第442話 盗賊団の壊滅

――その後、捕縛したグレイを連れてレア達は引き返した後、すぐに連絡を送って白狼騎士団の増援を呼ぶ。結果的には盗賊団の残党は捕まえたグレイから情報を聞きだし、隠れ家や街に潜んでいた仲間は捕縛する事に成功した。


グレイから情報を聞きだすのは苦労したが、仕方なく「レイナ」が魅了の能力を使用してグレイを誘惑し、情報を聞きだす。どんなに堅物だろうと魅了の能力を使用すれば異性ならば逆らう事は出来ず、グレイもあっさりと情報を吐露する。



『よしよし……ほら、全部喋ったら楽になるよ~』

『ううっ……や、止めろぉっ……いや、止めないでください!!』

『うわぁっ……(ドン引き)』



魅了するといってもレイナが行ったのは彼の頭を撫でるだけであり、他に特別な事は一切していない。グレイから必要な情報を聞きだした後は彼は王都へ送り込まれ、処罰が下される予定だった。


だが、予想外の出来事だったのはグレイが告げた隠れ家に存在するはずのこれまでに奪った金品に関しては既に無くなっていたという。捕まえたグレイの配下に問い質しても金品が急に消えてしまったらしく、つまりグレイが抜け出した日に何者かに金品が盗まれていた事が発覚する。



『盗賊から金品を奪うとは……いったい、何者の仕業だ?』

『……恐らくは俺を雇った人間だろう』

『グノズ……だっけ?その人は何処にいるの?』

『知らない……ほ、本当だ!!俺が会ったのは最初だけで、後は代理人を通してしか依頼を受けていないんだ!!』



グレイを盗賊団の頭にしたグノズに関しての情報は得られず、恐らくは彼の仕業で金品が盗まれたと思われるのだが、生憎とグノズに関する情報はグレイも持っていなかった。金払いさえよければ彼はどんな依頼人でも仕事を引き受けるため、グノズに対しても特に詮索はしなかったらしい。


結局、盗まれた金品に関してどうしようも出来ず、盗まれた人間からすれば災難な話ではあるが金品の返却は出来ない。だが、盗賊団の壊滅させたのは事実のため、これでレイナは晴れて依頼を達成した。



『でも、今回の依頼は厳密に言えばレイナじゃなくて勇者レアの功績だと思うけど』

『今回の依頼に限っては他の人間との協力は許可されていますし、それに結局は勇者様もレイナ様である事は間違いないのですし、特に問題はないかと……』

『あくまでも協力して倒したと申告すれば問題ないだろう』

『そっか……』



今回の依頼に関してはレイナの活躍という点に関しては疑問はあるが、他の人間の言う通りにあくまでも今回の依頼に限っては他者の協力が認められている。その点を強調してレイナは依頼を達成した事を伝えると、冒険者ギルド側もあっさりと承認した。


被害を受けたハナノに訪れようとした商団や旅人に関しては国側から少なからずの補償金を差し出す事を約束し、後はグレイを連れてレイナ達は王都へ引き返す――






――それから更に数日後、レイナは残された依頼も単独で達成し続け、遂に最後の依頼へと挑んでいた。最後の依頼の内容はある魔物の討伐のために王都からそれほど離れていない湖に赴き、レイナは水中に潜った。



(新しく覚えた「潜水」の技能は便利だな……こんなに早く泳げるんだ)



久々にレイナはSPを使用して新たな技能をいくつか覚え、最近では「潜水」「受身」といった技能も覚えていた。潜水は水中で泳ぐ際の移動速度が上昇し、息継ぎ無しでも長時間は泳げる技能、受身は相手からの攻撃を受けた際の衝撃を和らげる技能である。


今回の依頼内容は最近になって湖に現れたという魔物を討伐だった。本来ならば湖に生息するはずがない魔物が出現したらしく、その魔物のせいで生態系が狂い、元々生息していた湖の魔物が激減しているという内容であった。



(さてと……魔物とやらは何処にいますかね)



現在のレイナはウェットスーツのような恰好に着替え、腰には武器を取り出すためのポーチを身に付けている。泳ぎながらもレイナは依頼に指定されている魔物を捜索していると、やがて湖の底の方から光る二つの目を確認する。




――シャアアアッ!!




出現したのは水色の鱗で覆われた鮫型の魔物であり、ホオジロザメの様に大きく、しかも背ビレが刃物のように研ぎ澄まされていた。それを確認したレイナはポーチに手を伸ばし、即座に武器を取り出す準備を行う。


この魔物の名前は「カット・シャーク」と呼ばれ、名前の通りに刃物のような切れ味の背ビレを利用し、相手を切り裂くという獰猛な魔物である。本来は海で育つはずの魔物のなのだが、何故か湖に出現して釣り人や漁師に襲い掛かって被害を与えているらしい。


恐らくは何者かが魔物を湖に放逐したとしか考えられず、その討伐にためにレイナは出向く。迫りくるカット・シャークに向けてレイナはアスカロンを取り出し、水中にて刃を振りかざした――

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