第401話 ティナの返答

――その後、キャンピングカーの中に案内されたティナは中の様子を見て愕然とした表情を浮かべ、今までに一度も見た事がない電子機器、更にはコーンフレークといった未知の食べ物を用意された彼女は戸惑う。


一応はこの世界にもガスコンンロや冷蔵庫のような役割を持つ魔道具は存在するが、地球の技術で作り出された電子機器の方が性能に関しては優れており、特に電子レンジなどの機器を見た時のティナの動揺は凄かった。



「し、信じられない……この箱に入れただけでどんな物も作りたてのように温める事が出来るのですか!?」

「うん、まあ……入れたらいけない物もありますけど、大抵の物は温める事が出来ます」

「これは……素晴らしい魔道具ですね!!このデンシレンジがあれば冷たくなった料理を温められるなんて……いったいどれほど優れた鍛冶師が作り出したのですか?」

「えっと……それはちょっと言いにくいですね」



電子レンジの前で興奮するティナにレイナはどのように答えればいいのか分からず、とりあえずは電子レンジを開発したメーカーの名前でも答えるべきかと悩んだ時、サンがレイナの服の袖を引っ張る。



「レイナ、もうコーンフレークがない」

「ありゃりゃ、それが最後だったのに……仕方ない、ならカップ麺でも食べる?」

「きゅろっ!!」

「か、かっぷめん?なんですかそれは?」

「この世で3番か4番目ぐらいに美味しい食べ物」

「なんでそんな中途半端な数字なの……えっと、お湯を入れるだけで食べられる携帯食料みたいなのです」

「お湯だけで……!?」



レイナの言葉にティナは信じられない表情を浮かべるが、レイナはポットに入っていたお湯をカップ麺に注ぐと、とりあえずは人数分のカップ麺を用意する。ちなみにスライム達は皿に注いだ牛乳を美味しそうに舐めていた。


人数分のカップ麺にお湯を注いだレイナ達は机を挟んで座り込み、じっと3分待ち続ける。初めてカップ麺を目にしたティナは戸惑いながらも他の3人と共に待っていると、やがて時間を迎えるとサンが嬉しそうにカップ麺の蓋を開く。



「いただきますっ!!」

「いただきます」

「いただきま~す」

「えっ……い、いただきます」



全員がカップ麺を開き、箸で食べ始めるとティナは戸惑いながらもカップ麺の蓋を開く。彼女はラーメンを見るのは初めてなのか、とりあえずは他の人間のように箸を使って麺を口にした瞬間、目を見開く。



「こ、これは……!?」

「ふふふっ……あまりの美味しさに驚いた?」

「お、美味しい……しかも、こんな料理は味わった事がありません」



夢中にティナはカップ麺の麺を啜り、その様子を見ていたレイナは安堵した。どうやらこの世界の人間はラーメンの存在を知らないらしく、カップ麺は彼女達から見れば正に未知の食べ物らしい。


美味しそうに全員がカップ麺を食べているのを確認してレイナも食べようとしたとき、いつの間にか自分の分のカップ麺が存在しない事に気づく。



「あれ?俺のカップ麺は……」

「あっ……す、すいません!!あまりにも美味しくてどうやら食べてしまったようです!!」

「えっ!?あの一瞬で!?」



レイナの言葉にティナは申し訳なさそうな表情を浮かべ、いつの間にか彼女の傍には空になったカップ麺が二つ存在した。いつの間にか話している間に食べていたらしく、サンでさえもまだカップ麺の半分ぐらいしか食べていない間に彼女は二人分のカップ麺を食したらしい。


勝手にレイナの分を食べた事をティナはその場で深々と頭を下げて謝罪するが、別にレイナはコーンフレークだけで満足だったので怒る事はなく、それよりもリルの用件を伝える。



「あの、実はティナさんにお話ししたいことがあって……とりあえずはこの手紙を受け取ってくれますか?」

「これは……ケモノ王国の王家の紋章?」



ティナはレイナから渡された手紙を見て目を見開き、彼女は何度も視線をレイナと手紙を交差すると、ひとまずは内容の確認を行う。



「これは……リル王女様が私に力を借りたいという事ですか?」

「はい、俺達はその……えっと、リル王女様に仕える騎士です」

「騎士?という事は貴女達は白狼騎士団の事ですか?」

「そう、私とレイナとサンは白狼騎士団に属している」



ネコミンは白狼騎士団の証である腕輪を取り出すと、ティナに見せつける。騎士団に所属する団員は必ず騎士団の紋様が刻まれた腕輪を常備する義務があり、腕輪を確認したティナはネコミンの話を信じる。


だが、ここでティナは先ほどのレイナとの会話を思い出し、どうして白狼騎士団に所属する団員のはずの彼女が冒険者であるのかと疑問を抱いたティナは問い返す。



「先ほど、貴女はご自身を冒険者だとおっしゃっていましたが、それはどういう意味でしょうか?」

「あ、えっと……」

「レイナは特別な立場、騎士団に所属しながら冒険者にもなった」

「……どういう意味でしょうか?」



ティナはネコミンの言葉に疑問を抱き、騎士団の団員が冒険者にも所属するなど聞いた事がない。その辺の事情に関してはレイナはどう答えるべきか悩む。

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