第443話 湖に待ち構えていた魔物

「――ぷはぁっ!!はあっ……はっ……討伐完了」



水面に浮上したレイナは自分の後に続いて浮き上がってきたカット・シャークの死骸に視線を向け、笑みを浮かべる。慣れない水中戦だったので倒すのに少々苦労したが、結果的には無傷で勝つ事が出来た。


まさか戦闘の最中に鮫の頭が増えたり、タコの足のような物が生えてきたり、竜巻のように回転して襲い掛かってきたときは驚かされた倒す事は出来た。これで死骸を回収して依頼人に見せつければ最後の依頼も無事に達成される。



「よし、行くか……これで晴れて俺も金級冒険者だ」



笑顔を浮かべてレイナはシャークの死骸を掴んで岸部まで泳ごうとしたとき、ここで異変が発生した。それは先ほどまで晴れていたのに唐突に黒雲が発生し、湖の上空を覆い込む。その様子に気付いてレイナは雨でも降るのかと思ったが、ここでレイナの「魔力感知」の技能が発動した。



(何だ……!?あの雲、まずい気がする!!)



魔力感知によってレイナは上空の黒雲に嫌な予感を覚え、急いで岸部に戻るために死骸を手放す。レイナが岸部に上がった瞬間、黒雲から雷が放たれて浮上していたカット・シャークの死骸に直撃した。


その光景を目撃してレイナは目を見開き、カット・シャークの死骸は電撃を受けた瞬間に黒焦げと化し、やがて肉体は崩れ去って原型さえも残さない。その光景を見てレナは異常なまでの電撃の破壊力に違和感を覚え、上空の黒雲から魔力を感じる事からも普通ではない事に気づく。



(今の雷……もしも、俺が岸部に上がっていなかったらやばかったかもしれない)



カット・シャークを跡形も残さずに黒焦げにして粉々に砕く雷の威力にレイナは戦慄するが、一方で突然に現れた黒雲にレイナは違和感を覚え、ポーチに手を伸ばす。その時、地面から巨大な腕が飛び出すとレイナの身体を捕まえる。



「うわっ!?」

「ゴォオオオッ……!!」



地中から出現したのは通常よりも巨大なゴーレムであり、突如として現れたゴーレムにレナは驚くが、身体を圧迫されて痛みを覚えたレイナは無理やりに引き剥がす。



「このっ……話せ、セクハラ野郎!!」

「ゴアアッ……!?」



レベル50にもなるとレイナの腕力もすさまじく、以前ならば力負けしていたであろう相手でも対抗するだけの力を持ち合わせていた。無理やりにゴーレムの腕を引き剥がすと、地面に降りたレイナは即座にゴーレムから距離を取り、身構える。


自分の腕から離れたレイナに対してゴーレムは戸惑いながらも向かい合い、彼女を捕まえようと腕を伸ばす。それに対してレイナはアスカロンを引き抜き、反撃に出ようとしたときに背中に衝撃を受けた。



「クェエエエッ!!」

「うわっ!?な、何だ!?」



背中に何かが食い込む感触が広がると、レイナの背後にいつの間にか巨大な鷹と馬が合わさったような生物が自分の身体を抑えている事に気付き、そのまま飛翔して上空へと移動させる。


このまま自分を何処かへ連れ去ろうと考えているのかとレイナは焦りを抱き、地上からそれほど離れていない高さの間に降りるため、ポーチからアスカロンを引き抜いて切り裂こうとした。



「このっ!!」

「グエッ!?」



片足をの指をアスカロンで斬りつけると、生物は悲鳴を上げてレイナを手放し、地上へ向けてレイナは落下した。高度は恐らくは30メートルは存在したが、これぐらいの高さならば耐え切れるかとレイナは着地しようとしたとき、強烈な風がレイナの身体に襲い掛かる。



「うわっ!?」



突風によってレイナは湖の水面の方に移動すると、そのまま湖に落ちて水中に身体が沈んでいく。いくら水面といえど、相当な高度から落ちれば衝撃は凄まじく、レイナは苦痛のあまりに意識が一瞬だけ薄れた。


その隙を逃さないとばかりにレイナの身体に何かが絡みつき、最初は蛇か何かかと思ったレイナだったが、すぐに正体が「巨大イカ」の触手だと気づく。




――ジュルジュルジュルッ……!!




奇怪な鳴き声か、あるいは触手を動かす際の音なのか、どちらかは不明だがレイナの身体に巨大イカは触手を巻き付き、湖の底へと引き寄せる。それに対してレイナは身動きが出来ず、もう駄目かと思った時、手にしていたアスカロンを手放す。


アスカロンがレイナの手元から離れた時、触手の一本がアスカロンに触れた。その結果、アスカロンの柄が唐突に発熱を引き起こし、それによって巨大イカの触手の一本が焦げてしまう。聖剣は正当な所有者以外が聖剣を奪い取ろうとすると拒否反応を引き起こし、それは魔物であろうと適用されるらしく、レイナの身体を掴んでいた触手の力が緩む。


一瞬とはいえ、触手が緩んだ隙を見逃さずにレイナは目を開き、ポーチに手を伸ばしてフラガラッハを引き抜く。そして自分の身体に巻き付いていた触手を切り裂き、アスカロンを手にして一気に浮上した。







※危ない危ない……また触手のせいでこの小説がR18指定になりかけました。


(;´・ω・)

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