第600話 武器庫での戦闘
「レイナ君、ネコミン、離れるんじゃないぞ。必ず敵は何処かに隠れているはずだ」
「分かってる……レイナ、探せない?」
「それが……気配感知も魔力感知も何故か上手く発動しないんだよ」
レイナは感知系の技能を発動させて敵の居所を探すが、何故か気配は感じられず、魔力の方も部屋の至る箇所から感じて敵の居場所が掴めなかった。
「しまったな、この武器庫には魔道具の類も保管されている。恐らく、魔力感知が上手く発動しないのはそのせいかもしれない」
「そうなんですか?」
「レイナ、地図製作でどうにかならないの?」
「……範囲外には反応はないかな」
地図製作の能力で武器庫全体を記録すれば敵の位置を掴めるかもしれないが、それは相手も承知のはずであり、武器庫を下手に動き回るのは危険過ぎた。だが、行動しなければ何も変わらず、こうしている間にも魔王軍が次にどんな行動を取るのか分からない。
意を決してレイナ達は離れないように武器庫を移動し、敵の位置を探る。この際に武器庫のあちこちから物音が響くが、恐らくは敵が影魔法の力で武器庫内の物を利用して物音を敢えて出して注意を引こうとしているに違いなかった。
「二人とも、松明は手放さないようにしっかりと掴んでおくんだ。足元だけではなく、天井や壁にも気を付けろ」
「はい、分かりました」
「……レイナ、蝋燭があった」
壁に取り付けられた燭台を発見したネコミンは武器庫を照らすために否を灯そうとした時、ここでレイナは嫌な予感を抱き、咄嗟に周囲を見渡す。すると壁に設置されていた槍が唐突に動き出し、燭台に近付こうとしたネコミンに接近する。
「ネコミン!!」
「にゃっ!?」
「くっ!?」
咄嗟にレイナはネコミンの尻尾を掴んで引き寄せると、彼女が先ほどまで立っていた場所に槍が突き刺さり、その光景を確認したリルは咄嗟に剣を抜く。すると次々と武器庫内に保管されている武具や防具が震え出す。
「ぽ、ポルターガイスト!?」
「何を言っているのか分からないが、多分レイナ君が考えているのとは違うと思うぞ!!」
「……見て!!あちこちにあの気持ち悪い蛇がいる!!」
ネコミンは痛そうに尻尾を摩りながらもいつの間にか部屋中に大量の黒蛇が動き回っている事を見抜き、蛇たちは武器や防具に絡みつくと、レイナ達の元に目掛けて放つ。
「まずい、防ぐんだ!!」
「くそっ!!」
「うにゃっ!?」
咄嗟にリルは傍においてあった大盾を掴み、次々と投げつけられる武器や防具を防ぐ。ネコミンは傍にあった木箱を拾い上げるとその中に身を隠し、レイナは剣を抜いて弾く。
武具ならば槍、剣、斧、他にも防具ならば鎧、兜、盾などが次々と放たれ、終いには棚まで倒れてくる。それらの攻撃に対してレイナ達は防戦一方だった。
(くそっ……好き勝手しやがって!!)
レイナは現在はデュランダルは持ち込んでおらず、仮にデュランダルがあれば衝撃波を発して武器庫内の物を吹き飛ばす事も出来た。現在の彼女が所持しているのはフラガラッハのみだが、ここでネコミンが自分の剣を差しだす。
「レイナ、これを使って……!!」
「ネコミン!?これは……そうか、その手があったか!!」
「何をする気だ!?」
ネコミンの言葉を聞いてレイナは彼女から剣を受け取ると、次々と放たれる武具や防具から身を守りながらも解析の能力を発動させ、彼女が持ち出した剣の所持者の名前を自分の名前へ変化させる。
文字数は4文字も使ってしまったが、ネコミンから託された剣をレイナは手にすると、ありったけの魔力を込めて剣を振り払う。
「喰らえっ!!エクスカリバー!!」
『ぐあああっ!?』
武器庫内に強烈な光が放たれ、部屋中に広がっていた黒蛇が光の刃によって消滅する。そしてレイナ達の反対側の壁際の方から悲鳴が上がり、誰かが倒れ込む音が響く。
「ふうっ……た、助かったのか?」
「多分ですけど……それよりもネコミン、エクスカリバーを貸してくれてありがとう。後で名前を書き換えて返すからね」
「別に無理しなくていい……そもそも私は剣は苦手」
――ネコミンが所持していた「聖剣エクスカリバー」を使用し、窮地を脱したレイナは彼女に聖剣を返そうとしたが、本人は拒否した。今後の事を考え、治癒魔導士の彼女と最も相性が良さそうな聖剣を託していたのだが、ネコミン本人は剣を不得手とするのでそのままレイナへと返却する。
レイナはネコミンの言葉を聞いて仕方なくエクスカリバーは自分が管理する事に決め、他の二人を連れて壁際へと移動する。すると、全身をフードで纏った人物が倒れている事に気付き、先のエクスカリバーの一撃によって影魔法を強制的に解除された影魔導士のエイという男だと確信した。
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