第400話 金色の剣士

「あの……俺の名前はレイナです。貴女の名前を教えてくれませんか?」

「レイナ、さんですか。失礼しました、私の名前はティナと申します」

「ティナ……え、もしかして黄金級冒険者のティナさんですか!?」



レナは名前を聞いた途端に驚き、彼女が探している黄金級冒険者のティナという名前だと聞いていた。噂によるとティナは金色の髪の毛に銀色の鎧を纏う美しい剣士だと聞いていたが、正に噂通りの人物だった。


ティナはローブを纏っていたので最初は見分けがつかなかったが、確かにローブの隙間から銀色に光り輝く鎧を確認し、それに特徴的な大剣を身に付けていた。レイナのデュランダルに匹敵するほどの大きさを誇る銀色の大剣を身に付けており、彼女が自分の探し求めていたティナだと知ったレイナは動揺を隠せない。



「あの、本当にティナさんなんですか?」

「本当にというのはどういう意味かは分かりませんが……確かに私は黄金級冒険者の資格を持っています」

「やっぱり……あの、俺は王都で冒険者をやっているレイナと言います」

「レイナさんですか……なるほど、先ほどの動きから只者ではないと思っていましたが冒険者の方だったんですね」



相手が自分と同じ冒険者だと知ったティナは納得した表情を浮かべ、冒険者ならば先ほどの自分の攻撃を受け切った事もおかしくはない。だが、仮にも黄金級冒険者である自分の攻撃を防いだレイナを見てティナは彼女が只者ではないと悟る。


まさか牙路に辿り着く前にティナと出会えたことにレイナは驚きながらも喜び、早速ではあるがリルに頼まれた事を伝えようとした。しかし、その前にティナはレイナの背後に存在するキャンピングカーに視線を向け、戸惑う。



「あの……その奇妙な形をした建物はなんですか?変わった車輪を搭載していますが、まさか馬車の一種なのですか?」

「え?ああ、これは……えっと、魔道具の一種です」

「魔道具!?これは魔道具なのですか!?」

「ぷるぷるっ!?」



レイナは誰も存在しない場所なので問題ないと思って作り出してしまったキャンピングカーを見られてしまい、内心ではしまったと考えながらも咄嗟に誤魔化す。ティナアはレイナの言葉を聞いても動揺を隠せず、彼女はキャンピングカーに恐る恐る近寄る。



「た、確かに見た事もない乗り物ですが……こんな魔道具があるなど聞いた事もありません。これは貴女の所有物なのですか?」

「えっと、一応は……」

「……ど、どうやって移動するのですか?まさか、そこにいる2頭がこれを引っ張って運ぶのですか」

「「ウォンッ(無茶言うなよ)」」



ティナの言葉にシロとクロは「無理無理」と首を左右に振り、レイナも困った風にキャンピングカーの周囲を動き回るティナに顔を向ける。


この世界の人間にキャンピングカーの存在をどのように説明すればいいのかと困っている所、騒ぎを聞きつけたのか眠たそうな表情を浮かべたネコミンとサンが欠伸をしながら扉を開いて出てきた。



「ふぁあっ……さっきからうるさい」

「きゅろろっ(欠伸)……まだ眠い」

「ひ、人が出てきた!?」

「落ち着いてください!!乗り物だから当たり前の事です!!」



唐突に現れたネコミンとサンを警戒するようにティナはその場を下がり、銀色のスライムを抱きかかえるが、やがてキャンピングカーからクロミンが現れると銀色のスライムも反応を示す。



「ぷるぷるっ(←扉から元気よく飛び出す)」

「ぷるんっ!?(←驚愕)」

「ぷるるんっ?(←不思議そうな表情を浮かべる)」

「ぷるるるっ……(←警戒するように震える)」



2匹のスライムは互いの顔を見て戸惑い、やがて飼い主の元へ離れて近づく。その様子を周囲の人間は見守ると、やがてクロミンは頭に生えている耳の様な触手を伸ばし、握手を求めるように差し出す。



「ぷるぷるっ」

「ぷるるんっ?」

「ぷるっ……ぷるりんちょっ!!」

「ぷるっくりんっ!?」



奇怪な鳴き声をクロミンが放つと銀色のスライムは驚いた表情を浮かべ、やがて満足そうに頷くと自身も頭の触手を伸ばして握手を行う。


スライム達が打ち解けたのかその場で駆け巡り、その様子を見ていたティナは安心した表情を浮かべ、改めてレイナ達に挨拶を行った。



「……シルがここまで懐く当たり、貴方達は悪い人間ではないようですね。では改めて自己紹介させてください。私は黄金級冒険者のティナと申します」

「あ、どうも……」

「おーごんきゅう?」

「おおっ……眠っている間にレイナが黄金級冒険者を見つけ出してくれた。流石はレイナ」

「ただの偶然だけどね……あの、とりあえずここだと寒いので中に入りませんか?」



レイナは全員にキャンピングカーの中に入るように促し、確かに彼女の言う通りに外は寒く、とりあえずは朝食の準備も行う必要があるのでキャンピングカーの中へと招く。

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