第618話 騎士レイナVS魔王軍最高幹部
「うおおおっ!!」
「ぬおっ!?」
デュランダルを振りかざすレイナに対してナナシは両手の大剣で受けようとしたが、思いもよらぬ剣の重さにナナシの身体が後退する。
その光景を見て他の者達は驚き、特にティナやリュコは自分達でさえも力負けをした相手にレイナが押し勝っている事に信じられない表情を浮かべる。
「す、凄い!?」
「なんという力だ……いったい、いつの間にそこまで腕を上げた!?」
満月によって身体能力を限界まで上昇させているはずの狼男のナナシの膂力は巨人族さえも遥かに上回るが、そんな相手にレイナは一方的に攻撃を繰り出し、追い詰めていく。
ナナシは予想以上のレイナの攻撃の重さに戸惑い、自分が負傷している事を差し引いてもレイナの腕力は異常だった。剣で受ける度に腕が痺れ、後ろへ下がってしまう。
「馬鹿なっ……貴様、これほどの力をどうやって身に付けた!?」
「こう見えても結構修羅場を潜り抜けてるんだよ!!」
レイナは上段に剣を構えると、リルから教わった「兜割り」の戦技を参考にした一撃を放つ。その攻撃によってナナシの身体が大きく吹き飛び、彼はしりもちを着いてしまう。
「ぐはっ……ば、馬鹿なっ、人間如きがここまでの力を……!?」
「はあっ……人間だからって、舐めるなよ」
汗を流しながらもレイナはデュランダルを構えると、刃を振動させて能力を発揮させる。剣を振り払って衝撃波が発生させ、ナナシの肉体を更に吹き飛ばす。
「ぐはぁっ!?」
「終わりだ、化物!!」
「待て、勇者殿!!その者の剣は……!!」
止めを刺そうとした近付いたレイナにカレハは咄嗟に声をかけるが、ここでナナシは目を見開くと両手の大剣の能力を発揮させ、同時に炎と冷気を放つ。
「がああっ!!」
「うわっ!?」
「レイナ君!?」
炎魔刀からは炎、氷魔刀から冷気を発生させたナナシは両手の大剣を突き出すと、レイナは咄嗟にデュランダルで受け止めるが、熱気と冷気が同時に襲い掛かる。
ナナシと鍔迫り合いの状態に陥るが、押し寄せる熱気と冷気に対してレイナは顔を歪め、一方でナナシの方は力を込めてレイナを押し返す。
「ここまでだ、勇者!!」
「くっ……うおおおおっ!!」
「なにぃっ!?」
しかし、鍔迫り合いの状態でレイナはデュランダルを振動させると、二つの大剣の刃を弾き返す。その状態から更にレイナは大剣を振りかざし、上空へと跳躍するとチイの「和風牙」のように大剣を振り下ろす。
「そんなの効くかぁっ!!」
「うおおおっ!?」
「す、凄い!!」
レイナが空中から振り下ろしたデュランダルが衝撃を放ち、頭上から衝撃を受けたナナシは避けきれずに地面に身体をめり込ませる。その様子を見ていた者達は驚きを隠せず、さらにレイナは猛攻を仕掛ける。
「はぁあああっ!!」
「ば、馬鹿なっ……何故、何故効かん!?」
幾度も刃を交わしながらナナシは戸惑いの声を漏らし、先ほどから何度もレイナは氷魔刀と炎魔刀の放つ熱気と冷気を浴びていた。普通の人間ならば耐え切れるはずがない熱量差の攻撃を受けているにも関わらず、一歩も引かずにレイナは剣を振り抜く。
彼女が身に付けている服は焦げ付いたり、逆に凍り付く箇所もいくつかあった。しかし、肝心のレイナの肉体の方は影響を受けておらず、その事にナナシはある答えを導き出す。
「貴様!?まさか、耐性の技能を持っているのか!?」
「防寒と熱耐性の技能なら……とっくの昔に習得済みだよ!!」
レイナが冒険者として活躍していた頃、色々な地方を動き回る事を考慮し、あらゆる環境に備えて「耐性」の系統の技能は一通り習得していた。その中には熱や冷気の耐性に関わる技能も存在し、そのお陰でレイナは炎魔刀と氷魔刀の影響を受けてもある程度は耐え切る事が出来た。
最も耐性系の技能は万能ではなく、あくまでも無効化するわけではない。それでもレイナは気合で耐え凌ぎ、ナナシの両手の大剣を破壊するために剣を放つ。
「このぉっ!!」
「ぐうっ……舐めるなっ!!」
大剣同士を重ね合わせながらレイナとナナシは踏ん張ると、ここでナナシはレイナに直接攻撃するのではなく、彼女が持っているデュランダルに攻撃対象を変更させた。限界まで炎と冷気を同時に発動させ、レイナの大剣に注ぎ込む。
「ぐおおおおおっ!!」
「くぅっ!?」
「な、何て奴だ……!?」
「これでは近付けん……!!」
あまりの熱気と冷気の放出に他の者達は近づけず、鍔迫り合いの状態に陥ったレイナも押し寄せる熱気と冷気の同時攻撃に顔を歪めるが、自分の所有するデュランダルに異変が起きている事に気付く。
(こいつ、まさか……!?)
デュランダルに視線を向けると、氷魔刀の冷気によって冷やされ、その後に炎魔刀の炎で加熱し、激しく刀身の温度が変化を引き起こす。そのせいで金属疲労を引き起こしたのか、世界一の硬さを誇るデュランダルの刃に亀裂が入った。
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