第575話 魂を見る
自分の肉体の異変にカレハは戸惑い、同時にリリスが手にしている薬瓶を見ると、彼女はその中に入っている液体を見て驚く。通常の回復薬とは色合いが異なり、更に高密度の魔力を感じた彼女はリリスの持つ薬瓶の正体を見抜く。
「も、もしやその薬瓶の中身は……精霊薬ではないか!?」
「あ、はい。そうですよ、この薬を使って若返りの奇病を治しました」
「わ、私なんかを救うためにあの貴重な薬を……申し訳ありませぬ、勇者様!!どうかお許しください!!」
「いや、別にいいですよ。気にしないでください、まだ持ってますし……」
精霊薬の存在はカレハは知っているらしく、彼女は膝をついて謝罪する。そんな彼はの態度にレアは別に気にしていない事を告げ、精霊薬と言ってもレアが文字変換の能力で作り出した物に過ぎない。
「族長、精霊薬の事を知っておられるのですか?」
「当然だ、かつて私が仕えた勇者様もお持ちになられていた。しかし、もう今の時代では精霊薬を作り出す素材も枯渇し、今ではかつて作り出された精霊薬しか残っていないはず……そんな貴重な物を分けて下さるとは、なんとお礼を言えば良いのか……」
「あ、お礼は結構です。その代わりに私達のお願いを聞いてくれますか?」
「お願い?」
「実は俺達、ちょっと船を作るための木材を調達したくて……」
レアとリリスは森の民の領地に存在する樹木を伐採し、飛行船に必要な木材を渡して欲しい旨を伝える。その話を聞いたカレハは快く承諾し、それから彼女の指示の元ですぐに森の民の戦士達は木材の伐採に駆り出された――
――若返りの奇病のお陰でカレハは病気が治った後も肉体は若返った状態のまま復活し、肉体の全盛期を取り戻した。彼女は病が治るばかりか若かりし頃の力を取り戻した事で深くレアとリリスに感謝した。
「勇者様、この度の件は何とお礼を言えばいいか……」
「いや、そんなに気にしないで下さい。それと、敬語も結構ですよ」
「そ、そうか?ならば遠慮なく……此度の件、誠に感謝する。そのお礼といってはなんだが、私に協力できる事ならばなんでもしよう。あ、え、エッチな事は駄目だぞ?」
「ちっ、つまらないですね……そこは大人の魅力で誘惑するところでしょう!!」
「なんでリリスがそこで反応するんだよ」
「はぐはぐっ……この肉、美味しい!!」
「ぷるぷるっ♪」
レア達はカレハの屋敷の一室にて食事を振舞われ、食事を行いながらこれからの事を話し合う。カレハは長い間、病のせいで自らの仕事を行えなかったため、しばらくの間は仕事に専念するという。しかし、ここで彼女はサンに視線を向けてある事に気付く。
「ふむ……そこの子供、お主はただのダークエルフではないな?」
「きゅろっ?」
「えっ!?分かるんですか?」
「うむ、私は魂を見分ける能力を持っている。この者は外見はダークエルフだが、魂の色合いが明らかにエルフ族とは違う……この強く荒々しい魂の輝き、普通のエルフではありえぬ」
「魂、ですか……私達にはちょっと分からないですね」
サンの外見は完璧にダークエルフの姿なのだが、カレハによると彼女は明らかに魂の輝きがエルフ族とは違い、非常に強い魂を持っているという。そのため、すぐに族長は彼女の正体をダークエルフではないと察した。
レアとリリスの目から見てもサンは何処からどう見てもダークエルフにしか見えないのだが、カレハにはしっかりと他の人間の魂の色合いが見れるという。だから彼女には擬態系の技能や固有能力で変装した者が近づこうとしても、それを見抜く力を持つ。
「そこにいるスライムもただのスライムではないな、あきらかに魂の強さがスライムの比ではない……これほどの強い魂、竜種級の力を誇るといっても過言ではない」
「ぷるぷるっ(照れる)」
「ほ、本当にそこまで分かるんですか?」
「これは便利な能力ですね、それも精霊の加護とやらのお陰なんですか?」
「その通り、私の精霊の加護は自然界に存在する精霊を感じ取れるだけではなく、他者の魂を見抜く力を持つ。そして勇者殿、貴方の魂はこの場の中で最も強く、同時に優しい光に溢れています」
「え、そうなんですか……?」
自分の魂が魔物であるサンやクロミンよりも強い事にレアは意外に思うが、一方でカレハはリリスの方に視線を向けると、訝し気な表情を浮かべた。
「其方の魂は……ふむ、これは変わっているな。一つの肉体にまるで二つの魂が重なるように合わさっている気がする」
「え、どういう意味ですか?私、魂が二つもあるんですか?心臓が実は左右に一つずつあったりします?」
「魂は別に心臓を現しているのではないぞ。魂とは生命力その物、もしかしたらお主……転生者か?」
「うえっ!?」
カレハが転生者の名前を出した事にリリスは驚き、レアもまかさカレハのくちからそんな単語が出てくるとは思いもしなかった。
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