第557話 魔王軍襲来……!?

――グガァアアアアッ!!



黒竜と化したクロミンの咆哮を耳にした見張りの兵士達は震え上がり、同時に城の中に存在する全ての人間の耳にもクロミンの鳴き声は響き渡る。レイナはクロミンの背中に乗りながら城門に視線を向け、命令を下す。



「クロミン、ひっかけ!!」

「ガアアッ!!」

『ひいいっ!?』



クロミンは前脚を振りかざすと、兵士達は悲鳴を上げてその場を離れた瞬間、城門に強烈な衝撃が走る。あまりの威力に城門は破壊され、内側への扉が開いてしまう。


その光景を確認したレイナは城門の内部には入る事はせず、城門に兵士が集まるまで待機する。やがて騒ぎを聞きつけた城内の兵士達が駆けつけ、城門の様子を知って驚きの声を上げた。



「き、牙竜だと!?馬鹿な、どうしてこんな場所に!?」

「しかも普通の個体じゃない、あの色合いは……亜種か!!」

「ま、魔王軍です!!魔王軍の最高幹部が攻め寄せてきたんです!!」

「何だとぉっ!?」



城門には兵士の他にも騎士や将軍職の人間も集まると、ここでレイナはクロミンに乗り込んだ状態で彼等に言い放つ。



「私の名は魔王軍最高幹部のジョカ!!今からあんた達、全員を皆殺しにしてあげるわ!!」

「き、貴様っ……!!」

「何をしている!!奴を撃て!!」

「勇者殿を及びしろ!!牙竜に勝てるのはあの御二人しかいない!!」



兵士達は剣を抜き、弓を構えて黒竜に乗り込んだジョカの格好をしたレイナに挑もうとするが、それをクロミンが見過ごすはずなく、近づいてきた兵士達にクロミンは前脚を振り下ろす。



「ガウッ!!」

「うわぁっ!?」

「ば、馬鹿者!!迂闊に近づくな!!」

「くそ、防壁の兵士を呼び出せ!!何としてもこの怪物を始末しなければ……!!」

「えっと……あ、あはははっ!!無様な姿ね!!」



ジョカならばどのような反応をするのかとレイナは考えながら彼女の演技を行うと、兵士達は憎々し気な表情を浮かべ、一方でクロミンは出来る限り力を抑えて暴れる。


今回の目的はあくまでも派手に暴れて注目を集める事であり、決して相手を殺す必要はない。クロミンは近づこうとする兵士達に定期的に前脚を振り払い、誰一人としてレイナに近付かせない。



(リルさんたちの合図があるまで頑張らないとな……でも、勇者の二人が現れたらどうするべきか)



この城の何処かにいるはずの雛と茂が現れた場合、レイナは二人と戦わなければならない。出来る事ならば二人には正体を話して作戦に協力してもらいたいのだが、そんな簡単に上手くいくとは思えない。



(リルさん、チイ、ネコミン……頼んだよ)



先に侵入した3人が魔大臣を問い詰め、魔除けの石のすり替えに成功すればレイナ達は引き返す事が出来る。作戦が成功すればリルが事前にレイナが渡したある者で合図するため、その合図を確認するまではレイナは城中の兵士を引き寄せる必要があった――






――同時刻、先に城に侵入したリル達は魅了の能力でレイナに操られた兵士達の案内の元、魔大臣の研究室へと辿り着く。研究室は地下に存在するらしく、その場所に関してはリルも初めて訪れる場所だった。



「まさか帝国の地下にこんな場所があるとは……新しく地図に書き記す必要があるな」

「この扉の先が研究室ですが、中に入れるのは魔大臣と直属の配下の人間だけです。我々は鍵を所有していないので……」

「問題ない、下がってて」



リル達は研究室に繋がるという大きな門の前に辿り着くと、鍵が施されている事に気付き、すぐにチイが鍵穴の形状を確認して針金を取り出す。



「この鍵ならば開く事が出来ます。少しお待ちください」

「よし、出来る限り早く開けてくれ」

「おい、お前達!!そこで何をしている!!」

「……見つかった」



鍵を開く途中、地下に続く階段に兵士の集団が現れ、リル達は発見されてしまう。レイナのお陰で城の大半の兵士は城門に集まっているはずだが、それでも全員を引き寄せる事は出来なかったらしい。


兵士の数を把握したリルとネコミンは武器を手にすると、二人は頷いてチイが鍵を開くまでの間は彼女達が兵士を相手にする事にした。



「行くぞ、イヌミン!!」

「分かった……ルーイ、ニイ」

「そ、その名前はどうにかならないのですか……?」



流石に本名で呼び合うわけにはいかず、適当な名前で呼び合う二人にチイは力が抜けそうになるが、すぐに作業に集中する。兵士達も彼等が侵入者だと気付き、慌てて応戦した。



「くっ!?ここにも魔王軍がいたか!!」

「捕まえろっ!!」

「はああっ!!」

「久々の魔爪術」



リルはムラマサを振りかざし、ネコミンは両手に魔力で構成した爪を構えると、兵士の集団へと立ち向かう。魅了された兵士達も彼女達を守るために動きだし、地下に続く階段にて戦闘が始まった――

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