第444話 雷雲の中には……
「ぶはぁっ!!はあっ……はっ!!」
「ゴアッ!?」
「クエエッ!?」
水面に浮上したレイナを見て岸部のロックゴーレムと空を飛行する鳥と馬が合わさったような生物は驚愕の表情を浮かべ、一方でレイナは空を見て生物の正体を見抜く。
(グリフォン……いや、ヒッポグリフか)
某魔法使いの少年の映画では有名な生物だと見抜き、レイナは岸部に向かって泳いでいると、再び黒雲から雷が発射される前に岸部へと上がる。
その際に当然だがロックゴーレムとヒッポグリフが狙わないはずがなく、岸部に上がった瞬間にレイナに近付いてきた。しかし、事前に敵が近づいて襲い掛かってくるのを知っていたレイナは両手にフラガラッハとアスカロンを握りしめて切り裂く。
「邪魔だぁっ!!」
「ゴガァッ!?」
「グエエッ!?」
ロックゴーレムとヒッポグリフを同時に一刀両断すると、ロックゴーレムは上半身と下半身が切り裂かれ、一方でヒッポグリフの方は顔面を切り落とされる。
ロックゴーレムの方は核を破壊しない限りは完全には倒せないが、胴体を切断された事で再生するまでは動けず、その隙にレイナは移動を行おうとした。
「くそっ、どうなって……うわっ!?」
「ジュルルルッ……!!」
水面から触手が飛び出すとレイナの足元に絡みつき、そのままレイナを再び水中に引きずり出そうとする。しかし、この時にレイナは裸足であった事が幸いし、両足の「握力」で地面に踏ん張り、逆に触手を掴む。
「このっ……いい加減にしろ、スルメにするぞこの野郎!!」
「ジュルルッ!?」
触手を逆に掴んだレイナは逆に引きずり出そうと引っ張ると、水面に巨大なイカの姿が出現し、それを確認したレイナは敵の正体が「クラーケン」だと見抜く。地球でも有名な魔物であり、この世界には巨体イカのような姿をしているらしい。
クラーケンの触手を掴んで引きずり出したレイナは逃げられないようにしっかりと握りしめ、先ほどのようにアスカロンを地面に突き刺し、柄の部分に触手を巻き込む。その結果、アスカロンが発熱してクラーケンは悲鳴を上げた。
「ジュラァアアアッ!?」
「それ、鳴き声だったのか……だけど、これで終わりだ!!」
聖剣が発する高熱によって触手が焼けるほどの痛みを与えるとクラーケンは必死に暴れもがくが、そんなクラーケンに対してレイナは岸部近くまで引っ張り上げると、フラガラッハを引き抜いて攻撃を行う。
「はぁああああっ!!」
「ッ――!?」
触手を切り裂きながら本体の元へ近づき、頭部を切り裂く。一刀両断されたクラーケンは最初の内は触手をむちゃくちゃに動かしていたが、やがて力を失って動かなくなり、水面に浮かぶ。
どうにか一人で3体の魔物を倒したレイナは安心したのも束の間、再び黒雲から雷鳴が鳴り響き、嫌な予感を覚えたレイナはその場を離れた瞬間に雷が降り注ぐ。
「うわっ……くそっ、今度は何だよ!?」
危うく雷に当たりそうになったレイナは黒雲を見上げると、そこには思わぬ光景が広がっていた。黒雲の中から確かに蛇のような胴体らしき姿を発見し、更に蛇には存在しない鉤爪のような物が見えた。そしてレイナが空に視線を向けている間、首筋に小さな痛みが走る。
「あいてっ……何だっ!?」
『おや、一刺しで大型の魔物でも麻痺させる毒なのですが……流石は勇者、この程度ではくたばりませんか』
「誰だ!?」
レイナは首筋に手を伸ばすと、針のような物が刺さっている事に気付き、慌てて引き抜いて周囲を振り返る。だが、人の気配は感じるのだが誰も見えず、声だけが響いていた。
疑問を抱いたレナは気配感知と魔力感知を発動させ、更に地図製作の画面と観察眼の能力を発動させて周囲の様子を伺う。その結果、レイナから10メートルほど離れた位置に反応が存在し、そこに視線を向けると僅かに空間の歪みが存在する事に気付く。
「そこかっ!!」
『ほう、気づかれましたか……認識阻害の効果を持つこの魔道具を見抜くとは、流石です』
レイナが振り返ると、男性の声は少しだけ驚いた様子を見せるが、姿を現すつもりはないらしい。レイナは解析の能力を発動しようとするが、上手く作動しない。解析の能力はどうやら相手がを視認していない限りはしっかりとは発動しないらしい。
相手はどうやら何らかの魔道具で姿を隠蔽しているらしく、そちらの方は解析の能力で画面が表示され、どのような魔道具を使用しているのかが判明した。
『隠蔽マント――身に付けた者は他の人間から存在を感知されず、まるで透明になったかのように姿が見えなくなる 状態:発動中』
「なんか色々と危ないマントを身に付けてるな!!」
『……?』
画面に表示された文章を見てレイナは怒鳴りつけると、相手の男は意味が分からずに言葉が詰まるが、仮に相手が姿を隠していようと位置さえ捉えていれば問題はないと察したレイナは聖剣を構える。しかし、そんな彼女に対して男はマントから腕を出してレイナの行為を止めた。
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