第598話 影の暗殺者
――同時刻、王城内に残ったレイナは城門の兵士達から情報を聞き出し、彼等の身に何が起きたのかを詳しく聞く。その中にはオウソウも含まれ、彼は突如として兵士が襲い掛かってきたときの状況を話す。
「隊長、敵の正体は恐らくだが影魔法の使い手だ……俺も噂には聞いた事があるが、実際に見たのは初めてだが……」
「影魔法?それはどんな魔法なの?」
「言葉通り、影を利用する魔法さ。具体的には自分の影を操作して敵を操る事が出来ると聞いた事はあるが……実際に見た者は少ない。それほどまでに使い手は希少なのだろう」
オウソウの話によると兵士達の身体に「黒蛇」のような形をした影が纏わりついた途端、身体が勝手に動き出して襲い掛かて来たように見えた。しかし、影は強い光には弱いのか松明を掲げただげで逃げ出してしまい、事なきを得たという。
「影魔法の弱点は強い光、つまり影を維持できないほどの光を押し当てれば奴の魔法は無効化されるはずだ」
「なるほど、すぐに城内の兵士全員に松明を常備させろ!!」
『はっ!!』
リルはオウソウの話を聞きつけて速やかに指示を出すと、その間にレイナは襲われた現場の観察を行い、手がかりを探す。
「レイナ、どう?何か分かった?」
「解析の能力で敵が何処に隠れていたか分かりますか?」
「うん、ちょっと待ってね……あっ、見つかった!!」
レイナは至る場所に「解析」の能力を発動させ、城門の見張りの兵士とオウソウを襲ったという「影魔法」を扱う魔術師の手がかりを探していると、城門の近くの柱を見て声を上げる。
柱にはレイナの目には見えないが「指紋」が存在したらしく、その指紋の正体が敵の魔術師の者である事が判明する。恐らくはここで魔術師は柱の影から城門の様子を伺い、その際に付着したと思われた。
『指紋――影魔導士エイの汗、付着してから10分45秒経過。この場所にて城門の兵士と騎士を襲う』
「うわ、指紋だけでここまで解析できるのか……全然気づかなかった」
犯人が残した指紋からレイナは敵の正体を掴み、更には正確な時間と当時どのような行動をしていたのかまで判明した。さらに詳しく解析を行うと、次の目的地まで表示される。
『指紋――影魔導士エイの汗、付着してから10分45秒経過。この場所にて城門の兵士と騎士を襲う。その後、この場を離れて武器庫へと向かう』
「武器庫?どうやら武器庫に向かったみたいです」
「本当か!?よし、すぐに後を追う。だが、大人数で追いかけると気づかれる恐れがあるな……お前達は別の場所を捜索しろ!!」
「し、しかし国王代理の護衛は……」
「大丈夫だ、ここにいるレイナ君は白狼騎士団最強の騎士、ネコミンも優秀な治癒魔導士、そしてリリスは世界最強の科学者だ」
「えっへん」
「世界最強の科学者って何ですか、国王代理は私を何だと思ってるんですか」
「それに私達は無音歩行の技能も扱える。君たちはそんな真似は出来ないだろう?はっきり言って付いてこられても足手まといだ」
「そ、そんな……」
リルはきっぱりと兵士の護衛を断り、レイナ達と共に影魔導士エイの追跡を行う。ちなみにレイナとネコミンとリルは「無音歩行」の技能を習得しており、急いで移動しても足音を立てずに走る事が出来る。リリスは流石にその技能は習得しておらず、レイナにおぶさる形で移動する事になった。
「よっこいしょっと、背中をお借りしますよ。重くないですか?」
「大丈夫だよ、お祖母ちゃん。何処まで運べばいいの?」
「誰がお祖母ちゃんですか!!祖母と孫ごっこは今度にしてください、優しくしたってお小遣いはあげませんよ!!」
「リリス、あまり騒ぐな……よし、追跡を開始する!!」
「リルも声が大きいと思う」
「追跡を開始する(小声)」
レイナ達は廊下を駆け抜け、武器庫が存在する方向へと向かう。その途中、レイナは解析の能力を発動させ、廊下内の足跡を確認する。この際に「暗視」と「観察眼」の技能を併用し、廊下内に存在するエイの足跡を把握した。
「足跡を見つけた。このまま武器庫に向かっている」
「え、こんな暗い場所でよく分かりますね。それに足跡で敵の行動も把握できるなんて……連日、解析の能力を使用し続けた甲斐がありましたね」
「毎日地道に頑張った甲斐があったよ。いったいどれだけの人間を解析した事か……」
「く、苦労を掛けてすまないね……」
「本当にレイナは頑張ったと思う」
農民の称号に転職できる人間を探し出すため、レイナは毎日訪れる人々を「解析」して調べていた。その数は数百人を超し、かなり過酷な環境だった。しかし、解析の能力は使用する事で強化され、今では複数の足跡を一度に解析して画面に表示できるだけではなく、目的の詳細画面のみを餞別できるようになった。
解析の勇者として本領発揮したレイナは解析を駆使して敵の足取りを掴み、追跡を行う。そして武器庫の前に辿り着くと、兵士が倒れている事に気付く。
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