第406話 大剣の使い手同士

「はああっ!!」

「くっ!?」



コインが落ちた瞬間、ティナは退魔剣を振りかざしながら突進し、一瞬にしてレイナの間合いを詰める。重量のある武器に決して軽そうには見えない鎧を纏いながらもティナの動作は素早く、咄嗟にレイナはデュランダルで刃を受け止めた。


恐らくは並の武器だったならば一撃で破壊される程の強い衝撃が刀身に走り、互いに鍔迫り合いの状態へと至る。ティナは自分の本気の一撃を受け止めたレイナに驚き、一方でレイナの方も彼女の腕力に驚く。



(何だこの馬鹿力!?リルさんの剣よりもずっと重い……というか、リビングアーマーよりも強い!?)



レベルが50にまで上昇し、更には剛力の技能を持つレイナでさえもティナの攻撃を受けるのが精いっぱいだった。信じられない程の腕力を誇るティナにレイナは冷や汗を流し、一方で彼女は更に戦技を発動させる。



「反動!!」

「うわっ!?」



唐突にティナの刃が振動したかと思うと、そのままレイナのデュランダルは弾かれてしまい、後方へと吹き飛ばされてしまう。慌てて体勢を整えたレイナは驚いた表情を浮かべ、一方でティナは距離を取った。


ティナが使用した戦技は防御用の戦技なのだが、本来は普通の剣士が扱える戦技ではない。この「反動」と呼ばれる戦技は盾などの装備を持つときに使用し、身に付けている防具の類を激しく振動させる事で相手の攻撃を跳ね返す戦技である。だが、ティナの場合は大剣を盾の代わりに利用して使用したことになる。



(さっきの技、まともに受けるとまずい。体勢を崩された時に攻撃されたら終わりだった。というか、この人ただの手合わせなのに本気で斬りかかってきてない!?)



実力を確かめるだけの試合だというのに明らかに全力で挑んできたティナにレイナは冷や汗を流し、どう戦うべきか悩む。色々と考えた結果、レイナは自分もデュランダルの力を使うべきかを悩む。



(デュランダルを使えば勝てるかもしれないけど……でも、それって卑怯臭いな。いや、だけど相手が戦技を使ってくるなら仕方ないか?)



デュランダルの能力を使用する事にレイナは躊躇してしまい、そんなレイナの様子を見て隙が出来たと判断したのか、ティナは再び踏み込んできた。


再度接近してきたティナにレイナは慌ててデュランダルを構えると、彼女は今度は身体を一回転させながら大剣を振り回し、強烈な一撃を放つ。



「回転!!」

「くうっ!?」



刃を振り払ってきたティナに大してレイナは咄嗟にデュランダルで受け止めるが、あまりの一撃の重さに身体ごと吹き飛ばされてしまい、数メートルも後退してしまう。攻撃を受け続けた事で腕が痺れてしまい、レイナは一瞬でも気を抜けば敗北は免れない事を悟る。


最早、手段を選んではいられずにレイナはデュランダルを握りしめるとティナに構え、聖剣の能力を発動させる事にした。戦技や魔法を扱えないレイナにとっては聖剣の能力を使用するしか彼女に対抗できる方法はなく、威力を調整しながらも衝撃波を放つ。



「はああっ!!」

「っ!?」



デュランダルの刃が振り下ろされた瞬間、衝撃波が発生してティナの元へと届く。彼女は反射的に大剣を地面に突き刺し、衝撃波を正面から受けても踏み止まる。



「くぅうっ……!?」

「……凄い、レイナの攻撃に耐えた」

「きゅろろっ!?」

「ぷるるんっ(信じられない)」

「ぷるりんっ(やったぜ)」

「「クゥ~ンッ」」



正面から衝撃波を受けても耐え切ったティナに他の面々も驚きの反応を示し、一方でレイナの方も手加減したとはいえ、衝撃波を受けても踏み止まったティナの身体能力に驚かされる。


並の人間ならば今の一撃で確実に吹き飛んでいただろうが、黄金級の称号を持つ人間となると並の人間とは比較にならない実力者である事を思い知らされた。



(でも、今の攻撃でティナさんも無事ではないはず……今度こそ倒すんだ!!)



衝撃波をまともに受けて無事でいられるはずがなく、レイナはデュランダルの刃を振動させて再び衝撃波を繰り出そうとしたとき、ティナは目を見開いて退魔剣を翳す。その瞬間、退魔剣の刃が日光によって照らされ、閃光を放つ。



「閃光剣!!」

「うわっ!?」

「にゃっ!?」

「眩しいっ!?」

「「ぷるるんっ!?」」

「「ウォンッ!?」」



大剣の刀身が日の光を反射して周囲を照らし、一瞬だが周囲の人間の目が眩んでしまう。レイナも目を閉じてしまい、その隙を逃さずにティナは彼の元に向かう。


足音を耳にしてレイナはティナが接近している事に気づき、このままでは斬りつけられる事を察する。視界が封じられては彼女の位置を探る事は出来ないと思われた時、不意にレイナは無意識の「気配感知」と「魔力感知」の技能を発動させた。



(そうだ、この二つを使えば……!!)



感知系の技能を発動させる事で自分に近付くティナの存在を感じ取り、レイナはぎりぎりまで彼女を引き寄せる。完全にティナはレイナが視界を封じられて反撃も防御も出来ないと思い込んでいる様子だが、彼女が剣を振る前にレイナは行動に移る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る