第448話 まるで聖剣のバーゲンセールだな……

――翌日、王城の訓練場にて白狼騎士団が鍛錬に励んでいる中、国王代理であるリルが訪れた。彼女は現在は国王の代理として政務を取り仕切っているため、白狼騎士団の団長でありながらも滅多に訓練場に訪れる事はない。しかし、この時は珍しく側近のリリスとネコミンも引き連れて登場した。



「やあ、訓練の方はどんな感じだい?」

「あ、団長!?いえ、国王代理!!皆、国王代理が来たぞ!?」

「えっ!?国王代理がっ!?」

「代理っ!!」

「いや、あの……普通に団長と呼んでくれないかな。代理という言い方だと何か違和感が拭えないから……」



リルが訪れた事に騎士達は驚愕の表情を浮かべ、その一方で普段は全くと言い程に訓練に顔を出さないリリスとコトミンも現れた事に驚く。そして彼女達の腰に身に付けている剣を見て騎士達は更に驚く。



「団長、それに御二人とも……もしかして、その剣はレア隊長の剣ですか?」

「ん?ああ、よく似ているだろう?最近になってやっと僕達も貰えたんだよ」

「も、貰えた?」

「えっへん、凄いでしょう?この剣はレアさんが作り出した剣なんですよ」

「私は剣はあんまり得意じゃないけど、レアのプレゼントだったから貰った」




――リル達の腰元には普段のレアが装備している聖剣の「アスカロン」と瓜二つの聖剣が装着され、自慢そうに3人は見せつける。その様子を見て騎士達は戸惑う。




レイナ(レア)が所有する聖剣の中で知名度の割には実際の武器の形状に関してはあまり知られていないアスカロンだが、王都の兵士達の間ではレアが扱う剣は業物として知れ渡っている。実際に行動を共にしていた騎士達はアスカロンを使用して様々な強敵を打ち倒すレアの姿を目撃していた。


兵士や騎士の間ではレアが所有する武器は相当な業物だと知れ渡っているのだが、その業物と瓜二つの武器を装備したリル達の姿に兵士達は戸惑う。彼等はレアが装備する剣は名工に作り出された業物なので1つしか存在しないのではないかと思い込んでいたのだが、その業物を全く同じ形状をした長剣を3人が装備している事に驚く。



「団長、その剣はレア殿の剣と似ている……というより、同じ物にしか見えないのですが……」

「ふふふ……その通り、この剣はレア君が所有している武器と全く同じ性能を持つ剣だ。外見だけではなく、その切れ味や頑丈さも完璧に再現されている」

「えっ!?それはどういう意味ですか?まさか、全く同じ物を作るように鍛冶師に指示を出したのですか?」

「それはちょっと違うな、そういえば君たちにはレア君の勇者としての能力を明かしていなかったな」

『ゆ、勇者の能力!?』



騎士達はリルの言葉を聞いて驚愕の表情を浮かべ、勇者にはこの世界の人間は持たない特別な「加護」と呼ばれる能力が一般の間でも知れ渡っていた。実際にレア以外に召喚された3人の勇者もそれぞれが「加護」を所有し、特殊能力を持っている。


しかし、肝心のレナに関しては今のところは特別な能力を所持しているという話はあまり伝わっていない。それでも巨塔の大迷宮でのレアの活躍を知っている人間はレアが勇者に相応しい実力者である事は知っているのだが、特に特別な能力を発揮する場面は見た事がない。



「団長!!勇者殿の能力は嘘を見抜く能力ではなかったのですか!?前に我々の中に裏切り者を探し出した時、確か勇者殿が我々を検査して裏切り者を見つけ出したはずですが……」

「ふむ、言い質問だ。だが、あの能力は勇者の持つ特別な技能の一つでしかない。レア君の真の能力は……」

「ちょっとちょっと、国王代理……それ以上は駄目ですよ。国家機密をぺらぺらと喋らないで下さい」

「私も駄目だと思う」

「おっと……すまない、確かに勇者の能力は迂闊に話すわけにはいかないな。悪いが、この件に関しては内緒だ」

『えっ……』



リルの言葉を聞いてレアの能力の秘密を知りたかった騎士達は落胆するが、リルの話しぶりと3人がレアと全く同じ武器を身に付けている事に対して彼等は色々と憶測を行う。


過去に召喚された勇者の中には「鍛冶師」などの称号を持つ人間も含まれ、その人間はありとあらゆる高性能な武器を作り出したという伝承も残っている。他にも「育成士」と呼ばれる他人の才能を見抜き、それを驚異的な速度で能力を伸ばす勇者も存在した。こちらの勇者はかつて優秀な鍛冶師を更に名工にまで育て上げ、聖剣に匹敵する武器を作り出したという記録も残っている。


今回のリル達の一件で王都の兵士や騎士、果てには大臣たちまで勇者であるレアの能力に関して様々な話題が繰り広げ、中にはレア本人に直接問い質そうとする人間も現れ始めた。しかし、当の本人がレイナの姿で冒険者活動に勤しんでいるため、結局彼のがどのような能力を持っているのかは真相は明かされる事はない――





※アスカロン「俺を安売りしやがって(# ゚Д゚)」

 レア「ごめんよ(;´・ω・)ノヨシヨシ」

 フラガラッハ「私だってもう3本目よ!!文句言うんじゃない( `ω´)プンプン」

 デュランダル「俺達は1本でよかったな(・ω・)」

 エクスカリバー「本物オリジナルを含めたら私達は二本目だぞ(´ω`)」



 リリス「まるで聖剣のバーゲンセールだな……」

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