第568話 魔王軍の対抗策

――帝都への騒動から数日後、レイナ達は無事にケモノ王国へと帰還を果たす。旅に出ている間に特に国内では問題は起きておらず、農耕の方も今のところは順調であった。国内の問題は片付き、これでケモノ王国も本格的に魔王軍に対しての対策を打てるようになった。



「本日の会議は本格的に魔王軍への対抗策の話し合いです。ぶっちゃけた話、これ以上に魔王軍の動向を無視するわけにはいきなくなりました」

「確かに……奴等の中に竜種をも操る存在がいる以上、油断はできない相手だな」



王都のリルの部屋にていつもの面子が集められた後、リリスが司会役を行い、会議が開かれた。内容は具体的に今後はどのように魔王軍に対応するかを話し合い、真っ先にリルが意見を出す。



「当面の問題は魔王軍に対抗する戦力を整える事だな。現状、ここにいる人間の中で竜種に対抗する力を持つのはレイナ君と……ティナ君ぐらいか」

「リュコ殿もいれば心強いのですが……」

「彼女には農耕の護衛役を任せたい、無理をさせる事は出来ない」



レイナ達の中で仮に竜種と対抗できる力を持つといえば勇者であるレイナと、黄金級冒険者であるティナ、それにリュコの3名だけである。残念ながらリルを含めた他の者達は竜種に対抗する力を所持しているとは言えない。


先日の戦闘でリルも牙竜を相手に戦ったが、あくまでも牙竜を打ち倒したのはレイナである。以前よりもレベルは上がったとはいえ、彼女自身も自分が竜種に対抗する力を持つとは思っていなかった。



「僕たち自身も強くなる必要がある、といっても単純に魔物を倒してレベルを上げるだけでは駄目だ」

「そうですね、レベルを上げれば身体能力は強化されますが、やはり竜種と戦うとなると身体能力だけで対抗するのは無謀です。ここは技術と、装備も強化する必要がありますね」

「それならば皆もレイナ殿や拙者みたいに聖剣を装備すればいいのでは?」



ハンゾウは自分の所持するフラガラッハを抱え、この聖剣のお陰で彼女は何度か命拾いした場面があった。フラガラッハは装備しているだけで「攻撃力3倍増」の効果を発揮し、更に経験値を増量させる能力も併せ持つ。



「確かにハンゾウの意見も一理ありますね、しかし問題があるとすれば聖剣を受け取れるのは4文字の名前の人物だけです」

「きゅろっ?どうして?」

「理由としては私達の所持している聖剣は全てレイナさんが作り上げた代物です。当然ですが所有者はレイナさん、つまりは「霧崎レア」となります。この名前が四文字である以上はレイナさんの能力でも四文字の人間にしか変換出来ません」

「つまり……この面子だとハンゾウとネコミンだけが聖剣を受け取れるというのか」

「……私は回復専門だから聖剣は必要ないと思う」



リルの言葉にネコミンは首を振り、治癒魔導士である彼女は戦闘を苦手としていた。主に回復役を任せられているネコミンが前線に立つのは少々問題もある。



「今から四文字の人を集めて聖剣を装備させるという手もありますが……」

「それは止めた方がいいだろう、聖剣は強力な兵器だ。むやみやたらに他の人間に渡すわけにはいかない。ましてや信用できる相手かどうかも分からない者には渡せない」

「聖剣、サンも使ってみたい!!」

「ぷるぷるっ(四文字という事は僕も使えるんだよね?)」

「ちょ、なんですかクロミン。引っ付かないでください、餌はさっき与えたでしょう?」



サンは自分が聖剣を使えない事に不満を漏らし、クロミンも何かを訴えるようにリリスの身体に張り付く。その様子を見ていたレイナは苦笑いを浮かべる一方、一応はこれまでに作り出した聖剣の事を思い出す。


最初にレイナが作り出したのはヒトノ帝国のアリシアも所持する「フラガラッハ」聖剣の中では補助に特化し、装備しているだけで「攻撃力3倍増」さらには「経験値増量」や「魔法耐性強化」などの能力も所持している。


次に作り出した「アスカロン」は聖剣の中でも最強の切断力を誇り、更にフラガラッハを併せ持つ事で万物さえも切り裂けそうな切断力を発揮する。こちらも「経験値増大」と「不壊」の能力を持ち、フラガラッハとは最も相性が良い。


吸血鬼戦にて作り出した「エクスカリバー」の場合は悪魔や死霊系の魔物に対して絶大な効果を発揮し、通常の魔物との戦闘に置いても目眩まし程度の効果は発揮できる。最後のデュランダルに関しては破壊力は聖剣の中でも随一を誇り、遠距離攻撃も行える点からレイナが頼りにしている武器でもある。


これらの4つの聖剣をレイナはこれまでに築き上げたが、実はまだ聖剣の中には彼が制作していない物もいくつか残っていた。その中には竜種に対抗するのに役立つ聖剣も存在した。

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