第427話 冒険者ギルドの反応
「まさかあの黄金級冒険者のティナ君にここまで言わせるとは……流石はレイナ君、その姿でも女たらしだったのか」
「ちょ、何を言い出すんですか!?だいたいそれはリルさんの作戦でそんな風に呼ばれるようになったんですよ!!」
「えっ……女たらし?」
「ティナさんも気にしなくていいから!!」
レイナはリルの作戦で白狼騎士団の女性陣と肉体関係を結んでいる事になっており、そのお陰で城内に働く女性からは距離を置かれていた。一方で事情を知らないティナは首を傾げるが、どちらにしろ彼女は恩を返すまではレイナの元から離れるつもりはないという。
ティナが冒険者になったのはヒトノ帝国へと戻り、自分の故郷がどうなったのかを確かめるためであった。彼女が黄金級冒険者になったのは冒険者の最高階級ならば色々と好待遇を受けるからにしか過ぎず、レイナが望むのであれば冒険者を辞して白狼騎士団に正式に入団するつもりだった。
だが、黄金級冒険者という肩書はリルとしては捨てて貰いたくはなく、当面の間は彼女は白狼騎士団の戦闘指導員として在中して欲しい事を伝える。
「しばらくの間はティナ君には悪いが城に留まり、白狼騎士団の指導を願いたい」
「分かりました」
「よし、それとレイナ君が冒険者活動を行う時、ティナ君の力を借りたいときはいつでも言ってくれ。ティナ君はあくまでもレイナ君のために尽くすみたいだからね」
「はあっ……じゃあ、えっと、これからもよろしくお願いします?」
「はい、よろしくお願いいたします!!」
リルの言葉にティナに大してレイナは改めて挨拶を行うと、彼女はその場で敬礼を行う。こうしてティナも正式にレイナ達の仲間入りを果たすが、他の団員と違う点は彼女の忠誠の対象はリルではなく、レイナという点である。
白狼騎士団の戦闘指導員の役目を引き受けたが、ティナは指導者として働くだけであってあくまでも白狼騎士団の団員ではない。今後もレイナが冒険者活動を続けるならば彼女の力を借りる日が来るかもしれない。
「では改めて新たな仲間の歓迎会を開こうか」
「いえ、リル様は本日分の書類整理を終わっていませんので業務に戻りましょう」
「……いや、それはそうなんだが、今日ぐらいは別にいいじゃないか」
「駄目ですよ~国王様の代理なんですから仕事は山積みです。ほら、私も手伝わされてるんですから抵抗しないで下さい」
「くうっ……助けてくれレイナ君、ネコミン!!」
「すいません、俺とネコミンも冒険者活動に戻らないといけないので……」
「がんばっ」
「う、裏切り者めっ!!」
さりげなく歓迎会という名目で仕事から逃れようとしたリルをチイとリリスが引きずって部屋の外へと連れて行くと、残されたレイナ達は一先ずは城下町へ戻ろうとした。だが、ここでハンゾウがレイナに声をかける。
「レイナ殿、しばらくの間は拙者は任務があるので会えなくなるでござる」
「え?任務?」
「拙者はガーム将軍の領地へ侵入し、様子を調べてくるでござるよ。何か不穏な動きを察知したらすぐに引き返すつもりでござるが、当分の間は顔を合わせる事もないと思うでござる」
「そうだったのか……分かった。気を付けてねハンちゃん」
「承知!!ではネコミン殿とティナ殿、レイナ殿の事は任せたでござる!!」
「がんばっ」
「分かりました。お任せください」
「サンには頼まないの?」
「勿論、サン殿もレイナ殿を手伝って欲しいでござる」
「きゅろっ!!」
ハンゾウは最後にサンの頭を撫でた後、彼女は窓を開いて外へと飛び出す。その様子をレイナ達は見送ると、ハンゾウの事は心配だが彼女も一流の忍者なので信じて送り込む。
――その後、レイナ達は城下町に戻ってとりあえずは宿泊している宿屋に引き返した後、ティナはレイナのために推薦状を記してくれた。そして推薦状を手にしたレイナはティナとネコミンと共に冒険者ギルドへ帰還すると、ティナが戻ってきた事に冒険者達は騒ぎ出す。
「うおっ!?黄金級冒険者のティナさんだ!!ティナさんが戻ってきたぞ!!」
「本当だ!!お帰りティナさん!!」
「きゃあっ、ティナ様よ!!ティナ様が遂に帰ってきたわ!!」
「……何か、凄い人気だね」
「は、恥ずかしいですね……」
「ティナは人気者」
ティナは自分を見て騒ぎ立てる冒険者達に対して頬を赤く染め、そんな可愛らしい態度を見て増々冒険者達は騒ぎ立てる。一方で全員がティナの事を歓迎しているわけではなく、一部の冒険者はつまらなそうな表情を浮かべた。
「ちっ……もう戻ってきたのか」
「くそ、次はどの仕事を引き受けるつもりだ?」
「あ~あ、俺達の仕事がまだ奪われるのか」
どうやら黄金級冒険者のティナが戻ってきた事で階級が高い冒険者達は対抗心を剥き出しにする。彼女が高難易度の依頼を受ければ彼等にとっては自分達の仕事が減ると危惧するのも仕方がない。
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