第533話 農民の増員

――数日後、ケモノ王国の方では農耕の成果が早くも現れ、更に人員を増やして農耕の規模の拡大化が行われていた。農民の数も更に増加し、現在では600人近くの農民が農業を営む。


色々と調べた結果、やはり獣人族よりも人間の方が農民の称号を覚えている者が多く、ヒトノ帝国などの他国から訪れた人間をレアが調べたところ、農民の資質を持つ者が多く、一気に100人の農民が加わる。


農耕改革が順調に進む中、薬草の栽培に関しても発展があり、森の民の協力のお陰で薬草の栽培に関しても育成法が見直された。そのお陰で今年は大量の薬草の確保も予想され、更に回復薬の大量生産に関しても計画が進められていた。



「ふふふ、遂にやりましたよ!!新しい回復薬の製造方法を発見しました!!私が考案した調合法ならばより回復効果を高めた回復薬の生産が可能になったんです!!」

「おおっ!!それは凄いな、でも具体的にはどういう風に調合するの?」

「聖水はレアさんもご存じですよね?今までの回復薬の製造の際にはただの水を使用していたんですが、実は聖水を利用したより効果の高い回復薬の製造が出来る事が判明したんです!!」



リリスが王城の研究室にて新たらしい回復薬の製造法を発見し、聖水を利用した新しい回復薬の開発に成功する。その効果は従来の回復薬の否ではなく、更には元々の聖水の効果も足してより優れた回復薬の製造に成功したという。



「新しい回復薬はもうただの回復薬ではありません、名付けて治癒薬ヒーリングポーションです!!」

「治癒薬?」

「ええ、何しろこの治癒薬の凄い所は回復効果は市販の回復薬の2倍、更には一時的に聖属性の魔力を付与させる事が出来ます!!つまり、回復薬と聖水の二つの効果を併せ持った新型の薬なんです!!これさえあればとんな状況でも安心して戦えますよ!!」

「それは凄い!!けど、聖水ってそんなに簡単に手に入るの?」

「そこが一番の問題なんですよね、現状では聖水の方は教会の方から買い取るしかないのでコストの方が掛かるんです。しかし、効果は保証します。これからはこの治癒薬を宣伝して噂を広め、大々的な販売を行いましょう!!」



新しく開発された「治癒薬」に関してはリリスがリルに直訴した所、一先ずは効果を確認し、大量生産を行うか話し合う。現状では素材の聖水の確保は教会側から購入するしかないため、大量生産を行うためにはかなりの出費をしてしまう。そのためにそれ相応の利益を生み出さなければならなかった。


治癒薬の回復効果を確認されると、リルは一先ずは大量生産に踏み切るかどうかは一先ずは保留とする事にした。まだ薬草の収穫時期ではない事もあり、とりあえずは保留にしておいて今は別の事を話し合う。



「皆、良く集まってくれた。今日は実は相談したいことがあるんだ」

「全員が揃うのは久しぶりですね」

「最近は皆、割と忙しかった」

「そうですね~私も治癒薬の開発で大変でしたよ」

「サンも修行ばっかしてた」

「私は冒険者ギルドから指名依頼の対応を頼まれていました」

「俺は解析ばっかしてて疲れたよ……」

「拙者もやっと任務から戻る事が出来たでござる」



リルの元に全員が集まると、まずはハンゾウを前に出して説明を行わせる。彼女は一時的にケモノ王国を離れ、ヒトノ帝国の動向を調査していたという。



「今日、皆を呼んだのは他でもない。ハンゾウの話を聞いて欲しいんだ」

「ハンゾウの?そういえば最近は見かけませんでしたが、何処に行ってたんですか?」

「拙者はリル殿の命令でヒトノ帝国に潜入していたでござる。そしてヒトノ帝国では最近、ある噂が広がっていたでござる」

「噂、ですか?」

「どんな噂なんですか?」

「帝国の姫君アリシア殿と、勇者シュン殿がケモノ王国の策略によって姿を消したという噂でござる」

『はぁああああっ!?』



ハンゾウの言葉に事前に報告を受けていたリル以外の者達は驚き、クロミンに至っては衝撃のあまりに「( ゚Д゚)」という表情まで浮かべてしまう。予想外の事態にレア達は慌てふためき、すぐにチイガが机を叩いて激怒した。



「ふざけるな、何故そんな噂が立っている!?アリシア姫はリル様の御親友、誘拐する理由などない!!いったい何処からそんな噂が広まった!?」

「拙者も信じられなかったでござるが、どうやら最近にたった一晩で国境付近の小城が全て落とされたようでござる。その城を落としたのがケモノ王国の軍勢だという噂でもちきりでござるよ」

「えっ!?城が落とされたのですか?」

「それは大事ですね、でもケモノ王国は軍勢なんて動かしてないですよね?」

「当たり前だ、そんな理由がない」



念のためにリリスはリルに確認を行うと彼女は苛立ちの表情を浮かべて否定し、今現在ケモノ王国がヒトノ帝国に対して戦になりかねない行為を犯す理由がない事を告げる。

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