第604話 状況確認
「……とりあえず、この男が知っている限りの情報は引き出せたと思います」
「この王都を壊滅させるだと……魔王軍め!!」
「一先ず、この男は拘束して閉じ込めておきましょう。そうですね、前にレイナさんが作った収納量が無限の大きなリュックがありましたよね?その中に放り込んでおきましょうか」
「デジャヴを感じる」
影魔導士のエイに関してはこれ以上の情報は掴めず、もしも目を覚まされたら厄介なので、かつて古王迷宮にてイヤンを拘束した方法と同じようにレイナが作り出した収納量が無限の入れ物に閉じ込めておく。この中に封じ込めれば何も出来ず、そもそも中に入った人物からすれば時間の概念も受け付けない。
エイをリュックに閉じ込めると、とりあえずは適当な場所に放り込む。これで今度こそ城内の侵入者を片付けることが出来たと思われた時、レイナ達の元にチイとハンゾウが駆けつけてきた。
「リル様、ご無事ですか!?」
「リル殿、只今戻ったでござる!!」
「チイ!?それにハンゾウも……無事だったか!!」
リルは二人が無事に戻ってきた事に喜び、特にハンゾウが生きて帰ってきた事に安堵した。二人はレイナ達も無事である事を知って安心したが、すぐに城下町の報告を行う。
「城下町に広がっていた火災は落ち着き、負傷者の避難もほぼ完了しました!!しかし、街の中には既に魔王軍が侵入しています。そして……ガオ王子の仇であるツルギと交戦しました」
「ツルギだと……!?」
「既にツルギはチイ殿と拙者が討ち取ったでござる。強敵でしたが、どうにかレイナ殿があたえてくれた聖剣のお陰で事なきを得たでござる」
「討ち取った!?あのツルギをですか!?」
チイとハンゾウがツルギを討ったという言葉にレイナ達は驚き、同時にリルの方は複雑な表所を浮かべる。彼女としてはツルギは義弟のガオの仇であるため、自分の手で打ち取りたいという考えはあった。しかし、今は二人が無事な事を喜び、状況の再確認を行う。
現在の王都は魔王軍の攻撃を受けており、既に城下町の火災とロックゴーレムの大群の侵攻はレナの引き起こした「豪雨」によって対処済み。城下町に侵入していたツルギはチイとハンゾウによって討ち取られ、城内に忍び込んだ影魔導士のエイはサンとクロミンが捕縛。飛行船の方に関しては煙が上がり、現在はどうなっているのか分からない状況だった。
「飛行船で待機している兵士からの連絡はまだ届いていない……だが、先ほどから飛行船の建設所の方角から煙が上がっている」
「あそこには森の民の戦士と兵士が配置されているはずですが……恐らくはもう、船は破壊されている可能性もありますね」
「そんな……あんなのに苦労して作ったのに」
「仮に飛行船に何かあったとしたら……僕達は雷龍の対抗策を失ってしまった」
この状況下で雷龍が王都へ襲撃を仕掛けてきた場合、飛行船を失ったレイナ達では対抗手段がない。地上からでは雷龍を倒す術はなく、頼りのレイナも雷龍の姿をはっきりと捉えられない限りは打つ手がない。解析の能力でも雷龍を視界に捉えない限りはどうしようもなかった。
「ここで悩んでいても仕方ありません、ここはすぐに行動を映しましょう」
「行動?何か思いついたの?」
「魔王軍が攻め込んでいると分かった以上、奴等の仲間を捕まえて計画の詳細を掴むんです!!王都を壊滅するつもりなら魔王軍の幹部が一人だけ送り込まれるなんてあり得ません、きっとどこかにツルギ以外の魔王軍の幹部がいるはずです!!そいつを捕まえましょう!!」
「しかし、どうやってだ?闇雲に探し回った所で見つかるはずがないだろう?」
「ふふふ……こういう時こそ地図製作の出番ですよ!!」
リリスはレイナとチイを指差し、二人が習得している「地図製作」を利用して敵を炙り出す方法を告げる。確かに彼女達の地図製作の能力ならば地図の範囲内に敵が現れた場合は敵の反応が表示されるが、地図製作で敵を感知する範囲は限られている。
「リリス、地図製作を使うといっても気配感知や魔力感知の範囲内の敵しか分からないよ?」
「そうだぞ、いくら地図製作といってもこの王都全域に存在する反応を全て確かめる事なんて出来るはずが……」
「ふふふ、その点は私に考えがあります。要するに二人だけでは見つけ出すのは難しいという事ですね」
「あ、ああ……」
気配感知や魔力感知の技能は感知できる範囲が限定されているため、地図製作と応用しても感知範囲内の存在しか捉える事は出来ない。しかし、仮にレイナとチイだけではなく、他に地図製作の技能を覚えている者がいたとすれば話は別だった。
「皆さんは覚えてますか?前に農民の称号の人間を探し集めた時、レベル上げのために白狼騎士団の面々が手伝った事を……」
「あ、ああ……そういえばそんな事もあったな」
リリスの言葉にレイナ達は思い出し、農耕を始めたばかりの頃に白狼騎士団の指導の元、農民の称号や護衛の兵士のためにレベル上げを手伝いをさせた事を思い出す。
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