閑話 〈その頃のイヤンちゃん〉

――時は少しだけ遡り、古王迷宮にて気が動転し、リル達を襲ったイヤンはレイナの能力によって性別と年齢を変更させられ、現在は孤児院で世話になっていた。彼の境遇には同情の余地はあるが、だからといって他の人間に害を為そうとした事は許されず、イヤンは頭の残念な女の子として孤児院に預けられた。


孤児院に預けられたイヤンは最初は逃げ出そうとしたが、今現在の彼――彼女は非力な女の子でしかない。冒険者時代に培った技術も能力も失ってしまい、現在は孤児院の子供たちと共に暮らすしか生きる道はない。



「おい、ババア。ガキどもを寝かしつけたぞ」

「あら、ありがとうイヤンちゃん。でも、私の事はババアじゃなくてちゃんとシスターを呼びなさいといつも言ってるでしょ?それに言葉遣いも女の子らしくしないと駄目でしょ」

「うるせえな……」



イヤンは教会と孤児院を経営している修道女の元で世話になっており、働かざる者食うべからずの信条で彼もしっかりと働かされている。最も子供が出来る仕事は限られるため、イヤンの場合は基本的に小さな子供たちの面倒を任せられていた。


孤児院で暮らす子供の数は非常に多く、年長者は年下の子供の面倒を見るのが慣わしになっていた。しかもイヤンが一番年上だったために孤児院の子供たちの面倒は全部彼が見ている。



(畜生、なんで俺がガキの世話なんて……)



冒険者時代のイヤンは子供が嫌いだった。理由としては子供は全員が我儘で自分勝手な存在だと思い込んでいたからである。しかし、両親や親類から見放された孤児院の子供たちの世話を見ている内に情を抱く。



(そういえばマイカのぬいぐるみを直さないとな……たく、裁縫は苦手だっていうのに)



孤児院に暮らす子供にぬいぐるみの修理を頼まれていた事を思い出したイヤンは仕方なく裁縫の準備を行い、マイカという女の子のために犬のぬいぐるみの修理を行う。その様子を見てシスターは微笑み、何だかんだで面倒見が良いイヤンに彼女は安心した。



(ふふふ、口は悪いけどイヤンちゃんは良い子ね。下の男の子から人気があるのも分かるわ……いずれ大きくなった時にはきっと美人に育つわね。その時は私がちゃんと結婚相手を見繕わないと……)

(っ……!?さ、寒気が……風邪か?)



イヤンは裁縫の途中で異様な寒気に襲われ、この数年後に彼女はシスターの知り合いの男性陣からアプローチを受ける事になるのだが、そんな事も露知らずに彼女は女性としての道を歩み始めていく――





※イヤンちゃんがどうなる事やら……( ^ω^ )

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