第561話 結構強いんだよ、私達

「ば、馬鹿なっ!?わ、私の最高傑作が……!!」

「最高傑作?まあ、確かに強いには強いが……これなら大迷宮の魔物の方が歯ごたえがあったな」

「ええ、その通りですね」



コボルトとファングのキメラを倒したリルとチイは武器を鞘に納めると、魔大臣は腰が抜けたのかその場にへたれ込む。そんな彼を見てリルはゆっくりと歩み寄ると、魔大臣は悲鳴を上げた。



「ひいいっ!?あ、あり得ない……こいつはレベル30の獣人族を数人を相手に勝ったんだぞ!?それがどうしてお前等みたいな小娘に!?」

「ほう、それは凄いな……だが、生憎と私達のレベルはもっと高いんだ」

「そ、そんな馬鹿なっ!!」

「嘘じゃない、私のレベルは46、そこにいる私の部下は43、ちなみに保管庫にいる子も42だ」

「40レベル越えだと!?馬鹿な、そんな馬鹿なっ!!」



基本的にはこの世界の基準では冒険者の中でも滅多にレベルが50を超える者は少ない。理由としてはレベルが一定にまで上昇すると非常に上がりにくくなり、簡単にレベルが上がる事はない。


だいたいはどんな種族でもレベル30付近で上がりにくくなるのだが、リル達の場合はレイナのお陰で経験値を大量に確保する方法を手に入れている。



(レイナ君から借りた道具を使って地道にレベル上げをしていたお陰だな)



今後の戦闘の事を考え、時間がある時はリル達は巨塔の大迷宮に潜り込み、レイナが作り出した「経験値増加系統」の武器や防具を装備して彼女達は魔物を倒し、大量の経験値を確保していた。


リルは王女という立場上、大迷宮に挑むのも難しい立場ではあったが、彼女の場合はレイナ達が発見した経験石を利用してレベルを上げていた。巨塔の大迷宮では魔物を倒しすぎると出現する魔物が強敵へと変わるが、その反面に入手できる素材の方も良質な物が手に入りやすい。


白狼騎士団の面子も彼女達と同じようにレベル上げを行っており、現在では団員の平均レベルは30を超えていた。これは凄い事であり、通常ならばあり得ない速度で彼等は成長をしていた。



(少しばかりずるい方法だが、私達も国を守る立場の身、手段は選んでいられないからな)



地道に魔物を倒して経験値を稼いでいる人間からすればリル達の方法はたまったものではないだろうが、それでもリルはケモノ王国を守るためならばどんな手も使うつもりだった。



「さてと、魔大臣……君はこれからどうするつもりだ?この状況を打破できる味方はいるのか?」

「ひいっ!?ま、待てっ……お前等は魔王軍なのだろう!?」

「魔王軍?」



魔大臣の言葉にチイは眉を顰めるが、リルはすぐにレイナがジョカのふりをして騒動を起こしている事に気付き、魔大臣はリル達の事を魔王軍だと勘違いしたらしい。


ここは魔王軍のふりをするかと考えていたリルだが、あまりに悠長に話している暇もなく、こうして時間が経過している間にも兵士達に気付かれる恐れがあった。しかし、そんなリル達の事情も知らずに魔大臣は怒鳴りつける。



「お、お前達が魔王軍ならばどうして私の邪魔をする!?話が違うじゃないか!?」

「話が違う、か。それはどういう意味だ?」

「な、何だと?ジョカという女から何も聞いていないのか!?私はあの女と契約を結んで……」

「ジョカだと……やはり、ジョカと繋がっていたか」

「この男、どうしますか?」



予想はしていたが、魔大臣がジョカの名前を口にした事で彼が魔王軍と関わりを持っていた事が確定し、チイはこの男を連れていくか、あるいは始末するべきかをチイに尋ねる。リルは考えた末、ジョカとどのような契約を結んだのかをここで吐かせる事にした。



「ジョカとどんな契約を結んだ?話によっては命だけは見逃してやってもいい」

「い、命!?な、なんで……お前達は仲間同士じゃないのか?」

「生憎だが、同じ魔王軍でも派閥が違ってね。組織ではよくある事だろう?私達の直属の上司はあの女じゃないんだ」

「そ、そんな……でも、確かにジョカと名乗る者が城門に攻め寄せてきたと報告が……」

「それは僕達の知った事じゃないね。何か話の手違いがあったんじゃないのか?さあ、そんな事よりも早くジョカの奴と何を話したのかを答えるんだ。さもないと、その耳の片方を切り落とすぞ」

「ひいいっ!?」



ジョカは壁際に魔大臣を追い込むと、彼の顔の横に蹴りを叩き込み、冷たい眼差しを向ける。そんな彼女に対して魔大臣は股間から黄色の液体を滲み出し、その臭いにチイは鼻を抑える。


先ほどまでの威勢はどうしたのか、あまりにも情けない魔大臣の姿にここまでくると同情さえしそうになるが、時間がないのでリルは脅して情報を吐かせた。魔大臣は抵抗する気力もなく、彼はリルの質問に答えた――





※魔大臣がドMだった場合


魔大臣「はあっ、はあっ……た、たまらん!!もっと蔑んでくれ!!」(´Д`)

リル・チイ「(●ω●)」←冷たい瞳

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