第595話 ツルギの末路
「ぐあああああっ!?」
「なっ……これは!?」
「……やはり、そういう事でござったか」
紅月が砕けた瞬間、ツルギの身体から煙が上がると急速的に彼の身体は老け込む。その様子を見てチイは驚くが、ハンゾウは予想していたかのように見下ろす。
先ほどチイを斬り付けた際にツルギの肉体は怪我が治り、肉体も若返ってきてはいたが、妖刀が砕けた瞬間に彼は急速に年老いて塞がっていた傷口も開いてしまう。その様子を見たハンゾウは妖刀を拾い上げると、チイに語り掛ける。
「これが妖刀に魅入られた者の末路でござる」
「ど、どういう意味だ?」
「妖刀を使用した人間の殆どは悲惨な死を迎えるでござる。恐らく、この男は妖刀によって今日まで生きながらえてきたのでござろう」
「く、くくっ……こ、こんな……こんなバカな、この儂が……」
ハンゾウが手にした刃が砕けた妖刀にツルギは必死に手を伸ばし、彼女から妖刀を取り返そうとする。そのあまりにも哀れな姿にハンゾウは黙って妖刀をその場に落とすと、ツルギは妖刀の柄を握りしめようとした。
「こ、この刀さえあれば……儂は、まだ……!!」
「お、おい!!もう止めろ、それ以上は……」
「哀れでござるな……」
ツルギの姿に見ていられず、ハンゾウは目をそらしてチイは困惑した表情を浮かべるが、ツルギは地面に落ちた妖刀の柄に手を伸ばす。そして柄を握りしめた瞬間、唐突にツルギの身体に異変が生じる。
「あがぁあああっ!?」
「なっ!?」
「これは!?」
妖刀を手にした瞬間、ツルギの身体がミイラのように痩せ細っていき、やがては完全に息絶えたのか動かなくなってしまう。そして妖刀の方は刃が砕かれた箇所から徐々に変形し、長刀から短刀のように変化を果たす。
ハンゾウは恐る恐る拾い上げると、どうやら最後にツルギの生命力を吸い上げて妖刀が変化したらしく、それを知ったハンゾウは忌々し気な表情を浮かべる。妖刀「紅月」はまだ死んではおらず、今度は短刀に変化して他の生物の生命力を吸い上げようとしている事を知る。
「これが妖刀に狂わされた者の末路か……ここまでくると哀れに思うな」
「同情する余地はないでござる。この男は自分の目的のために妖刀を使用し、最後は妖刀に見限られた……それだけの話でござるよ」
「……ガオ王子の仇を討てただけはいいか」
ツルギの変わり果てた姿を見てチイはせめてもの情けとして開け開かれている彼の目を閉じさせると、ハンゾウへと振り返って今までどうしていたのかを問う。
「ところでハンゾウ、お前は今までどうしていたんだ?ティナと共に偵察に出向いて戻ってこなかったから心配してたんだぞ」
「それは申し訳なかったでござる。実は拙者たちは岩山に辿り着いたとき、色々とあって戻る事が出来なかったのでござる」
「いったい、何があったんだ?」
チイはハンゾウ達の身に何が起きたのかを尋ねると、ハンゾウは牙山での出来事を語り始めた――
――牙山にて大量のロックゴーレムの集団と遭遇し、戦闘に陥って崖から落とされてしまったハンゾウ達は奇跡的に命は助かった。落下の際中、ティナが大剣を岩壁に突き刺してどうにか落下の勢いを殺す。
『皆さん、私に捕まって!!』
『承知!!』
『ウォンッ!?』
ティナは片腕にシロを抱きかかえ、ハンゾウはそんな彼女の足を掴み、クロを掴む。どうにか地上までの墜落は免れたと思われたが、ここで岩壁に突き刺したティナの大剣が2人と2匹の重量に耐え切れずに落ちてしまう。
『しまっ……きゃああっ!?』
『ぬあっ!?』
『ギャインッ!?』
結局は一番下まで落下した2人はシロとクロを下敷きにしてしまい、2匹の身体がクッション代わりになって助かった。落下の途中で一度は止まった事、そして柔らかな毛皮で覆われたシロとクロが下敷きとなった事で2人は奇跡的に助かった。
その後の事はシロとクロは残念ながら落下の際に身体の骨が折れたらしく、動ける状態ではなかった。そこでハンゾウは2匹に出来る限りの治療を施し、安全な場所に避難させるとティナと共に王都まで走って戻ってきたらしい。
途中で何度か魔物と遭遇したが、それらを蹴散らしてどうにか王都にまで戻ってきた二人は自体の報告のために王城へと向かおうとした。しかし、その途中でハンゾウは嫌な気配を感じ取り、ティナと別れてこの場所にまで移動してきたという――
「――前に妖刀に襲われた時、その気配を覚えていたので街中で妖刀の気配を感じてすぐにツルギが居る事は分かったでござる」
「なるほど、そして私が襲われている所を見て加勢してくれたのか」
「そういうことでござる。チイ殿を助けられて良かったでござるが……いったい、何が起きているのでござる」
「……魔王軍の襲撃だ。奴等が本格的に動き出した。もう既に他の場所でも戦闘が繰り広げられているかもしれない。私達も急いで向かうぞ!!」
「承知!!」
チイの言葉にハンゾウは即座に従い、2人はまずは状況を把握するため、一度王城へと引き返す事にした――
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