第577話 魔導砲の試射

「あの、リリス様……気になっていたのですが、魔導砲の発射のための魔石は何処で入手したのですか?」

「勿論、いつも通りにレアさんに作って貰ったんですよ」

「流石にこれだけの量を作るのは苦労したよ」



砲撃のために必要な魔石に関してはいつも通りにレアの能力で作り出した魔石を使用し、だいたい大きさは通常の大砲の鉄球と同じ大きさを誇る魔石を用意していた。これらの魔石は自然界では滅多に手に入らず、魔導砲の砲撃のためにはどうしてもレアの力を借りる必要があった。


リリスは試しに火属性の魔石の砲弾を装填させ、準備を行う。今回の標的は事前に用意しておいた巨岩を利用し、そこに砲弾を撃ち込む。ちなみに巨岩に関してはレアが作り出したものではなく、サンとクロミンが用意してくれた代物である。



「よし、あの大きな岩を吹き飛ばす事が出来れば牙竜級の敵でも魔導砲は通じるという事です!!距離は300メート、これだけ離れた位置からでも狙い撃つ事が出来れば雷龍にも当てる事は出来るはずです!!」

「射程距離が300メートルか……しかし、誰がこの魔導砲を撃つんだ?」

「当然ですが、確実に当てるためには「命中」や「狙撃」の技能を持つ人間が使用する必要があります。そして都合よくこの二つの技能を持っているのは……レアさんだけですね」

「ええっ……俺が撃つの?」



レアは名前を呼び出されて魔導砲の元に近付くと、リリスから発射の手順を聞く。敵を狙い撃つためには「命中(命中力を上昇)」や「狙撃(敵を確実に狙い撃つ)」の両方の技能を持つレア以上に適任はいないらしく、彼女の指示通りにレアは魔導砲の照準を巨岩に定めた。



「レアさん、頼みますよ。これが成功すれば私達は雷龍ボルテクスを倒す手段を身に付ける事と同義です!!」

「上手くいくかな……」

「大丈夫ですよ、事前に解析の能力で魔導砲を調べて大丈夫だと分かったんでしょう?」

「それはそうだけどさ……でも、実際に撃つとなると心配なんだよ」



魔導砲が開発の際、レアも解析の能力を使用して作業を手伝っていた。魔導砲に不備があれば解析の能力ですぐに判明するため、それを利用して開発は勧められた。その結果、現時点では魔導砲に特に不備はないが、それでもやはり自分が撃つとなると緊張を隠せない。


念入りに解析の能力で魔導砲を調べた後、レアはリリスの指示通りに魔導砲の発射のために準備を行い、狙いを定めた。この際にリリスはレアの身体にもたれかかり、二人は身体を密着させているが特に互いの事を意識しない。



「よく狙いを定めてくださいね、もしも失敗したらとんでもない大惨事になりますから気を付けて下さい」

「そういう事を言わないでよ……よし、行くよ。本当に行くからね。大丈夫?」

「心配し過ぎですよ、ほらちゃっちゃっとやっちゃってください!!」

「……うおりゃあっ!!」



気合の掛け声と共にレアは魔導砲を発射させた瞬間、砲口が光り輝き、装填した魔石の砲弾が発射された。魔石の砲弾は巨岩に向けて接近し、見事に的中すると大爆発を引き起こす。


砲弾並の大きさを誇る魔石ともなると内部に大量の魔力を蓄積されており、あまりの威力に巨岩は粉々に吹き飛んでしまう。その光景を目にした者達は唖然とした表情を浮かべ、一方でリリスの砲は頭を掻く。



「あちゃ~……ちょっと威力の調整をミスりましたかね。でも、まあ発射にはせいこうしましたね」

「これでミスなの!?とんでもない威力だと思うけど……」

「何を言ってるんですか、この程度の威力だと牙竜は倒せても雷龍を一撃で倒せるとは思えませんよ。何しろ相手は上位竜種ですからね、もっと威力を上昇するように調整しないと……」

「な、何なんだお前達は……これでも納得しないのか!?」

「きゅろろ……耳がキーンとする」

「ぷるぷるぷるっ(←爆発の余波で激しく身体が震える)」



リリスの言葉にチイは若干引き気味になり、他の者達も粉々に吹き飛ばされた巨岩の残骸を見て冷や汗を流す。現時点でも通常種の牙竜を屠るだけの威力はあると思うが、リリス曰くこれでは雷龍を一撃で倒すには心許ないという。



「うわっ、熱っ!?リリス、魔導砲が凄い発熱してるけど……」

「ああ、それは仕方ありませんね。開発の時間を最短化させるために魔導砲は単発式にしたんです。だから、一度発射すればしばらくは使えませんよ。この状態でもう一度使用したら今度こそ暴発しかねませんね」

「ええっ!?じゃあ、本当に一発限りの大勝負を挑むの!?」

「いやいや、流石にそこまで無謀な真似はしませんよ。一台だけで挑むなんて言ってないでしょう?」

「ちょっと待ってくれリリス!!まさか、この兵器を量産化するのか!?それはいくらなんでも予算の方が……」



話を聞いていたリルは慌てて口を挟み、飛行船の建設と魔導砲の開発だけでもケモノ王国は大きな負担を抱えていたが、これ以上に魔導砲の開発するとなると流石に限界を迎える事を話す。そんな彼女に対してリリスは安心させるように首を振る。

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