第396話 コボルト亜種

――夜を迎えるまで宿屋で過ごした後、レイナは時間を迎えるとコボルト亜種が発見された地域へ訪れる。今回は慎重に動くため、レイナはシロと共に赴き、他の者達は置いていく。


リリスは仕事があるという事で王城へと戻り、サンとクロミンは夜を迎えると寝入ってしまったので宿屋において起き、ネコミンには二人の世話をしてもらう。新しい弾丸の威力を確認するだけならばわざわざ全員で同行する必要はなく、レイナはシロと共に草原へと赴く。



「シロ君、コボルトの臭いは分かる?」

「スンスンッ……ウォンッ」

「あっちか、近いんだね……」



シロが地面に鼻を近づけながらコボルトの臭いを発見した事をレイナに伝えると、ここから先はレイナも慎重に動き、まずは「隠密」「無音歩行」「気配遮断」の3つの技能を発動させる。


続けて「暗視」の技能も発動させて暗闇を見透し、更に「観察眼」の能力で周囲の状況の把握を行う。念のために風向きも確認し、臭いで敵に存在を気づかれないようにしながらレイナは移動を行うと、やがて「気配感知」と「魔力感知」が発動した。



(見つけた……あそこか)



丁度良い具合に隠れられるほどの大きさの茂みを発見したレイナはその場に隠れると、コボルトの集団を発見した。どうやらコボルト達は食事中らしく、倒れているボアに死骸に喰らいついていた。



「ガアアッ!!」

「ガウウッ!!」

「ギャンッ!?」



荒そうようにボアの死骸に喰らいつくコボルト達の姿を確認してレイナは拳銃を取り出し、攻撃を仕掛ける前に様子を伺う。ボアの死骸の傍には5匹の通常種のコボルトが存在し、その様子を伺う黒色の毛皮のコボルトが立っていた。


色違いのコボルトを発見してレイナはすぐに亜種だと見抜き、他の個体と比べても体格が大きく、同時に爪や牙が不自然なまでに伸びていた。コボルト亜種はボアの死骸に夢中に喰らいつく仲間達を見て動き出す。



「ウガァッ!!」

「ギャンッ!?」

「ガウッ!?」



仲間であるコボルトに対してコボルト亜種は唐突に殴りつけると、コボルト達は悲鳴を上げてボアの死骸から離れる。その行為を見てレイナはコボルト亜種がボアの死骸を独り占めする気なのかと思ったが、コボルト亜種はボアの死骸に手を伸ばすと、内臓らしき者を取り出す。


臓物を抜き取ったコボルト亜種は満足そうな表情を浮かべて口に含み、やがて満足したのか死骸から離れる。敢えて肉の部分ではなく、臓物を口にしたコボルト亜種を見て他のコボルト達は戸惑い、様子を伺っていたレイナも口元を抑える。



(うえっ……自分の好物だけは奪われたくないわけか)



どうやらレイナが発見したコボルト亜種の好物は生物の内臓らしく、他の仲間が内臓を漁る前に新鮮な臓物を口にして満足したらしい。ここでレイナは拳銃を引き抜き、茂みに隠れた状態で狙いを定めた。


リリスが用意してくれた特製の弾丸を取り出し、シリンダーに装填すると銃口を構え、狙いを定める。この際に「命中」の技能を発動させる事は忘れず、コボルト亜種の頭部を確実に撃つためにレイナは腰に差したフラガラッハに視線を向けた。



(頼りにしているぞ相棒……!!)



身に付けているだけで「攻撃力9倍増」の効果を発揮する聖剣を身に付けた状態でレイナは引き金を引いた瞬間、派手な発砲音と共に弾丸が射出された。唐突に草原に響いた轟音にコボルト亜種が反応する暇もなく、頭部に弾丸が衝突するとコボルト亜種の頭部が吹き飛ぶ。


威力が高い口径の拳銃とはいえ、普通の狼よりも大きな頭を持つはずのコボルトだが、弾丸が的中した瞬間に原型を残さぬほどに破裂してしまう。その威力の高さにレイナは驚く一方、あまりの発砲音の大きさに耳鳴りが激しい。



(くうっ……リリスの奴、威力を高め過ぎだよ)



発砲音のせいでレイナは耳が遠くなり、傍に存在したシロも怯んでしまう。一方でコボルト達は唐突に鳴り響いた発砲音に戸惑い、同時に自分達のボスが頭部が吹き飛んだ状態で立ち尽くした光景を見て混乱を引き起こす。



「ガアッ!?」

「ガウッ……!?」



ボアの死骸に夢中だったコボルト達も突然の事態に混乱を隠せず、何が起きたのかと周囲を見渡す。その様子を見てレイナは攻撃を仕掛ける好機だと判断すると、フラガラッハを抜いてコボルトに向けて踏み込む。



「はああっ!!」

「ギャインッ!?」

「ギャアッ!?」

「アガァッ!?」



瞬く間にレイナは3体のコボルトを切り伏せると、残った2体は敵が現れた事にやっと気づき、危険を察知して逃げ出そうとした。その内の1体をシロは狙いを定め、背後から追跡を行う。


コボルトに追いついたシロは確実に仕留めるためにコボルトの首元に噛みつき、そのまま地面に押し倒す。コボルトは必死にシロを引き剥がそうとするが、シロは首筋の肉を噛みちぎり、頭部を前脚で抑え込む。

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