第562話 城門の攻防
――同時刻、城門にて城中の兵士や騎士を相手にジョカに変装したレイナと、黒竜と化したクロミンは暴れまわっていた。最も間違っても相手を殺さないように手加減を行い、レイナは迫りくる兵士達を次々と投げ飛ばす。
「せいやぁっ!!」
「あいだぁっ!?」
「な、何だこの女……めちゃくちゃ強いぞ!?」
「怯むな!!やれっ!!」
接近してきた兵士をレイナは一本背負いの要領で床に叩きつけると、その様子を見ていた兵士達が怯える。しかし、騎士や将軍職の人間は流石に怯まず、数の力を利用してジョカを捕えようとした。
黒竜に対しては城中から集まった「盾騎士」の称号を持つ騎士達が対処を行い、大盾を装備した状態で黒竜とレイナの間に割って入る。黒竜はレイナを助けようと尻尾を振り払うが、それに対して十数名の騎士達が大盾で防ぐ。
「ガウッ!!」
「来たぞ、全員力を合わせろっ!!」
『反動!!』
「ギャウッ!?」
複数の大盾に尻尾が叩きつけられるが、衝突の寸前に盾が激しく振動し、衝撃を跳ね返す。流石に帝城の守備を任されるだけはあって全員が雑魚とは言えず、力を合わせれば竜種にも対抗できる人員もいた。
それでも黒竜が本気を出せば一気に城を制圧する事も出来るだろうが、レイナ達の目的は城の制圧ではなく、リル達が逃げ出すまでの時間稼ぎである。レイナは兵士達に取り囲まれながらも相手をしていると、ここで大柄な男達が現れる。
「どけいっ!!そこの女は我々が対処する!!」
「おお、剛腕隊か!!」
筋骨隆々の大男たちが現れると兵士達はすぐに道を開き、レイナは大男で構成された部隊に取り囲まれる。10人の筋肉男達に囲まれたレイナは嫌な予感を覚えるが、彼等は手に鎖を握りしめており、レイナへと向けて放つ。
「捕まえろっ!!」
「もう逃がさんぞ!!」
「くっ!?」
10人の放った鎖がレイナの身体のあちこちにからみつき、その際に胸元を締め付けられてレイナは苦しそうな顔を浮かべる。彼女の大きな胸元が鎖で締め付けられる光景に兵士の何人かがだらしない表情を浮かべるが、あわてて気を取り直す。
「で、でかい……い、いや!!よくやったぞ剛腕隊!!」
「あんな大きいの滅多に見ねえ……あ、やべっ」
「貴様等、この状況で何を言っておるか!!さあ、そいつを取り押さえろっ!!」
剛腕隊と呼ばれている10名の男達に鎖で押さえつけられたレイナに対し、兵士達は勝ち誇った表情を浮かべるが、一方で剛腕隊の兵士達は誰一人として笑ってはいなかった。
名前の通りに剛腕隊は城に暮らす兵士の中でも腕力に特化した者達を集め、彼等全員がレベル30を超えて中には40間近の人間もいる。しかし、そんな彼等が全員がかりで鎖で抑え付けたにも関わらず、レイナは笑みを浮かべる。
「このぉっ!!」
「うおおおっ!?」
「な、何ぃいいっ!?」
「馬鹿なっ!?」
レイナは力を込めて鎖を引き寄せると、剛腕隊は逆に引き寄せられ、倒れ込む。全員が倒れたのを確認するとレイナは鎖に力を込め、あろう事か素手で破壊した。
剛腕隊全員が力で負け、更には金属の鎖を破壊するレイナの腕力に誰もが信じられない表情を浮かべるが、一方でレイナの方は万が一を考えて地道にレベルを上げていて良かったと思う。
――現在のレイナのレベルは70を超え、この数値はこの世界の人間では恐らく世界中を探しても数十人程度しか存在しない。レベルが70を超えた人間は歴史上の「英雄」と同格の力を持つと恐れられている。
レベル70のレイナとレベル30~40程度しか存在しない剛力隊ではそもそも勝負にもならず、少しばかりレイナが力を込めれば鋼鉄の鎖だろうと破壊は容易い。さらにレイナは剛力隊の所有していた鎖を一つ奪い取ると、黒竜に目掛けて放つ。
「クロ……じゃなくて、クロリン!!」
「ガウッ!?(クロリン!?)」
鎖を投げつけたレイナに対して黒竜は咄嗟に口元を開き、鎖を噛みつく。黒竜は鎖を引き寄せるとレイナの身体も浮き上がり、盾騎士達を飛び越えてレイナは黒龍の背中へと飛び乗る。
「これぐらい時間を稼げば十分かな……よし、下がって」
「ガウッ!!」
「し、しまった!?逃げられるぞ!!」
「止めろっ!!」
城門を潜り抜けてレイナは城の外へ移動を行い、とりあえずは場所を変えて兵士達の相手を行う事にした。まだリルからの合図がないので引くわけにはいかないが、城ノ中で暴れるよりも城の外の方が退散しやすい。
この調子ならば時間稼ぎは問題ないが、リル達が合図を出さない限りはレイナも退く事が出来ないのが問題だった。あまりに時間を掛けすぎると厄介な存在が出てくる可能性もあり、何としてもレイナはリル達が早く抜け出すのを待つ。
(リルさん、チイ、ネコミン……頼むから無事に帰ってきて)
城門を抜け出たレイナは3人の合図を心待ちにするが、ここで城壁を駆け抜けてレイナが乗り込む黒竜の背中に目掛けて飛び降りる人影が現れた。
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