はその場を離れようとしたが、黒雷が放たれる前に逃げるのは到底間に合わない、はずだった。
「はぁあああっ!!」
『アガァッ!?』
黒龍が黒雷を放つ寸前、黒龍の後頭部に強烈な衝撃が走り、その影響で狙いがずれて黒雷は上空へと放たれる。黒龍の後頭部に走った衝撃の正体はデュランダルを抱えたティナであり、彼女はデュランダルを突き刺して強制的に黒龍の首を別方向へと曲げた。
後頭部に突き刺したデュランダルを握りしめた状態でティナは能力を発動させ、デュランダルの刃を振動させて衝撃波を生み出す。体内から直接に衝撃波を発生させると、黒龍の後頭部から剣を引き抜く。
「これで、止めです!!」
『ギャアアアアッ!?』
デュランダルを引き抜くと、ティナは黒龍の首元に向けて衝撃波を利用して加速した刃を放ち、切断を試みる。刃は深々と食い込むが、それでも完全な切断には至れず、彼女は歯を食いしばる。
「くっ!?まだ力が足りませんか……」
「ティナ!!そのまま構えていろ!!」
「私達も忘れて貰っては困るな!!」
「「ウォンッ!!」」
ティナがデュランダルを食い込ませた状態で耐えていると、シロとクロに乗り込んだチイとリルが現れ、彼女達はデュランダルの刃に向けてフラガラッハとムラマサの刃を繰り出す。二人の放った聖剣と妖刀がデュランダルの刃を後押しすると、更にデュランダルの刃が黒龍の首元を切断する。
完全に首を切り落とすまではあと少しなのだが、それでも力が足りずに刃は止まってしまう。このままでは3人が危険に晒されると思われた時、ここでティナの背後に飛びつく人影が存在した。
「にゃんっ!!」
「わっ……ね、ネコミンさん!?」
「私も力を貸す!!」
ネコミンはデュランダルを握りしめるティナに抱き着き、彼女の掌に触れると聖属性の魔力を送り込む。デュランダルの正当な所持者ではないネコミンが聖剣に触れると拒否反応を引き起こすが、聖剣の所有者越しに魔力を送り込むのであれば拒否反応は起きない。
聖属性の魔力が送り込まれたデュランダルの刀身が光り輝き、聖剣であるデュランダルと聖属性の魔力の相性は抜群で黒龍の体内の内側に魔力が送り込まれる。その結果、黒龍はレイナに攻撃された以上に苦痛の悲鳴を上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます