第428話 白銀級へ正式昇格
「おやおや、誰かと思えばティナじゃないかい!!もう戻ってきたのかい?」
「リンさん、ご無沙汰してます」
受付にて書類整理をしていたリンがティナに気づくと驚いた顔を浮かべながらも歓迎し、一方でティナの隣にレイナとネコミンがいる事を察して無事に合流出来た事を知る。
リンは牙路にティナが向かっているという情報を聞いていたので彼女が無事に戻ってきた事を喜ぶ一方、異様に早く戻ってきた事に疑問を抱く。ここから牙路まで相当な距離があるため、彼女が牙路へ辿り着く前にレイナ達が引き留めて連れてきたのかと判断した。
「それで、今日はどうしたんだい?新しい依頼を引き受けに来たのかい?」
「いえ、今日は仕事を受けに来たのではなく、こちらのレイナ様の階級についてご相談したい事があるのですが……」
「はあっ……レイナ、様?」
「ど、どうも」
ティナがレイナに手を差し伸べ、リンに推薦状を手渡す。その様子を見ていた冒険者達は騒ぎ出す。なにしろ黄金級冒険者のティナがレイナの事を様付けで呼んだのだから当然の反応である。
リンは戸惑いながらもティナが用意した推薦状に目を通し、その内容を確認して驚く。それはレイナが現在与えられている階級が相応しくない旨が記されており、最低もで白銀級、もしくは金級への昇格を促す内容だった。
「ちょ、ちょっとあんた……これはどういう事だい?この嬢ちゃんに昇格試験をうけさせろというのかい?」
「はい、はっきりと申しますと現在のレイナ様の実力は私と同等、あるいはそれ以上の力をお持ちなのです」
「あ、あのティナと互角だと……!?」
「信じられねえ……あんな子供が!?」
「でも、年齢はティナさんとあんまり変わりないぞ?」
ティナの言葉に他の冒険者が騒ぎ出し、一方でレイナの方は困った風に頭を掻きながら自分が試験を受けられるのかどうかをリンに尋ねる。
「あの……やっぱり無理ですか?」
「……黄金級冒険者の推挙となればギルドとしても無理は出来ないね。だけど、冒険者になったばかりの人間がいきなり白銀級を飛び越して金級冒険者になるなんて無理があるよ」
「しかし、前例がないわけではありません。伝承によればあの伝説の勇者は数日足らずで黄金級冒険者の階級を与えられたという話を聞いています」
「そうそう、有名な話。ついでに私も金級に昇格してほしい」
「いや、あんたは関係ないんだろう?それにしても困ったね……」
リンは推薦状に目を通してレイナに視線を向け、確かに彼女自身もレイナの実力を考えれば白銀級、あるいは金級の階級を与えても問題はないと思っていた。しかし、階級の昇格に関してはリンの一存で決めるわけにはいかない。
黄金級冒険者の推薦状を提出された以上は冒険者ギルド側も無碍には出来ず、だからといって冒険者になったばかりのレイナを飛び級で昇格されたら必ず他の冒険者が不満を抱く。そう考えたリンはある妙案を思いつき、彼女は数枚の羊皮紙を取り出す。
「仕方ないね、あんたがそこまで言うのなら昇格試験を受けさせてやるよ。あたしの出す条件を全て合格したら金級の冒険者バッジを与えるよ」
「えっ!?いいんですか?」
「だけど、今回の場合はそれ相応に難しい試験を受けて貰うよ。内容はこれらの依頼をあんたが一人で解決するんだ。同じ
レイナの目の前でリンは数枚の羊皮紙を差し出し、それを受け取ったレイナはとりあえずは内容を確認する。そして羊皮紙の1枚を受け取って確認したティナは目を見開く。その理由はレイナに差し出された羊皮紙の全てが「塩漬け依頼」だったからである。
「リンさん!!いくら何でもこれは……」
「引き受けられない、なんていうんじゃないよ。これだけの依頼を達成すればぎりぎりだけど本来なら白銀級の階級へ昇格できるだけの評価点は集まるんだ。しかも全ての依頼を達成すれば白銀級を飛び越して金級の冒険者へと昇格を果たせるんだよ?文句を言われる筋合いはないね」
「ですが、これらを一人で解決するなど無茶です!!どれもこれも報酬と難易度が見合っているとは思えません!!」
「仕方ないさ、簡単な試験だと意味はないからね。まあ、こっちとしても妥協できるのは試験の期日に関しては無期限にしといてやるよ。時間はどれだけ費やしてもいいから、全ての依頼を達成したら金級冒険者への昇格を認めてあげるよ」
「……けど、依頼書の中には期日が定められているのがある」
「そればっかりは仕方ないね、依頼人の都合があるんだから迷惑を掛けられないからね」
「ぷるっくりんっ(横暴過ぎる)!!」
リンの出した条件にネコミンとティナは不満な表情を浮かべ、シルも抗議するように鳴き声を上げる。しかし、依頼書を差し出されたレイナはまずは内容を確認し、考え込む。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます