第408話 強さの秘密

「それに私の父は小髭族でした。だから私は生まれたときから腕力に関しては普通の人間よりも強いと自負していたのですが……」

「え、小髭族ドワーフ?じゃあ、ティナさんはハーフなんですか?」

「はい、といっても種族的には人間なのですが……」



ティナの並外れた腕力の秘密は彼女の父親が小髭族である事が関係しているらしく、巨人族と同様に小髭族は腕力に関しては人間を圧倒する力を誇る。彼等は背は小さく、小柄なので誤解されやすいが人間とは比べ物にならない程に筋力に恵まれていた。


父親の影響を受けてティナは生まれた時から小髭族に匹敵する筋力を誇り、外見からは想像できない程の怪力を誇る。なので今までに人間がしかも同姓の相手に負けた事がない。


それにも関わらずにレイナの場合はティナに匹敵する、あるいはそれ以上の筋力を誇っていた。その事にティナはレイナが本当に人間なのかと疑う。



「もしかして……レイナさんも父親か母親が小髭族なんですか?もしくは巨人族とか……」

「いや、俺の場合は両親とも普通の人間です」

「俺?そういえば気になっていたのですが、レイナさんは自分の事を俺と言ってますね。どうしてですか?」

「え、いや、それは……」

「レイナは俺っ娘だから仕方ない」



レイナの一人称が気になったティナは尋ねると、ネコミンが即座に言い訳なるのかどうかも分からない理由で押し通す。そんな彼女の言葉にティナは戸惑うが、これ以上に詮索されたら面倒だと思ったレイナは彼女の疑問に答えた。



「俺の場合、レベルが50を超えているんです。それと剛力の技能も習得しているから……」

「レベルが50……!?それに剛力の技能を人間である貴方が習得したのですか!?」

「え、そんなにおかしなことですか……?」

「当たり前です!!そもそもレベルが50の人間なんて……仮にこのケモノ王国中の冒険者の中でも10人いるかどうかですよ!?」

「えっ!?そうだったの!?」

「うん、多分だけど将軍の中でもレベル50を超えている人間はライオネル大将軍とガーム将軍ぐらいだと思う……はっきりと二人のレベルを聞いた事がないから分からないけど」



ティナの言葉にレイナは驚き、ネコミンに振り返ると彼女も頷く。この世界ではレベルが50を迎えた人間は滅多におらず、しかもレイナの年齢を考えれば異常な数値だという。


レベルが46のティナの場合は純粋な人間ではなく、彼女が小髭族の血も流れているためそれほどおかしな話ではない。しかし、両親が普通の人間で特別な家系でもない者がレベルを50も超える事は滅多にない。



「い、いったいその若さで、どうやってレベルを上げたのですか!?」

「いや、最近色々とあって……えっと、巨塔の大迷宮で一気にレベルが上がったんです」

「巨塔の大迷宮……そういえば白狼騎士団が攻略を果たしたと聞きましたが、まさか!?」

「そう、レイナのお陰で攻略できた」

「レイナは凄い、えっへん!!」

「ぷるるんっ(敬うがいい)」

「「ウォンッ(←威張る)」」

「ぷるっくりんっ(←尊敬の眼差し)」

「何で君たちが威張ってるの……」



巨塔の大迷宮にて驚異的なレベルを上昇した事は事実のため、レイナはティナに伝えると、彼女は腕を組んで考え込む。



「大迷宮でレベル上げを行うのはよくある話ですが、それでもレベルが50まで上昇するなんて……それに巨塔の大迷宮は禁止地帯、危険度が高すぎて冒険者でも挑む事は注意されているはず……でも、そんな、本当に……」

「あの……聞いてます?」

「あ、はい!!すいません……取り乱しました」



ティナは自分よりもレベルが高く、しかも種族的には純粋な人間であるレイナが大迷宮でレベル50になるまでレベル上げを行ったという話を一応は信じる。しかし、完全には納得いかず、彼女はレイナの顔を見つめる。


嘘を言っているようには見えないが、仮に話が本当だとしても大迷宮に挑むとしたらそれ相応の実力を持っていなければならない。即ち、巨塔の大迷宮でレベル上げを行う前からレイナは高い実力を持っていた事になるが、それならばどうしてそこまでの武芸者が今まで無名だったのかと気になった。



「レイナさんはこの国の出身なのですか?」

「いや、違います……えっと、生まれた国は違うんですけどヒトノ帝国の方から来ました」

「私達が連れてきた」

「なるほど……では、他国から訪れたのですね」



出身地がケモノ王国ではなく、他国から訪れたという話を聞いてティナは納得した。他の国から訪れた人間ならば武名が広がっていなかったとしてもおかしくはなく、冒険者ではなく騎士団に加入して活動していたのならば名前が知れ渡っていてもおかしくはない。


ティナなりにレイナが実力の割には知名度が低かった事を納得したが、それでも彼女はレイナに関して最後に気になった疑問を問わずにはいられなかった。

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