第462話 ツルギの魔剣
「ならば……これならばどうでござる!!」
「愚かな、お前程度の腕で……ぐっ!?」
ハンゾウが攻撃を仕掛けた瞬間、ツルギは言いようのない威圧を感じ取り、ただの刺客が放つとは思えない威圧感に彼は咄嗟に刃で防ごうとする。
再び部屋の中に金属音が鳴り響き、弾かれたのはツルギが手にした仕込み杖の刃だった。ハンゾウが繰り出した長剣を受けた瞬間に想像以上の衝撃が走り、ツルギでさえも攻撃を受け流せずに刃が折れて壁に突き刺さった。
「ば、馬鹿なっ……儂の剣を折るだと!?」
「拙者の剣も中々の名刀でござろう?」
「こんな事、有り得ん!!いったいなんだ、その剣は!?」
自分の剣の刃が折られたという事実にツルギは動揺を隠せず、その一方でハンゾウは手にした「フラガラッハ」を確認して心の中でレイナに礼を告げた。
仮にハンゾウが普通の武器で挑んだとしてもツルギの刃を折る事などは出来なかっただろう。しかし、フラガラッハは所有者の攻撃力を3倍にまで上昇する効果を持ち、更にツルギが油断していた事もあって武器を破壊する事に成功する。
「さあ、ツルギ殿……正体を明かしてもらうでござる!!お主はいったい、何者でござる!?」
「ぐうっ……小娘が、その程度の事で儂に勝ったつもりか!!」
自分の武器が折られるという屈辱にツルギは顔を赤く染めて激怒するが、いくら怒鳴りつけようと武器を持たなければハンゾウが恐れる理由はない。ここでツルギの目的を聞き出せないとなれば彼を殺すだけだった。
「質問に答えなければこのまま斬るだけでござるよ?」
「……調子に乗るな、我が武器はまだ残っている?」
「その服の中にでも隠しているのでござるか?しかし、武器を取り出す前に拙者の刃がお主の身体を斬っているでござるよ」
ハンゾウは仮にツルギが新しい武器を取り出そうとしても、この距離ならば自分の攻撃の方が早いと確信していた。また、気配感知を発動したハンゾウは自分の周囲にハンゾウ以外の存在は確認されず、仮にハンゾウが助けを求めても誰かが駆けつける前に仕留めて退散する自信があった。
しかし、この危機的状況の中でもツルギは自分が生き残ると確信を抱いているように態度を崩さず、それどころか逆に余裕を取り戻したかのように笑みを浮かべる。そんなツルギに対してハンゾウは本能的に危険を察知し、彼の笑みは決してはったりではない。
「斬れる物なら斬ってみるがいい……但し、その時はお前の首と胴体は繋がっていないだろうがな」
「戯言を……目的を話すつもりはないのでござるか」
「ふっ……そうだな、ならば答えてやろう。儂の目的は世界最強の剣を手に入れ、全ての剣士の頂点に立つ事、そのためにはどうしても奴等の協力が必要だったのだ」
「奴等とは……」
「そこまでは答える義理はない。さあ、やれ!!それとも儂を恐れて斬れぬのか!?」
「……言われずとも!!」
ツルギの発言を聞いてハンゾウはフラガラッハを握りしめ、彼の行動が罠である事は理解している。しかし、ここで動かなければハンゾウはツルギの勝機を失うと判断し、全力の一撃を繰り出す。
次の瞬間、部屋の中に再び金属音が鳴り響き、ハンゾウは驚愕の表情を浮かべた。ツルギの首元に放たれたフラガラッハは確かに彼の頸動脈を斬ったはずだった。しかし、剣の柄から感じ取った違和感にハンゾウは動揺を隠せず、一方でツルギは笑みを浮かべる。
「どうした小娘よ?儂は何もしておらんぞ?」
「ば、馬鹿なっ!?どうして刃がっ……!?」
確実に刃はツルギの首に当たったにもかかわらず、まるで金属に衝突したかのように弾かれた事実にハンゾウは動揺を隠せない。しかし、ここでハンゾウはツルギの首筋が光り輝いている事に気付き、部屋を照らす蝋燭の光を反射して彼の首元に金属のような塊が突出している事に気付く。
「まさか!?」
「そう、見せてやろう……我が魔剣、紅月をな!!」
ツルギは首元に手を伸ばすと、次の瞬間に彼の体内から刃が出現し、皮膚を突き破るかの如く、身体の中から1本の「日本刀」が出現した。刀が完全に排出されると、ツルギは刀を手にしていた。
体内から武器を取り出した事にハンゾウは驚くが、その一方で彼の肉体を突き破って出現した刀から発する禍々しい魔力に彼女は背筋が凍り付く。同時に聖剣フラガラッハもツルギが取り出した刀に反応したかのように刃が震え出し、すぐにハンゾウは窓際まで距離を取る。
「くくくっ……まさか、儂に紅月を抜かせるとは大した女だ。だが、この妖刀を見られた以上はお主は楽に死ぬことは出来ん。覚悟するがいい……女狐が!!」
「その刀……まさか!?」
「覚えておくがいい、これこそが和国から失われた妖刀「紅月」!!その実に受けるがいい!!」
ツルギは紅月を振りかざし、咄嗟にハンゾウはフラガラッハで受け止めようとしたが、そのあまりの剣圧に彼女の身体は窓を破って外にまで吹き飛ばされた――
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