第395話 魔銃

「ほら、拳銃用のホルスターと弾丸です。弾丸の方は火薬がなかったので、火属性の魔石を削り取って粉末状にした物を詰め込んでいます」

「あ、もしかしてマグナム用のホルスター!?本当に作ってくれたんだ……」

「まぐなむ?」

「なんだい、それは?」



リリスからホルスターと弾丸を渡されたレイナは驚き、実は最初の頃にレイナは彼女にこの世界に来たばかりの頃に作り出したマグナムを見せた事があった。


古王迷宮にて脱出する際にレイナは拳銃の弾丸を撃ち尽くしたので弾丸を制作する以外は使う機会がないと思っていたのだが、リリスに相談したら彼女が弾丸を制作してくれるというので頼んでいた事を思い出す。



「私も使ってみましたが、とりあえずは問題なく発砲出来ましたよ。但し、火薬の代わりに魔石を利用したせいで威力がちょっととんでもない事になっているので気を付けてください」

「ありがとう、でもよく弾丸なんて加工できたね」

「いえ、弾丸の方は流石に手先が器用な私でも作り出せる自信はなかったので普通に王都の鍛冶師に頼みました。変わった注文だったので少々お金は掛かりましたが、そこら辺は前回の任務で手に入れた例のお宝で……ね(黒い笑み)」

「なるほど、あのお宝か……(にやり)」

「二人とも、悪い顔をしてる……」

「それで、何なんだいそのマグナムというのは?」



リリス曰く、弾丸の製作にかかった費用は前回の巨塔の大迷宮で持ち帰った宝物を換金して用意したらしく、大量の弾丸の製作に成功したという。改めてレイナはホルスターと弾丸を確認すると、リリスはマグナムの方も取り出す。


拳銃を始めてみるリンは興味深そうに覗き込み、ネコミンも前に見た事はあるが彼女からすれば拳銃は未知の武器であった。一方でレイナは遠距離に存在する相手の攻撃手段を手に入れた事を喜び、早速ホルスターを装着した。



「うん、丁度良いよ。これなら簡単に拳銃を引き抜けそう」

「それはよかったですね。ですけど、他の人間に奪われないように気を付けてくださいよ。それと携帯するときは必ず拳銃に弾丸を装填していない状態で行動してください。間違って発砲したらとんでもない事になりますからね」

「へえ、それって魔銃という奴かい?噂には聞いていたけど、本当にへんてこな武器だね」

「魔銃?」

「この世界にも銃器を模した武器があるんですよ。そもそも銃器は地球から召喚された人間が持ち込んだ道具ですからね。まあ、滅多に手に入らない代物なのでお目にかかる事はまずないと思いますが……」



リリス曰く、こちらの世界にも地球の銃器を参考に作り出された魔道具が存在するらしいが、今の時代では魔銃を扱う人間はいないという。下手な銃器よりも魔術師が扱う砲撃魔法の方が強力という理由のためらしい。


最もレイナが作り出した地球の兵器は規格外の威力を誇り、地球で使用されるときよりも破壊力を増している。現にレイナは手榴弾で建物を崩壊させ、強敵のゴーレムを粉砕した事もあった。しかも今回は弾丸の方も強化されたため、以前よりも強力な弾丸が発射出来る事が予想された。



「じゃあ、私は忙しいのでこれで失礼しますね」

「ありがとう、リリス」

「またね、リリス」

「あんまり変な依頼を持ち込まないでくれよ……」

「それは承諾しかねますね、では冒険者活動を頑張ってください」



そのままリリスは冒険者ギルドを出ていくと、残されたレイナは新しい武器の性能を試すため、リンに討伐系の依頼がないのかを尋ねる。



「リンさん、塩漬け依頼の中で討伐系の依頼はありますか?」

「ん?どうして塩漬け依頼なんだい?別に普通の依頼でも討伐系の依頼はいくらでもあるよ?」

「でも、塩漬け依頼の方が評価点は高いんでしょ?」

「あんたね……あんまり塩漬け依頼を舐めない方がいいよ?まあ、うちとしても塩漬け依頼を引き受けてくれるのは有難いけどさ……じゃあ、こんなのはどうだい?草原に出現したコボルト亜種の討伐」

「亜種……ですか?」

「ああ、この王都の近辺で黒色の毛皮のコボルトが確認されてるんだ」



リンは一枚の羊皮紙を手渡すと、レイナとネコミンは内容を確認する。依頼書によると夜間の間のみに王都の近辺に出現するコボルトの亜種の討伐が指定されていた。


このコボルトの亜種は何度か冒険者が討伐を試みたがすぐに逃げられてしまい、体毛が黒色のために夜間の間は見つけにくい。しかも常に配下を引き連れており、自分の身に危険が陥ると配下を囮にして逃げ出すという卑劣な手段を用いる。



「このコボルトのせいで夜間の間に王都へ向かおうとする商団や旅人が被害を受けているんだよ。何人かこの依頼に挑んだんだけどね、結局どんな腕利きの冒険者も捕まえる事が出来なかったんだよ」

「へえ……」

「まあ、亜種といってもあんたの実力なら大丈夫だろ。油断していなければ勝てる相手なんだからやってみたらどうだい?」



リンの言葉にレイナは羊皮紙を覗き込み、評価点も高い事を確認するとマグナムの試し撃ちの相手には十分だと判断して引き受ける事にした――

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