第556話 作戦決行

――夜を明けると、宿屋を抜け出してレイナ達はすぐに行動に移す。事前にリル、チイ、ネコミンの3人は兵士の服装に着替えた後、レイナはチイが制作してくれた服に着替え、全身を覆い隠す。


4人は帝城の裏門へと近づくと、見張りを行っていた兵士達がこちらに近付いてくる4人組をみて訝し気な表情を浮かべる。こんな時間帯に現れた兵士と謎のフードの人物に対して兵士達は警戒するように武器を構える。



「止まれ!!お前達は何をしている!?」

「城下町にて不審者を捕まえました!!この者を捕まえた所、怪しげな道具を所持しており、念のために城まで連行しました」

「不審者だと?」

「おい、どうする?」



兵士達は女性兵に化けたリルの言葉を聞いて戸惑い、とりあえずは1人の兵士がレイナの元へと接近する。この際にレイナは相手の顔を確認して男性だと気付くと、すぐに「魅了」を発動させて男性の腕を掴む。



「従え」

「え、あっ……は、はい」

「おい、急にどうしたんだ?」

「何かあったのか?」



男性はレイナに触れた瞬間に彼女に「魅了」され、虜になった兵士はうっとりとした表情でレイナの言葉に従う。その一方で他の兵士達も集まるが、彼等に対してもレイナは魅了を駆使して次々と味方に取り込む。



「皆さん、この3人の言う事をよく聞いて下さい。何があろうとこの3人の言う事は従ってくださいね」

『はいっ……』

「全く、男という奴は……」

「流石はレイナ、魔性の女」

「嬉しくない誉め言葉だな……じゃあ、リルさん。後はお願いします」

「ああ、任せてくれ。レイナ君もほどほどにな」



レイナは裏門を守備していた警備兵たちを魅了すると、リル達に協力するように言いつけ、彼女達を城の中へと通す。無事に城の中にリル達を送り込むと、後は彼女達が行動しやすいようにレイナは正門へと向かう――





――正門へと辿り着いたレイナは正面を確認し、この時間帯では城門は当然ながらに開いてはいなかった。城門の傍には兵士の姿も存在し、中には学者風の格好をした人物も経っていた。


事前の情報では学者風の服装の人間が「鑑定士」の称号を所有する人間である事は判明しているため、レイナは出来る限りは目立たないように接近を行う。この際に「隠密」「気配遮断」「無音歩行」などの技能を駆使する事である程度の距離まで接近する事に成功する。



(さあ、やるぞ……!!)



隠蔽系の技能を駆使してレイナは限界まで接近すると、兵士達も歩み寄ってくるレイナの存在に気付き、彼等は突如として暗闇から出現したレイナに驚きの声を上げる。



「な、何者だ!!」

「貴様、誰だ!?」

「止まれ、それ以上は近づくな!!」



兵士達は武器を構えると、その中には女性兵も存在し、それを確認したレイナは魅了の能力が通じない事を悟ると堂々と大声を出す。この際にレイナは事前にSPを消費して覚えていた技能を発動させた。




――作戦の開始前、久々にレイナはSPを使用して新しい技能を覚えた。それは「声帯模写」と呼ばれる能力であった。この能力を使用する事でレイナは他の人間の声を限りなく近い声を発する事が出来るようになった。




この声帯模写を使用してレイナはある人物の声を出す用意を行うと、フードを自ら脱ぎ捨てる。そこにはジョカが身に付けていた服と近い感じ服装に着替え、髪型も彼女のようにまとめ、更には仮面で顔を半分を覆い隠した状態のレイナは兵士達にジョカの声真似で怒鳴りつける。



「私の名前はジョカ!!魔王軍最高幹部にして最強の魔物使いよ!!」

「な、何だと!?」

「魔王軍だって!?」

「そんな馬鹿なっ……!!」



魔王軍の名前を口にしたレイナに対して兵士達は戸惑い、鑑定士と思われる男はレイナの姿を見て「鑑定」を発動させて彼女のステータスを覗こうとした。


鑑定士の鑑定の能力はレイナの解析と同じく相手の姿を見るだけで発動できるのだが、レイナの解析と違って鑑定の能力は色々と条件があった。



「そ、そんな!?」

「どうした!?何が見えた!?」

「な、何も見えません!!この女は「妨害」の能力を持っているようです!!」

「何だと!!」



実はレイナは事前に「妨害」と呼ばれる固有スキルも習得し、この能力は鑑定系の能力を防ぐ力を持つ。つまり、鑑定士はレイナのステータス画面を覗こうとしても能力は通じず、正体を見破られる事はない。


相手のステータスを見抜く事が出来なければレイナの正体が知られるはずがなく、兵士達が混乱している間にレイナは背中に隠れているクロミンに振り返り、クロミンも意図を察したように頷く。



(解析……頼んだぞクロミン!!)



レイナはクロミンの詳細画面を開くと、文字変換を発動させてクロミンの種族を変化させ、本来の姿へと彼を変貌させる。そして帝城の城門にて黒竜と化したクロミンの方向が帝都中に響き渡る。





※クロミン「ぷるるんっ!!(久々の大活躍の予感!!)」(・ω・)ノ公開ボタン

 カタナヅキ「あ、こら!!また勝手に押して!!」(;´・ω・)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る