第477話 地雷式魔石爆弾(地面に魔石を埋めるだけ)

「ほらほら、オウソウさん!!さぼってないでちゃんと魔石を埋めてください!!あ、ちゃんと埋まっている事が分かりにくいようにしてくださいよ!!」

「ぐぬぬっ……な、何故こんな事をしなければならんのだ!?明日、戦が始まるというのに……」

「いいからさっさとしてください!!白狼騎士団では上司の命令は絶対です!!ほらほら、隊長代理のいう事を聞けないんですか!?」

「お、おのれ……隊長が戻ってきたら覚えていろよ!!」

「きゅろろっ♪地面を掘るの、楽しい!!」



白狼騎士団の団員達はリリスの指示通りにあちこちの地面を掘り起こし、本来は希少品であるはずの魔石を埋め込み、地中に魔石を隠す。この行為に何の意味があるのかと思いながらも団員達はリリスの指示通りに動いた。


元々は常日頃から地中に暮らしていたサンドワームのサンだけは楽しそうに地面を掘り起こして魔石を埋め、その横でオウソウはぶつぶつと文句を言いながらも指示通りに従う。



「あ、あの……リリス隊長代理、本当にこれがレア隊長の指示なんですか?」

「ええ、そうですよ。明日の戦に備えての秘策なんです。だから黙って従ってください」

「ううっ……まだあるんですか?」



リリスが持ち込んだ魔石の数は数十個存在し、一定の間隔を開いて彼女は魔石を埋め込むように指示を出す。団員達はどうして自分達がこんな事をしなければならないのかと思いながらも逆らわず、指示通りに埋め込んでいく。


何故、リリスは団員を引き連れて地面に魔石を埋め込んでいるのかというと、これが彼女が考えた「策」だからである。人を出来る限りは殺したくはないというレアの願いを聞き入れた彼女は真っ先に考えたのは戦で勇者の力を見せつければ敵の戦意を失わせればいいと考えた彼女はとんでもない作戦を思いついた。



『レアさんの聖剣の力だけではきっと敵軍を追い返す事は出来ません。ですけど、魔石の力を借りれば十分に恐怖を与える事が出来るはずです!!』

『魔石を?』

『名付けて……地雷式魔石爆弾で決めましょう!!』



レアはリリスの考えた策を聞いて最初は驚いたが、試してみる価値はあると考え、彼女の作戦に乗った。作戦と言っても内容は戦場となる場所に事前に罠を仕掛け、それを利用してレアが聖剣の力を行使するだけである。




――リリスの提案した「地雷式魔石爆弾」とは単純に言えば地中に隠しておいた魔石を利用し、聖剣の力を利用したレアが魔石を破壊して魔力の暴発を敢えて引き起こすだけの作戦であった。


魔石が破壊されれば内部に蓄積されていた魔力が暴発し、本来ならば大惨事を引き起こす。しかも貴重な魔石を大量に用意し、最悪の場合はそれら全てが台無しになってしまう可能性もある。普通に考えればこんな作戦を思いついても実行に移すはずがない。


だが、レアの場合は普通の人間と違う点は彼が「魔石」さえも作り出せる点である。実を言えば戦が始まるまでの間にレアは文字変換と解析の能力を使用して良質な魔石の生成に協力し、更に巨塔の大迷宮で回収した魔石が大量に余っていた。


これらを利用してリリスは戦場となる場所に事前に魔石を仕掛け、罠の準備を行う。レア達が夜襲から戻ってきたときには既に準備を終えており、翌日に彼女の作戦は実行された事になるのだが――




(……いや、リリス。これやりすぎじゃない?)




レアはクレーターの中心地にて冷や汗を流し、想像以上に魔石の衝撃波が強すぎて獣犬兵を予想を超えた勢いで吹き飛ばした事に彼は内心で焦っていた。幸いというべきか、レアはデュランダルが生じた衝撃波の影響は受けず、無傷で済んだ。


恐らくはレアが無傷で済んだのは聖剣であるデュランダルのお陰だと思われるが、問題は風属性の魔石を一つだけ破壊した程度で数千人の獣犬兵を吹き飛ばした事であった。当初の予定では数百名程度の人数の敵を吹き飛ばす程度の威力だったはずだが、あまりにも威力が高すぎて予想の10倍近くの人数を吹き飛ばしてしまう。


誰も死んでいない事を祈りながらもレアは様子を伺うと、北方軍は誰もが恐れを抱いた表情を浮かべていた。ガームやツルギですらも得体のしれぬレアの力を見て冷や汗を流し、特にツルギは嫉妬したように自分の身体を支える松葉杖を握りしめる。



(あの小僧、いったい何をした……まさか、あれは本当に聖剣だというのか……!?)



ツルギはレアが所有する武器が並の武器ではない事を一目で見抜き、実際に彼の体内に存在する魔剣が先ほどから嫌に反応を示していた。ツルギの所有する「紅月」は聖剣に対抗するために作り出された魔剣であるため、聖剣が近くに存在するとそれを所有者に知らせる機能も持ち合わせている。


しかも魔剣の反応から聖剣は一つではなく、レアが所有する全ての聖剣が本物である事もツルギは気づいていた。今までの歴史上、聖剣を二つ以上も所持した勇者は存在などせず、しかもレアの場合は四つの聖剣を所有している事にツルギは信じられない表情を抱く。

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