第603話 影魔導士エイの捕縛
――影魔導士エイに見事に勝利を果たしたサンは、気絶した彼を連れてレイナ達の元へと戻る。レイナは彼女が兵士の格好をした男を引きずってきたときは何事かと思ったが、彼女は事情を聞くとリルは信じられない表情を浮かべる。
「ほ、本当にこの男をサンちゃんとクロミンだけで倒したのか?」
「リル、しつこい!!何度もそう言ってる!!」
「ぷるぷるっ(驚くのも無理はない)」
「……確かにこの男、兵士の格好をしていますけど色々とやばい物を隠し持っていますね」
「じゃあ、俺達が戦った相手は……」
「偽物、でしょうね。もしかしたら途中までは本物で何処かで入れ替わっていたのかもしれません」
サンが捕まえてきた男をレイナは解析で調べると、確かに本物の「影魔導士」のエイである事が判明した。しかし、それならばレイナ達が追っていた人物は偽物という事になるが、足跡を解析した時は確かにエイが残した物で間違いなかった。
「いったいどうなってるんだ?俺達が追っていた相手が二階の部屋に隠れているなんて……」
「そういえばサンが見つけたという男が乗っていた魔法陣の台座が気になりますね……もしかしたらですけど、転移台じゃないですか?」
「転移台だと!?馬鹿な、転移台は大迷宮にしか存在しないのでは……」
「可能性はあり得ます。勇者が残した神器の中には遠方を一瞬で移動できる道具もあるという文献が残っています。この男が乗っていたという台座を調べてみましょう。武器庫の方も調べてみましょう」
リリスの提案にレイナ達はすぐに動き、サンとクロミンは男が隠れていた部屋へと戻り、彼が乗っていた「台座」を運び出す。一方でレイナ達の方は爆発によって荒らされた武器庫の中から台座のような物を探し出すと、壁際の方に倒れている小さな台座を発見する。
全員が集まって確認すると、二つの台座は外見が一致しており、同じ紋様の魔法陣が刻まれていた。魔法陣の横幅は1メートルは存在し、人間が乗り込めるほどの大きさは存在した。
「これが……転移台?大迷宮の物と比べたら小さいけど……」
「ふむ、とりあえずは調べてみましょうか。レイナさん、解析をお願いします」
「分かった。解析!!」
二つの台座を前にしてレイナは解析を発動させると、同時に二つの画面が表示される。それを確認してレイナは本物である事を知る。
――小型転移台――
詳細:初代勇者によって製作された神器の一種。使用者の魔力を吸い上げて転移魔法陣が発動し、別種の小型転移台へと転移する事が可能。但し、移動距離に応じて魔力の消耗量も大きくなる
―――――――――
画面に表示された文章を確認すると、レイナはリリスの予想通りに勇者が残した転移台の一種である事を話す。
「リリスの言う通り、転移型の神器みたいだけど……」
「なら、この人はこの神器を使って武器庫から逃げていた?でも、それだと私達が最後に見た人は誰?」
「多分、サンとクロミンが聞いた言葉から察するにこの男が操っていた人形のようですね。それにしてもまさか自害に見せかけて逃走していたとは……敵ながら、策士ですね」
まんまとレイナ達を武器庫へと招き寄せ、自分は転移台を利用して安全な場所に避難し、武器庫に残した人形を利用して爆発を引き起こした事になる。状況的に考えてもレイナ達が武器庫に入り込む前に罠を仕掛けた事になり、危うくレイナ達は死にかけた。
「どうしますか、この男?情報を吐かせるにしてもこの状態だと目を覚ますのに時間が掛かりそうですね」
「ふむ……レイナ君の魅了の能力でこの男から情報を聞き出すか」
「みりょー?」
「あ、サンは気にしなくていいよ。そういう言葉はサンにはまだ早いからね」
リルの言葉にサンは首を傾げるが、相手が男性であるならば今のレイナならば魅了の能力で虜にして従える事も出来る。しかし、わざわざ男の目を覚まさせずともレイナは解析の能力を利用して情報を引き出すのは可能である。
「意識がなくても俺の能力ならこの男が持っている情報を調べられますよ?」
「あ、その手がありましたね。改めてレイナさんの解析は本当に便利ですよね」
「よし、すぐにやってくれ」
レイナは捕まえた影魔導士エイの詳細画面を開き、頭の中に浮かんだ疑問が画面に反映され、レイナの知りたい情報が表示される。その結果、この男は魔王軍の手先ではなく、魔王軍に寝返ったツルギに依頼されただけの男だと判明した。
エイは長年の付き合いであるツルギに頼まれ、彼は城に忍び込んでレイナ達を引き付けておくように指示されていた。影魔法を利用して兵士達を争わせ、自分は兵士に変装して城内へと忍び込み、事前に用意しておいた「人形」でレイナ達を罠に嵌める。彼は魔王軍の具体的な作戦の内容までは聞いていなかったが、ツルギによると魔王軍は今夜のうちに王都を滅ぼすつもりだと判明した。
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