第566話 白状
「お、お前等……いったい、何なんだ!?どうして私がこんな目に……」
「……言っただろう、私達は魔王軍だとな」
レイナと合流したリル達は魔大臣を引き連れ、ひとまずは彼が研究室を通過する際に利用したレイナの部屋へと赴く。まさか自分が使っていた部屋に隠し通路が作り出されたと聞いたときはレイナも驚いたが、相も変わらずこの場所は人目につかない。
研究室に繋がる通路の存在は極限られた者しか知らず、わざわざこの部屋を訪れる人間などいない。それでも長居すれば念のために確認するために兵士が訪れる可能性もあるが、その前に捕まえた魔大臣にある事をさせる必要があった。
「レイナ君、いつものを頼めるか?」
「あ、はい。すいません、こっちを見てください」
「な、何をする気だ!?止めろ、止めてくれ!!」
リルに促されてレイナは微笑みながら魔大臣に近付くと、その手を伸ばす。それを見た魔大臣は恐怖で引きつり、部屋の中で悲鳴が響いた――
――魔大臣の処置を終えた後、レイナ達は外へ脱出するために行動を開始する。魔大臣さえ引き連れていなければ方法自体は難しくはなく、城下町に潜伏したと思われる魔王軍を探し出す捜索隊に紛れて逃げれば脱出は難しくはなかった。
「ふうっ……ここまで逃げ切れば大丈夫だろう」
「やっとこれ脱げる……やっぱり、獣人族の鎧と違って帝国の兵士の鎧は重い」
「私達のは動きやすい皮製の鎧だからな、人間が身に付ける金属製の鎧はどうにも性が合わん」
「あの、なんか普通に俺の前で脱ごうとするの止めてくれませんか?」
「別に気にする事はないさ、僕達の仲じゃないか」
人目のない場所にてレイナ達は着替えを行い、普通に自分の前で着替えを行おうとするリル達にレイナは頬を赤く染めるが、そんな彼女にリルは微笑む。ネコミンは全く気にしていないが、チイの方は流石に恥ずかしいのか慌てて着替えを終える。
肉体は女性だが、精神面は男性なのでレイナとしては目のやり場に困るが、今は贅沢は言っていられない。着替えを終えるとすぐに回収した装備品に関しては目立たない場所に放置した後、とりあえずはレイナ達は帝都から引き返す事にした。
「僕達の用事はこれで終わった。レイナ君にとっては名残惜しいかもしれないが、ケモノ王国へ引き返そうか」
「そうですね、別にここに思い入れはあんまりありませんけど……」
「まあ、そうだろうな……今日は助かったぞ、レイナ」
「レイナのお陰で何とかなった。流石は銀狼隊の副々団長」
「あれ、いつの間にか変な役職に付かされている!?」
「ぷるぷるっ(今日は疲れた)」
レイナ達は元の服装に戻ると、城下町の警備が強化される前に引き返す事にした。帰路に関しては廃都とへ繋がる通路を潜り抜け、帝都を脱出した――
――同時刻、魔大臣は皇帝の前にて跪き、全身から汗を流していた。皇帝はそんな彼に対して怒りの表情を浮かべ、その場に立っていた者達を威圧する。
「魔大臣よ……貴様、今なんと言った」
「も、申し訳ありません!!魔除けの石の分析に失敗し、魔除けの石は壊れてしまいました……!!」
「……お前は言っていたな、あの魔除けの石を調べて構造を把握すれば量産化も出来ると、そして量産化した魔除けの石を利用すれば牙路に生息する牙竜をも寄せ付けぬ最高の魔道具ができるとな!!」
「ひいっ!?」
皇帝は魔大臣に対して怒鳴りつけ、その手に持っていたグラスを彼の元へと投げつける。魔大臣は恐ろしい表情を浮かべながらも、どうして自分がこんな目に遭うのかと嘆く。
(ああ、何故だ……どうして私はこんな事を……し、しかし、あの女の言う事に逆らえない!!)
レイナの魅了の能力によって魔大臣は彼女の命令に従い、魔除けの石の研究が失敗に終わった事を皇帝に報告した。当然だが皇帝としてはケモノ王国へ攻め入るために必要不可欠な魔除けの石を実験で壊してしまったという魔大臣の報告を聞かされれば我慢できるはずがない。
「愚か者め!!よりにもよって貴重な魔除けの石を破壊しおって、これでは今までの苦労が水の泡ではないか!!」
「へ、陛下!!お許しください!!」
「しかも貴様は儂の許可もなく隠し通路を作り出し、今までその場所で身を隠していたそうだな!!自分一人だけが助かればいいと考えていたのか!?しかも部下からの報告では合成生物なる珍妙な魔物の研究を行っていたそうではないか!!」
「そ、それは……」
「貴様のような命令も守れず、自分が言い出した事を果たせない無能などいらん!!この男を地下牢へと連れていけ!!」
「陛下、お許しください!!どうか、お許しを!!」
「やかましい!!さっさと連れていけ!!」
『はっ!!』
「へ、陛下ぁあああっ……!!」
玉座の間から魔大臣は連れ出され、その後の彼は帝城の牢獄へと囚われる。その後の調査の結果、彼の屋敷から魔王軍と繋がる証拠が発見し、彼は魔王軍と繋がっていた事が判明する。
レイナの魅力の効果が切れた魔大臣は全てを思い出し、訳を話そうとしたが罪人の言葉など聞く耳持たず、彼は死刑だけは免れたが大罪人として長い懲役生活を送る羽目になったという――
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