第552話 帝都への帰還方法

――帝都へ向かう事を決めたリルはミームの率いた軍隊が出発をする前にアリシアだけには事情を伝えようと考え、人気のない場所にて彼女を呼び出し、事情を伝えた。話を聞いたアリシアは当然だが反対する。



「帝城へ忍び込むなど危険過ぎます!!貴女は知らないかもしれませんが、今現在の帝城の警備は強化されているんです!!」

「それは分かっている。だけど、このままではミーム将軍が危険に晒されるだろう?」

「大丈夫です、私が父上を説得してみせます!!だからレイナ様もリルも危険な真似はお辞め下さい!!」

「レイナ様、か。そこで僕よりも先にレイナ君の名前が出てくるのは親友として寂しいな」

「なっ……ま、真面目に話してください!!」



リルのからかいの言葉にアリシアは頬を赤く染めて否定するが、そんな彼女に対してリルは危険であろうが計画を取りやめるつもりはない事を話す。



「アリシア、今回の件は君のためにやるんじゃない。僕としてもミーム将軍の事を信頼しているし、彼女のために力になりたいとも考えている。それに魔除けの石を何とかしなければケモノ王国も危険に晒されるんだ」

「リルは私の事を信頼していないのですか?私がいる限り、ケモノ王国と戦争など起こさせません!!」

「それは違う、アリシアの事は誰よりも信頼しているさ。だが、君は先日に死にかけた事を忘れたのか?」

「うっ……」



アリシアが健在な限りは彼女が生きている限りはケモノ王国との戦争など何としても回避させようと尽力してくれるだろう。しかし、あくまでも帝国で最大の権力者は皇帝である事に変わりはない。


現在のケモノ王国とヒトノ帝国の関係性は変わりつつあり、ケモノ王国が勇者レアを受け入れた辺りから帝国側も警戒を強めていた。仮にアリシアが帝都へ引きかえし、ミームの無実が証明されても魔除けの石の存在がある限りは帝国軍がケモノ王国へ攻め寄せる脅威は消え去らない。



「これはもう決めた事だ。君に反対されようと僕達は帝都へと戻り、魔除けの石をすり替えるよ」

「ですが、どうやって帝城に忍び込むつもりですか?」

「そこら辺はまずは帝都に辿り着いてから考えるさ。という事で、僕達は一足先に向かわせてもらうよ」

「えっ!?私達と一緒にいくのではないのですか?」



リルの言葉にアリシアは驚き、彼女はてっきり自分達の手引きでリル達は帝都へ忍び込むつもりだと考えていた。しかし、リルはその言葉に対して首を振ると、大きなリュックを抱えたレイナが戻ってきた。



「リルさん、丁度いい大きさのリュックがありました!!これなら皆、入れると思います!!」

「そうか、それじゃあ僕達はそろそろ行かせてもらうよ。もしかしたら帝都でまた会えるかもしれない」

「り、リル!?貴女何を……」

「アリシア、僕達を信じろ。悪いようにはしない」



レイナと肩を組んだリルはアリシアに笑顔を浮かべ、引き留められる前に二人はその場を立ち去る。残されたアリシアは唖然とするが、彼女には止める事は出来なかった――





――それからレイナ達はミームの軍隊よりも先に街を出立すると、シロとクロに乗り込んで帝都へと向かう。数日後、遂に帝都を視界に捉えたレイナは事前に街で購入したリュックの改造を行う。


解析の能力でリュックの詳細画面を開き、文字変換の能力で改竄を行う。その結果、収納量が「無限」と化したリュックにリル達は中に入る。



「クゥ~ンッ……」

「ウォンッ……」

「大丈夫だよ二人とも、必ず後で取り出すからね」

「しばらくは我慢してくれ」

「怖がらなくても平気、すぐに中から取り出してあげるから」



リュックの蓋を開くとレイナは不安そうな表情を浮かべるシロとクロをリュックの中に入れると、2匹が入ったリュックをレイナは背負いなおして帝都への侵入するために「廃都」へと向かう。


帝都からそれほど離れていない場所に存在する「廃都」かつては都として栄えていたが、今現在では魔物の巣窟と化していた。新人の冒険者がよく立ち寄る場所でもあり、この廃都に生息するゴブリン種を狩る事でレベル上げを計ろうとする人物は多い。


レイナもこの場所で多数のゴブリンとハイゴブリンを倒してレベル上げをした事もあり、同時にリルと再会してチイとネコミンとも初めて出会った場所でもある。4人は懐かしさを覚えながらも帝都と廃都が繋がる秘密の抜け道が隠されている建物に辿り着く。



「懐かしいな、ここでレイナ君と僕達は出会ったんだな」

「そうですね、あれ?リルさんと初めて会ったのは城ですよね」

「レイナ君、と言っただろう?城で会ったときは男の子のレア君だったよ。まさか再会した時、こんな美少女になっているとは夢にも思わなかったがね」

「はうっ……」

「そこで照れた表情を浮かべるな!!こ、こっちが恥ずかしくなるだろう!!」

「3人とも静かに……誰に聞かれているか分からない」



ネコミンの言葉にレイナ達は頷き、改めて帝都へと繋がる地下道の入口を確認する。ここを通れば帝都へ侵入できるはずだが、決して油断はできない。

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